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出会いと不穏の兆し
最前戦での話 2
しおりを挟むなかなか減らない魔物の姿に弱音を吐くキースに喝を入れつつ、湧いて出てくる魔物を斬り伏せていく。スタンピード以上に大変だが、やらないとお嬢たちに被害がいくからな。
俺たちがなんとかしねえとっ!!
「む、彼奴が来たようじゃな」
「は?」
「彼奴、とは誰のことです?」
「っ!?お前らそこから大きく散開しろ!」
口の周りと鋭い爪、そして尾を血で赤く染めたヴァイスが頭を上げそう呟くと同時に、俺は何か強靭なモノを感じ取った。それはまっすぐこっちに突っ込んでくるような勢いで、このままでは俺たちの身が危険だ。
自身の中で鳴る警鐘に従い、俺はキースとモウスに散開するように指示を出し俺もそこから離れる。すると、間もなく俺の上をデカい何かがものすごいスピードで通り過ぎて行った。その通り過ぎて行った魔物は、これまた普通ではないエルダーグリフォンだった。
「……おいおい、こんなのアリかよ……」
エルダーグリフォンが通ってきた後を見ると、さっきまでいた魔物たちの残骸が残っていた。その場に留まっていたら、俺たちは間違いなくボロ雑巾になっていたことだろう。そう思うと顔から血の気が引いていくのがわかる。同じことを思っていたのだろう、キースもモウスも顔を青くしていた。
「なんじゃ、お前も我と敵対するのか?」
「そんなんじゃあないよ。妾は今さっき主を得たから、あんたたちの援護をしに来たのさ」
「主だと?……まさか、我のシェリルか?」
「あんただけのじゃないだろう?もうあんたと妾の主さ!」
どうやらこのエルダーグリフォンは敵ではなく味方のようで、お嬢が何かしらのことをしたようだ。またお嬢に聞かねえといけねえことが増えちまったが、戦力が増えたから気にしねえことにしてやろう。
「喧嘩は後にしてくれ!お前らの主でもあるお嬢が待ってるんだ」
「む、喧嘩はしておらんぞ」
「あっはっはっ!アレが喧嘩に見えたなら申し訳ないねぇ。まあ、主人を待たせるわけにはいかないからね」
周りに怖気なく集まってきた魔物を目にして余裕を見せるエルダーグリフォンとヴァイス。さすがエルダー級とエンシェント級だな。
しかし、何故こうも多く魔物どもが溢れかえっている?もしかして近くに迷宮ができたんじゃ……?ならこれはスタンピードの前触れか?……これは調査依頼を出した方が良いかも知れねえな。そう思考を巡らせながら魔物たちを倒していく。
「まったく、一体どのくらい溜め込んでたんだい?埒あかないねぇ!」
「人間、これは賭けじゃ。道を開ける故、ボスのトロールを一撃でやって来い」
「はぁ!?一撃で!?
「なんじゃ?できなんだか?」
「これくらい容易いだろうに」
一撃で倒してこい、という言葉に驚いていれば奴らに呆れられた。一撃でなんて武器と己の経験値が足りてなければ無理な話だ。今俺が持っている武器はそこまで上等な武器ではない。でもなんだか腹が立ってきた。
鈍な剣だとしても、俺は元Aランクの冒険者。スキルでゴリ押しすれば良いことだ。
「やってやる!早く道を開けろ!」
「あっはっはっ!その粋さ!」
「さっさと片付けてくるが良い」
ゴウッと青白い炎と突風が発生したと思ったら、一本のでかい道が出来上がった。この先にトロールがいるんだろう。
なら、叩っ斬るのみ!
俺はできた道をまっすぐに進んでいき、魔物どもを束ねていたトロールをスキルを使って一刀両断にした。一刀両断にしたおかげで大剣は折れちまったが、トロールが倒れたことによって魔物たちが散り散りに逃げ出した。
これでこの騒動は幕を下ろしたのだった。
───────
書きまとめていた分の小説がアップし終えたので、今後は2日に一話更新になるかと思います。
アップできそうでしたらその日のうちに上げたいと思いますので、少々お待ちください。
感想やご意見などありましたらコメントをお願いします。
誹謗中傷はご遠慮ください。
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