春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎

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高校生編2

陽香は林田さんが気になっている

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「気のせいかもしれないんだけどさ、下校中にウチの制服を着ている生徒に会う機会って増えてない?」
「そうかもしれないね。もしかしたらさ、陽香を見るために遠回りしている人がいるのかもね」
「貴重な時間を使ってまでそんな事をする人なんていないでしょ」
「どうだろうね。一部の熱狂的な陽香ファンとかがそうしてるって可能性もあるんじゃないかな」
「ええ、そういうのってちょっと怖いよね。最近は学校にいる時に視線を感じることも多くなったんだけど、昌晃はそんな風に感じることってあったりする?」
「どうだろう。僕はそんなに他人の新鮮を気にして過ごしたりしてないからわからないけどね」
「じゃあ、この前外でお弁当を食べていた時も何も感じてなかったの?」
「あの時は多少は見られているなって思ってたけど、場所が場所だから仕方ないなって思ってたんだよね。それがどうかした?」
「いや、ウチのクラスでも昌晃の事はそれなりに認識されているんだけど、昌晃が人前で堂々と女子とお昼を過ごしてたって言いに来た人がいたんだよ。私はそれが何って思ってたんだけど、みんなは何か気にしてるみたいでやたらと見に行くように言われたんだよね。で、見に行ったらさ、あんなに一目のつくところでお弁当を食べさせてもらってるんだもん。そりゃ誰だって気になると思うわ。なんであんなに恋人みたいなことをしてたのよ?」
「なんでって、そんなに深い意味は無いよ。林田さんがオカズを食べさせてくれるって言ってくれたからそうなっただけだしね」
「へえ、昌晃ってそうやって誰のでも食べちゃうんだね。あ、普段からそうだったかも」
「そうなんだよ。僕は普段からそんな感じだからさ、林田さんも最初は驚いてたよ。驚いてはいたけどさ、僕の動きがあまりにも自然だったからそのまま口に入れたんだって」
「まあ、それはそれでいいんだけど。その、今日は林田さんと、あんなことしなかったの?」
「あんなことって?」
「ほら、毎週水曜日にさ、二人で何かしてるみたいじゃない。それよ、それ」
「それって、何だろう。ああ、アレか、アレはしてないよ。さすがに人前ではあんなことはしないでしょ」
「それもそうよね。それで今日は林田さんの匂いがあまり感じられないのね。でも、そのまま帰ったら真弓が変な風に思っちゃうかもね」
「そうかな。僕にはそんな風には思えないんだけどな。でも、結構いろんな人がついて来てるみたいだし、今まで見たいに公園に行くなんて出来ないよね」
「そうなんだけどさ、だったら人目のつかないところに行けばいいんじゃないかな。例えば、誰もいない教室とか」
「教室って、今から学校に戻るの?」
「いや、さすがに今から学校に戻るのは無いわ。自分で言ってておかしいって思ったもん。学校じゃなくてもさ、どこかあるんじゃないかな。例えば、カラオケとか映画とか」
「カラオケはわかるけど、映画って座ってみてるだけじゃないの?」
「そうなんだけど、それでも多少は匂いを誤魔化せるでしょ。それくらいでちょうどいいと思うのよね」
「別にそれでもいいと思うけどさ、僕は映画を見るくらいのお金なんて持ってきてないよ」「大丈夫、それは心配しなくても平気だよ。私はまだお小遣いが残ってるしね。それに、ちょうど見たい映画があったんだ。ね、たまにはいいでしょ?」
「別にいいけど、今日の料理当番って陽香じゃないの?」
「今日は私だったけど真弓と変わったから大丈夫。真弓が明日の夜に友達と約束があるとかで変わったのよ。だから、何の問題もないってわけ」
「それならいいんだけどさ。で、何の映画を見るの?」
「それは行ってからのお楽しみって事で」

 僕は陽香に言われるまま映画館へと足を延ばした。今上映中の作品はあまり馴染みのないモノばかりなので、何かの続編がやっているというわけではないみたいだ。
 陽香がチケットを購入している間に僕は飲み物とポップコーンを買っておいた。普段は家で映画を見ることが多いのでポップコーンを食べることが無いのだが、せっかくの機会なので買ってみることにしたのだ。ちなみに、ドリンク二つ買うとポップコーンが大きいサイズになるサービスが行われていたので、僕は大きいサイズのポップコーンを抱えるように持つことになった。

「さすがにそのサイズのポップコーンを買うとは思わなかったわ。そんなにたくさん食べられるの?」
「いや、僕一人で食べるわけではないでしょ。陽香も食べるよね?」
「まあ、少しくらいは食べるかも。でも、少しだけだと思うよ」

 僕はポップコーンとドリンクで両手が塞がっているので映画のチケットを受け取ることが出来なかったので、いまだに何の映画を見るのか知らない。知らないけど、開場案内を見る限り、流行しているラブストーリーではないようだった。

「そろそろ何を見るか教えてもらってもいいかな?」
「別にいいけど、昌晃って怖いの平気だもんね?」
「うん、平気だよ。もしかして、あの怖そうなやつを見るの?」
「そうなのよ。私は怖いのあんまり平気じゃないけどさ、一応話題になってるから見ておこうかなって思ってね。クラスの人も面白かったって噂してたし、見ておいて損は無いんじゃないかなって。でも、さすがに一人では見れないって思って、ちょうどいい機会だから来たってわけ。だからさ、この映画で良いわよね?」
「別にどれでもいいんだけど、出来るならあのラブストーリーのじゃないのが良いなって思ってたくらいだよ。でも、本当にホラーで良いの?」
「大丈夫よ。私ももう子供じゃないんだし、作り物で怖がったりなんてしないから平気よ」

 陽香が係員に二人分のチケットを渡して入場したのだが、僕はちょっと離れたところから僕たちを見ている集団がいることを陽香には教えなかった。教えたところで何かがあるというわけでもないし、チケットを買っている人があの中にいなかったことを考えると、この映画を見る人もいないのだろうと思っていた。
 僕たちが自分たちの席に座って予告なんかを見ていると、先程までロビーでウロウロしていた生徒たちが一斉に入場してきた。なぜかみんなは僕たちから離れるように前の方の席を確保していたのだが、誰一人として僕たちの姿を見ようとする人たちはいなかった。

「ねえ、映画館ってあんまり来ないんでわからないんだけど、前の方が見やすいとかあるの?」
「どうなんだろう。どの席も見ずらいってことは無いと思うけど、今日はあの辺が人気なだけじゃないかな。陽香はこの席が良かったんでしょ?」
「うーん、よくわからないんで真ん中あたりにしただけなんだよね。でも、ここも見やすそうだしいいよね」

 二人の間に置いてあるポップコーンを食べながら陽香は答えたのだが、零れ落ちそうなほど盛られていたポップコーンはもう中を覗かないと見えないくらいに減っていた。

「あ、ごめんなさい。いっぱい食べちゃった」
「大丈夫だよ。そんなにポップコーン好きだったっけ?」
「あんまり食べた事なかったけど、食べ始めたら手が止まらなくなるね。でも、映画が始まるまでは我慢しなきゃね」

 そう言っていた陽香ではあったが、その言葉とは裏腹に陽香の手が止まることは無く、映画が始まった頃にはポップコーンはもうほとんど残っていなかった。僕も少しくらい食べておこうかなと思って手を入れてみたのだけれど、そこにはポップコーンではなく陽香の手しかなかったのだ。

「あ、ごめん。結局全部食べちゃった。でも、一つだけ残っているから食べさせてあげるね。ほら、口を開けて」

 僕は言われるままに口を開けて待っていたのだけれど、箸で食べさせてもらうのとは違って、直接手で食べさせてもらうという事は何か気恥ずかしさを感じていた。
 陽香が僕に口にポップコーンを入れた後で陽香もそれに気付いたようなのだが、顔を背ける前に一瞬だけ見えたのだが、その顔は真っ赤になっていた。
 場内が暗くなるまで陽香は顔をそむけたままだったのだが、僕はそれもなんだか可愛らしいなと感じてしまっていたのだった。
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