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出会いと不穏の兆し
プレゼント依頼
しおりを挟むメイサとケニスを連れて部屋に戻りヴァイスを床に下ろす。この体でヴァイスを抱っこするのは大変だったけど、何かしらの作用があったのか、それともヴァイスが何かをしたのか重さをあまり感じなかった。
「お疲れ様です、シェリルお嬢様。順番が逆になりましたが、お召し物を取り返しましょう。それから子狐の方も綺麗にしましょう」
「うん!ヴァイス、いこう!」
「ヴァイスというのがこの子のお名前ですか?」
「うん!わたしがつけたの!」
あえて父様の前では言わなかったけど、メイサの前なら良いかなと思って口に出した。メイサは口が硬いし秘密もしっかり守ってくれるから安心。散歩以外のお世話をしてくれる侍女のユフィも秘密を守ってくれているから信頼している。
そのユフィは猫人族の女性で、たまに耳と尻尾を触らせてくれる。そんな彼女はせっせとタオルやら部屋着用のドレスやらを準備してくれている。
あ、私のドレスで何かヴァイスにプレゼントできないかな?
「ユフィ、おさいほう、できる?」
「できますにゃ。何を作りますかニャ?」
「ヴァイスのアクセサリー!」
今のいままで忘れていたけれど、私の使い魔になってくれたんだ。何かプレゼントをあげたい。スキルを使って作るのも良いんだけど、スキルを人前でそう易々と使うものじゃない。この屋敷内で誰が見ているかわからないからね。
まあ、自分が持っているものでプレゼントをしたいというのが本音だけど。
「そういうことでしたらお任せくださいニャ!何で作りますかニャ?」
「どうしよう?」
そこまで考えてなかった。ヴァイスの元の大きさは大の大人くらいの大きさだし、首飾りだと首元が今より倍以上。普通に作って元の姿に戻ってしまえば首飾りがはち切れるか、ヴァイスが窒息してしまう。
それは避けておきたいことだから首飾りは却下だ。そうなると別の装飾品がいいかな……。
「ケニス、なにいい?」
「俺に聞きます!? ええと、スカーフとかはどうです? 首に巻けば首飾りにもなりますし、手に巻けばブレスレットもどきになりますし?」
「おお、良い案ですニャ!でも素材は?」
「そこはシェリル様が決めるべきだと」
確かに私が決めた方が良いね。素材はこの部屋にあるもので良いと思うんだけど……。
あ、着れなくなった服でも良いんじゃないかな?たしか内緒で外に出た時に木とか窓の出っ張りとかに引っ掛けて、思いっきりズタボロにしたやつがベッド下に隠してあったはず。
誰もベッド下を掃除してなければだけど。
「んっしょ……」
「シェリルお嬢様! はしたないですよ!」
「ん……あった!」
止めるメイサを他所にベッド下に潜り込み、隠していた青いドレスを引っ張り出す。血液はついていなくても、裾や腕元などが裂けたりと結構なズタボロさだった。
「シェリルお嬢様?これは一体どういう了見ですか?」
「あ」
メイド長メイサの目の前だったこと、すっかり忘れてた。そんな私は般若と化した彼女にしこたま怒られたのだった。
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