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出会いと不穏の兆し
初めての攻撃魔法
しおりを挟むヴァイスとエリをモルヴィスたちのところへ送ってからどのくらい経っただろう。こちらに来る魔物たちをケニスたちが倒していって、辺りには魔石がゴロゴロ転がっている。
ケニスたちのSPも限界のようだ。というのも、自分以外の人物や動物相手に使ったことがなかった【鑑定】スキルを使ったからだ。
ケニスのSPは60/450でセイルのSPは40/560。それに対して私のSPは神様の恩恵もあって∞。もしもまた大きなモンスターが出てきたら、今度は私が戦うしかない。
私が戦える今の術は魔法だ。炎系の魔法は火事になる可能性があるから使わないとして、あまり被害がないのは水か自ら派生させた氷、後は雷か風。この中から選ぶとすれば氷か風、雷だろう。
「セイル、大丈夫か?」
「いやぁ、流石にもう疲れてもうたで。こんなんなるとは思わへんやろ」
「確かにな。デカいの来られたら堪ったもんじゃない」
肩で息をする二人を目の当たりにして、迷っている暇はないと私は決意した。幼児だとしても魔法は使えるしモルヴィスに鍛えてもらってるから、ある程度は大丈夫なはず。
そう思っていれば、奥から少し大きめのゴブリンのような魔物が現れた。あれは確かホブゴブリンという種族だったはず。その後にはその下位種のゴブリンがいて、それに混じって大きな牙が生えた猪のような見た目の魔物がいた。あれは確か……。
「ファングボア?」
「流石、勉強熱心なお嬢様や。あの牙がえらい厄介なんや」
「シェリル様、お下がりください」
疲労困憊な顔をしながら私を守ろうとする二人。もう見ていることはできないから私自身がなんとかしよう。
「ふたりはやすんでて。ねえさまからおしえてもらったまほうをつかいたいの」
「お嬢さま、そら危険でっせ!?ケニスも言ったってや!」
「セイル、シェリル様は一度言い出したら止まらないんだ。シェリル様、これだけは約束してください。無茶しない、怪我をしない、です。良いですか?」
「ん、だいじょうぶ」
ケニスと約束をして指切りをする。ここでも指切りの呪いはあるみたいで、何かある時には必ずしていたりする。けど、これには効力はないみたいで、少し破ったところで今まで何も起きたことはない。
「……あまりころしたりはしたくないの。でも、みんなをまもりたいんだ。ごめんね。水氷大魔散弾」
殺気立つ魔物たちを前に魔法陣を展開する。イメージして展開させる術式は氷の槍。それを飛ばすように術式を組み替え、魔物たちに向かって放つ。
数多の氷の槍が魔物たちへ向かい貫いていく。すると、貫かれた魔物たちがみるみる凍っていった。ケニスたちをみると唖然としている。まさか私がここまですごい魔法を撃つなんて思わなかったんだろう。
これには私自身も驚いたけど。
その後魔物たちは魔石だけを残して消えていって、新たな魔物たちがこちら側に来ることも奇襲を仕掛けてくることもなかった。だけど、安心しきれないため周りを警戒は解くことはできない。いつ何が起こるか分からないからね。
そう警戒をしていると、トロールを倒しに行ったモルヴィスたちと元の姿のままのヴァイスとエリが怪我もなく無事に戻ってきた。手土産にここに転がっているものと同じような魔石の他に、大きくて立派な魔石も含まれていた。これは宝玉と言って、高く売れるけれど素材としてもかなりレアで重宝されるらしい。
少しもらって、ヴァイスたちに何か作ってあげよう。
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