ハズレ職? いいえ、天職です

陸奥

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出会いと不穏の兆し

姉との時間 3

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 姉様との時間を優先にし始め、まず最初にしたのは姉様得意の魔法だ。父様が所持している書斎の本にも魔法の本はあるけれど、いまいち理解が出来なかったんだけど、姉様の教え方が上手いのかすぐに覚えられた。

 「魔法はね、イメージが大事なの。例えば光魔法の【ライト】はお日様の光をイメージするの」

 姉様が光魔法の【ライト】を唱えれば手のひらに丸い光の球体が出来上がる。まるでアルテイル様の指導でやった魔力コントロールで作った卵のようだ。

 イメージなら形ははなんでも良いのかな?

「かたち、なんでもいいの?」

「できれば球体かな。まあ、やってみても良いと思うけど……」

「わかった」

 膝に頭を乗せてくるヴァイスの頭を左手で撫で、右手に魔力を集める。想像するのは前世で有名な火の玉。ヴァイスは天狐だからそれに因んだ火の玉で別名狐火だ。

「ファイアボール?とは違うわよね?でも良いんじゃない?」

「えへへ」

 褒められたことが嬉しくて、つい気が散ってしまったみたいで、【ライト】の魔法が消えてしまった。気が散漫しても維持するのは難しいようだ。

「ありゃ……」

「初めはそんな感じよ。焦っちゃダメ。たくさん練習したら気を抜いててもできるようになるから」

 練習あるのみ、か。アルテイル様にも同じことを言われな気がする。そういえば、魔力コントロールの時に慣れないうちにすると肉体とか精神、魂が弾け飛ぶってアルテイル様が言ってなかったっけ?

 そう思い出して血の気が引くのを感じた。

(シェリル、大丈夫か?顔色が随分と悪い。魔力切れ起こしたのか?)

(ううん、それは大丈夫。ただ、神様の言いつけを守らなかったから不安になっちゃって……。精神とか弾けないかな?)

(何を言われたのかわからんが、体も匂いもなんの問題も起こっておらん。こうして我と念話できておるんじゃ。大丈夫じゃろう)

(良かった……)

 ヴァイスとの念話で安堵のため息を吐く。何かあったらどうしよう、とか、姉様に迷惑かけたらどうしよう、とか不安になったけど何の問題もなくて良かった。

「疲れた?」

「んん、だいじょうぶ」

「シェリルが大丈夫なら良いけれど、頑張りすぎるのも良くないの。少し休憩しよう。リリ、お茶を持ってきてくれるかしら?」

「かしこまりました」

 少し休憩ということで、姉様専属のメイドのリリに姉様がお茶をお願いする。姉様の専属のメイドは人間の女性だ。

 リリもついて行くのかな?

「イリスお嬢様、シェリルお嬢様。紅茶でございます」

「ありがとう、リリ」

「ありがとう!」

 音を立てないように、火傷をしないようにゆっくりと飲む。爽やかさな香りと味が口の中に広がる。まるでダージリンのようだ。

「リリ、このおちゃ、なに?」

「ダンリージでございます」

 おお、ダージリンみたいな名前だ。似たような原料なのかな?私この紅茶好きだ。

 今度ユフィに私専用に取り寄せてもらおう。

「気に入ったの?」

「うん!」

「ではユフィに伝えておきます」

「おねがいね」

 私が考えていたことを当てるとは、さすがメイドさんだ。後で何か送ろうかな。

「シェリルお嬢様、メイドに心遣いは不要です」

「ありゃ……」

 何でもお見通しってね。姉様のメイドさんは鋭すぎ。

 それならユフィ伝に……。

「不要です」

「……はぁい」

 手強すぎだよ……。


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