ハズレ職? いいえ、天職です

陸奥

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出会いと不穏の兆し

姉との時間 4

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 姉様との時間を過ごし始めて数日。姉様の指導の下、徐々に魔法が使えるようになってきていて、現在使えるのは下級の全属性の攻撃・防御魔法に補助魔法だ。

 これには姉様も驚いていて、すごいすごいと褒めてくれた。何でも全属性の攻撃・防御魔法及び補助魔法を使えるのは数少なく、一握りいるかいないからしい。

 それは知らなかった。けど、これは姉様以外には言わない方がいいかもしれない。姉様でも父様が何を考えているのかわからない以上、無闇矢鱈と話すのは得策じゃないからね。

 それに、姉様曰く両親は前とは違い子供を駒、道具としてしか見ていないらしい。利益のために使われるのだけはごめんだ。姉様には申し訳ないけれど、自由になれないのはもっと嫌だ。

 道具にされそうになったら、事故に見せかけて逃亡しよう。もちろんヴァイスも連れて。

「シェリル、今日は世界の情勢を教えるわ」

「せかいの?」

 今日は世界のことを教えてくれるらしい。元の世界日本だと社会科の授業だ。この世界の社会のことは前から気になっていたことだからとてもありがたい。

「私たちがいるのはファルミュール王国という国で、ブルメルド共和国とドンディール国、シュレイユ国の大国に挟まれた小さな国なの。このブルメルド共和国は生産スキルが高い人やドワーフ族が集まる国で、物作りが盛んなの」

「ドワーフってあのものずくりがきような?」

「そうよ。まだシェリルは会ったことがなかったわね。何か作りたい物があったら、モルヴィス伝で依頼してみなさい」

「わかった!」

 作りたいものは沢山あるんだけど、それはまたの機会にしておこう。今は姉様との時間を大事にしたいし。

「ドンディールっていうところは?」

「ドンディール国はね、冒険者ギルドの本部がある大きな国でスタンピードに唯一対抗できる国なの。ここではたくさんの魔物の素材を見ることができるわ」

「へえ~」

 冒険者ギルドか。本部って言うことはこの国にもあるのかな?」

「ギルドはこのくににもあるの?」

「あるわ。興味があったらモルヴィスに連れて行ってもらいなさい。メイサは絶対に、絶対に言ってはダメよ?」

「う、うん」

 何故かメイサに伝えることを念を押されて止められた。何かあるのかな?あ、もしかして淑女としての嗜みがってやつかな?だとしても姉様との約束を優先するから内緒にしておこう。

「物作りもメイサには内緒にしなさい。絶対よ?」

「わ、わかった」

 全部徹底的にって内緒ってことなんだね。なら不自然がないように秘密にしてないとね。秘密にすることは得意だし。まだ使ったことないけど、スキル習得のスキルがあるから何かを隠したい時のためのスキルを作れば良いよね。

「シュレイユ国はブルメルド共和国とドンディール国が混ざったような国で、生産とハンターズギルドの二つが共存しているの。冒険者として住むのなら、ここが一番過ごしやすい国よ」

「ぼうけんしゃはだれでもなれるの?」

「ある程度の力があればなれるわ」

 なるほど、力があれば冒険者になれるんだね。危険が伴うけれど、もしもの事態になったら冒険者になれば良いか。ケニスたちに反対されそうだけど、その時になったら心境が変化するかな?

 一番はそのもしもの事態にならないのが良いんだけど、そうも言っていられないだろうからね。

「最後にこのファルミュール王国は、この三国に比べて弱い。 弱いためにこの三国に同盟を組んでいて、緊急時に兵役することになるの。そのため、この国にも冒険者ギルドがあるけれどそこまで盛んになってないかな」

「そうなの?」

「小国だからね。冒険者になるのも良いけれど、その他にもやらないことが沢山あるからね。他の国の冒険者たちにお願いするしかなくてね」

 なるほど、国民が少ないがゆえの理由か。それなら仕方がない。

 でもモルヴィスたち護衛たちはどこから来たんだろう?他国の冒険者ギルドから父様が引き抜いてきたのかな?それともギルドからの紹介?後者ならとても安心できそう。今度聞いてみようかな。

「この四つの国の他にも沢山国があるけれど、私も詳しくは知らないし敵国だったりするからね。知りたいのなら自分で調べるか、かな。あ、でも通過は同じよ?」

 私達が住んでいる国と周りの三国は大丈夫だけど、他はそうでもないんだね。でも通貨が一緒で良かった。

 この世界の貨幣は小銅貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、小金貨、金貨、大金貨、白銀貨、大白銀貨、白金貨、大白金貨あって、単価はゴルド(G)というらしい。

 転生してから買い物とか行かないからよくわからないから、今度誰かに連れて行ってもらおう。ユフィあたりがいいかな?

「だいたいこんな感じかしら?」

「たくさんあるね」

「聡明なシェリルならすぐ覚えられるわ」

 聡明じゃないと思うんだけどね、と言いかけたけれど見た目5歳児で魂は大の大人だからそう思われても仕方がないかもね。

「さて、今日の勉強は終わり」

「おわりなの?」

「しないといけないことがあるからね」

 姉様がしないといけないことか。なら邪魔しちゃいけないね。私は外で待っていたケニスと一緒に部屋に戻った。

 その後、姉様が忙しいという理由で姉様と過ごす時間が食事の時だけとなってしまった。


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