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出会いと不穏の兆し
帰還と……
しおりを挟む森の中で沢山の魔物たちを討伐し、新たな従魔のエリを迎えた私たちは屋敷に帰ってきた。汚れはセイルが魔法で綺麗にしてくれた。こんな便利な魔法があるのなら後で教えてもらおう。
「主人、妾はどうすれば良い?この姿のままだと、騒がれるんじゃあない?」
「たしかに……」
ヴァイスは子狐の姿になってもらっているから大丈夫だけど、エリはどうなんだろうか?変化のスキルがあれば人の姿か獣人になれるんじゃないかなと思うんだけど……。
「ひとになれない?」
「人間の姿かい?なるのは簡単だし、それで生活するのも問題はないさね」
そう言ったかと思った瞬間に、エリが眩い光に包まれた。あまりの眩しさにぎゅっと目を瞑る。こんな森の中でしちゃいけないことだと思うけど、こればかりは仕方がない。
「シェリル、変化は終わったぞ」
「ん……。わあ!」
ヴァイスに袖をクイっと引かれ目を開ければ、そこにいたのはナイスバディなお姉さんがいた。服装は革素材でできた動きやすそうな服装で、胸元がガッツリ開いたセクシーなモノだった。
谷間がすごい。
そのせいなのか、ケニスとセイル、モウスの顔が真っ赤で全力で目を逸らしている。どうやらこの3人には免疫がないようだ。モルヴィスとキースは免疫があるようで素面だった。
「おやおや、妾のこれに真っ赤になるなんて初心だねぇ?」
「まだまだじゃな」
「いやいやいや、破廉恥すぎだろ!!」
「胸元だけじゃあないか」
「こんなことで赤面すると、先が思いやられる」
真っ赤になって言い返すケニスに対して冷静に返すヴァイスたち。正直言えばケニスの意見に賛成ではある。でも、将来的なことを考えると心配なのは言えてることだ。
「ケニス、良い加減に女に慣れろ。いつまでも嫁さん来ないぞ。それと、おしゃべりは終わりだ。そろそろ屋敷に帰らねえと」
そう言って空を見上げるモルヴィスに続いて私も空を見る。もう太陽は傾き始めていて、屋敷に帰らないと大騒ぎされそうな感じだ。
「エリ。お前さんは森に迷い込んだお嬢を偶然助けた元冒険者を名乗れ。それから護衛志願もしておけ。そうすれば怪しまれずに済むはずだ」
「そうねぇ、その方が主人が守り易くなるから丁度いいかもねぇ。主人も良いかい?」
「うん!なら、わたしもとうさまにおねがいするよ!」
女性ということで、お願いしたら専属の護衛にしてくれるはず。姉様にも兄様にも専属の護衛は2、3人就いてるし。私だけ除け者になんてさせないよ。その方が、ケニスも安心してくれるはず。
「よし、じゃあ話は合わせてくれよ?」
「何年生きていると思ってるんだい?そのくらい朝飯前さ!」
任せておけ、とエリは胸を張る。その弾みで大きな胸が大きく揺れる。初心な男子であるケニスたち3人はまた顔を赤くして目を逸らしていた。
そろそろ慣れた方が身のためだと思うんだけどなぁ。
そう思いながら歩いていれば屋敷の近くまで来ていた。疲労困憊ではあるけど、魔物たちがいないからかあっという間に着いたようだ。
「ここからが正念場だ。お嬢、頼んだぜ?」
「うん!」
かなり話が大袈裟になってるけど、エリたちと一緒にいられるようになるためだ。なんとしてでもエリを専属護衛の役に就かせる。
そう意気込んで大きな玄関扉を開けて屋敷に入る。すると、何故か副メイド長のユリハがそこにいた。いつもはメイド長のメイサがいるんだけど、何かあったのかな?
「お帰りなさいませ、シェリルお嬢様。そちらの方はお客様でしょうか?」
「うん!とうさまとおはなししたいんだけど、いる?」
「ええ、執務室で仕事をなさっております。ご案内いたしますか?」
「だいじょーぶ!」
いつもの執務室にいるなら道は完全に覚えてるから大丈夫。行き慣れてるからね。いなかったとしても待てるし、待っている間に執務室の中にあるものでいろんなことがわかるから楽しいから問題はない。
ケースとモウス、セイルを休んでもらうために部屋に戻して私はモルヴィスとケニス、エリたちを連れて執務室へ向かう。
ナイスバディなエリを見た父様、びっくりするかな?デレデレしなければ良いけど……。あ、母様怖いからそれはないか。
「とうさま~、いますか~?」
執務室に着いてドアをノックして父様の返事を待つ。けど、いつもすぐ来る返事が返ってこない。【探知】を使うとどうやら執務室にはいないようだ。
「とうさま、いないみたい。まってる?」
「そうだなぁ。勝手に入るのは失礼だが、お嬢が一緒なら大丈夫だろう」
「うん」
大丈夫なのかどうかはなんとも言えないけど、モルヴィスがそう言うのなら大丈夫だろう。怒られそうな感じで怖いけど、変なの見ても見てないって誤魔化せば大丈夫なはずだ。
「しつれいしま~す」
「シェリル様、いつもそんなに畏まって入らないのにどうしたんです?」
「なんとなく?」
父様がいない執務室はなんかいつもと違う雰囲気を醸し出していて、つい前世でのマナーをやってしまった。まあ、普段からやるべきなんだろうけど子供だからと言う理由で許されてたからね。そこはスルーしてて欲しいかな。
そっとドアを開けて中に入れば、そこには誰もいなかった。父様はもちろん、補佐としてついている執事長のハイネスもいない。その代わりに、一枚の紙がデスクの前の床に落ちていた。
そこに書かれていたのは──。
「……“イリス・レイフォードについて”」
姉様のことの書類だった。
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