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淫欲八姫
第37話 世界中の殺し屋が“まーくん”の命を狙ってくるとかね。
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気まずい空気感が漂っていたのでそれを払拭しようと思った俺は窓から見える景色をぼんやりと眺めていた。
窓の外には白いものがチラチラと舞っているのが見えていて、こっちの世界でも雪なんて降るんだなと思ってしまった。
「え、雪!?」
思わず叫んでしまった俺の反応に驚いたアスモちゃんは外を見てから俺の事をもう一度見ていた。
何かを思い出したかのように一度頷いてから俺に優しく話しかけてきたのだ。
今の状況に戸惑っている俺に向かってるのだが、その姿は小学生の男の子に優しく話しかけるような大人な女性に見えてしまった。
「“まーくん”があの殺し屋に殺されかけてからもう半年以上経ってるもんね。季節も変わるってものだよ。それにしても、あのまま目覚めなかったらどうしようかなって思うと、オレも心配で毎日不安で一杯だったんだ。お見舞いに来てくれたイザーちゃんとその友達も心配してくれたんだけど、どんなに治癒魔法をかけても“まーくん”は目覚めなかったんだよね。一週間くらいイザーちゃんがこの部屋で見守っててくれたんだけど、“まーくん”は一向に目覚める気配もなかったんだってさ」
「ちょっと待ってもらっていいかな。色々と驚くことが多くて何から驚けばいいのかわからないんだけど、イザーちゃんが俺のお見舞いに来たってのは本当の話?」
「本当だよ。“まーくん”が意識を失ってから一か月くらい経ってイザーちゃんと連絡を取ることが出来たんだけど、それからすぐにお見舞いに来てくれたんだ。その時に撮った写真があるんだけど、“まーくん”に見せてあげるよ」
半年もの間意識を失っていた事よりも、イザーちゃんが俺に会いに来てくれたという事の方が驚きが大きかった。
俺のお見舞いに来てくれたという事は、この世界にいるイザーちゃんは間違いなく俺の彼女のイザーちゃんであるという事だろう。例え、イザーちゃんに好きな相手が出来たとしても、俺が別れを認めていないので元彼女ではなく彼女だという事を強調しておかないと俺の心は壊れてしまいそうだ。
「写真は見たいんだけど、イザーちゃんとアスモちゃんの他にイザーちゃんの友達って写ってたりする?」
「俺と一緒ってのはないけど、イザーちゃんとお友達が写ってる写真はあるよ。多分、イザーちゃんのお友達も“まーくん”と一緒で他の世界から連れてきた人だと思うんだけど、とんでもない魔力を秘めてる恐ろしいお姉さんだったよ。あのお姉さんの魔力があれば、“まーくん”の自爆攻撃に頼らなくても良さそうだなって思ったくらいだもん」
「自爆攻撃をしなくても済むんだったらそれでありがたいとは思うんだけど、イザーちゃんが連れてるお友達がそんなに強いってのは気になるかも」
俺は別に死ぬことが怖いとは思っていない。
アスモちゃんの殺意に触れた時点で死ぬことに対する恐怖心は無くなったと思っている。あの殺し屋がアスモちゃんと比べてしまう事で怖さを感じなかっただけであって、戦う順番が逆であれば目を合わせる事も出来なかったんじゃないかと思ってしまう。アスモちゃんが異常なだけであって、それと比べるのは誰にとっても損な事になってしまいそうだ。
悲しいことに、アスモちゃんが見せてくれた写真に写っていたのは、俺の彼女であるイザーちゃんとうまなちゃんであった。
あんな短時間しか会ったことのない女の子の顔を覚えているのは状況が特殊過ぎたからであって、本来の俺の記憶力では一度や二度会っただけの人の顔なんて覚えられないのだ。
余程特徴的な顔でもない限りは思い出す事も出来ないのが普通だし、俺がおじいちゃんになったとしても忘れることなんて無いのだろうと思うくらいに印象的な出来事であったのだ。
「好きな人が出来た」と言ってた彼女が可愛らしい女の子を連れてきた。そんな経験をしたことがある人が今生きている人の中でどれくらいいるのだろう。
俺の他にも誰かが経験してくれていればいいと思うのだけど、そんな経験をした人が俺以外にいるとは思えないのだ。
勇気を振り絞って写真を見たことを後悔した俺ではあったが、俺の知っているイザーちゃんが写っている事だけは救いであった。
なんだかんだ言っても、イザーちゃんは俺の事を心配してお見舞いに来てくれたんだ。
その思いだけで俺は報われた気がする。
「とりあえず、もう何日か様子を見て“まーくん”が平気そうだったら八姫に会いに行く旅を再開しようか。イザーちゃんは先週から“まーくん”の回復祈願を始めるって言ってからしばらく艮には行けなくなっちゃったんだけど、どこか行きたいところはあるかな?」
「俺は一刻も早くイザーちゃんに会いたいと思ってるんだけど、回復祈願ならもう必要なくないかな?」
「まあ、“まーくん”が意識を取り戻したからぶっちゃけると全く必要ないんだけど、途中でやめちゃうと反作用が起って取り返しのつかない事態になっちゃうかもしれないよ。それこそ、世界中の殺し屋が“まーくん”の命を狙ってくるとかね。可能性は十分にあるんだから」
何でも途中でやめるのは良くないという事なのだろう。
それにしても、このタイミングで目覚めてしまう俺はとことん持っていない男と言えよう。
もう少し早く目覚めていればイザーちゃんも回復祈願なんてしなくて済んだだろうし、俺も元気にイザーちゃんのいる艮まで行けたのかもしれない。
「特に要望が無ければ順番に回っていこうね。その方が効率がいいからさ。どんな時でも効率よく行くのが一番だよ」
すぐにイザーちゃんの所に行けないのだったらどこへ行っても同じだろう。そう思った俺はアスモちゃんの言葉に素直に従う事にした。
最初からそのつもりではいたのだけれど、今の状況を鑑みるとソレが当然だという気持ちがより強くなったのだった。
窓の外には白いものがチラチラと舞っているのが見えていて、こっちの世界でも雪なんて降るんだなと思ってしまった。
「え、雪!?」
思わず叫んでしまった俺の反応に驚いたアスモちゃんは外を見てから俺の事をもう一度見ていた。
何かを思い出したかのように一度頷いてから俺に優しく話しかけてきたのだ。
今の状況に戸惑っている俺に向かってるのだが、その姿は小学生の男の子に優しく話しかけるような大人な女性に見えてしまった。
「“まーくん”があの殺し屋に殺されかけてからもう半年以上経ってるもんね。季節も変わるってものだよ。それにしても、あのまま目覚めなかったらどうしようかなって思うと、オレも心配で毎日不安で一杯だったんだ。お見舞いに来てくれたイザーちゃんとその友達も心配してくれたんだけど、どんなに治癒魔法をかけても“まーくん”は目覚めなかったんだよね。一週間くらいイザーちゃんがこの部屋で見守っててくれたんだけど、“まーくん”は一向に目覚める気配もなかったんだってさ」
「ちょっと待ってもらっていいかな。色々と驚くことが多くて何から驚けばいいのかわからないんだけど、イザーちゃんが俺のお見舞いに来たってのは本当の話?」
「本当だよ。“まーくん”が意識を失ってから一か月くらい経ってイザーちゃんと連絡を取ることが出来たんだけど、それからすぐにお見舞いに来てくれたんだ。その時に撮った写真があるんだけど、“まーくん”に見せてあげるよ」
半年もの間意識を失っていた事よりも、イザーちゃんが俺に会いに来てくれたという事の方が驚きが大きかった。
俺のお見舞いに来てくれたという事は、この世界にいるイザーちゃんは間違いなく俺の彼女のイザーちゃんであるという事だろう。例え、イザーちゃんに好きな相手が出来たとしても、俺が別れを認めていないので元彼女ではなく彼女だという事を強調しておかないと俺の心は壊れてしまいそうだ。
「写真は見たいんだけど、イザーちゃんとアスモちゃんの他にイザーちゃんの友達って写ってたりする?」
「俺と一緒ってのはないけど、イザーちゃんとお友達が写ってる写真はあるよ。多分、イザーちゃんのお友達も“まーくん”と一緒で他の世界から連れてきた人だと思うんだけど、とんでもない魔力を秘めてる恐ろしいお姉さんだったよ。あのお姉さんの魔力があれば、“まーくん”の自爆攻撃に頼らなくても良さそうだなって思ったくらいだもん」
「自爆攻撃をしなくても済むんだったらそれでありがたいとは思うんだけど、イザーちゃんが連れてるお友達がそんなに強いってのは気になるかも」
俺は別に死ぬことが怖いとは思っていない。
アスモちゃんの殺意に触れた時点で死ぬことに対する恐怖心は無くなったと思っている。あの殺し屋がアスモちゃんと比べてしまう事で怖さを感じなかっただけであって、戦う順番が逆であれば目を合わせる事も出来なかったんじゃないかと思ってしまう。アスモちゃんが異常なだけであって、それと比べるのは誰にとっても損な事になってしまいそうだ。
悲しいことに、アスモちゃんが見せてくれた写真に写っていたのは、俺の彼女であるイザーちゃんとうまなちゃんであった。
あんな短時間しか会ったことのない女の子の顔を覚えているのは状況が特殊過ぎたからであって、本来の俺の記憶力では一度や二度会っただけの人の顔なんて覚えられないのだ。
余程特徴的な顔でもない限りは思い出す事も出来ないのが普通だし、俺がおじいちゃんになったとしても忘れることなんて無いのだろうと思うくらいに印象的な出来事であったのだ。
「好きな人が出来た」と言ってた彼女が可愛らしい女の子を連れてきた。そんな経験をしたことがある人が今生きている人の中でどれくらいいるのだろう。
俺の他にも誰かが経験してくれていればいいと思うのだけど、そんな経験をした人が俺以外にいるとは思えないのだ。
勇気を振り絞って写真を見たことを後悔した俺ではあったが、俺の知っているイザーちゃんが写っている事だけは救いであった。
なんだかんだ言っても、イザーちゃんは俺の事を心配してお見舞いに来てくれたんだ。
その思いだけで俺は報われた気がする。
「とりあえず、もう何日か様子を見て“まーくん”が平気そうだったら八姫に会いに行く旅を再開しようか。イザーちゃんは先週から“まーくん”の回復祈願を始めるって言ってからしばらく艮には行けなくなっちゃったんだけど、どこか行きたいところはあるかな?」
「俺は一刻も早くイザーちゃんに会いたいと思ってるんだけど、回復祈願ならもう必要なくないかな?」
「まあ、“まーくん”が意識を取り戻したからぶっちゃけると全く必要ないんだけど、途中でやめちゃうと反作用が起って取り返しのつかない事態になっちゃうかもしれないよ。それこそ、世界中の殺し屋が“まーくん”の命を狙ってくるとかね。可能性は十分にあるんだから」
何でも途中でやめるのは良くないという事なのだろう。
それにしても、このタイミングで目覚めてしまう俺はとことん持っていない男と言えよう。
もう少し早く目覚めていればイザーちゃんも回復祈願なんてしなくて済んだだろうし、俺も元気にイザーちゃんのいる艮まで行けたのかもしれない。
「特に要望が無ければ順番に回っていこうね。その方が効率がいいからさ。どんな時でも効率よく行くのが一番だよ」
すぐにイザーちゃんの所に行けないのだったらどこへ行っても同じだろう。そう思った俺はアスモちゃんの言葉に素直に従う事にした。
最初からそのつもりではいたのだけれど、今の状況を鑑みるとソレが当然だという気持ちがより強くなったのだった。
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