24 / 44
覚醒は突然に
しおりを挟む
あまりにも数が多すぎてイザー二等兵の体が見えなかったはずなのに、いつの間にか虫たちの間に空間が出来ていて少しだけ肌や服が見えていた。その出来た空間を埋めるように新しい虫がやってきてはいるのだが、その虫たちも少しずつ距離をとっているので先ほどに比べるとイザー二等兵の姿はほんの少しではあるが確認することが出来ていた。
ほんの一瞬だけ見えている目は色々な場所を確認するようにキョロキョロと動いていた。だが、ルーちゃんの姿を捉えてからはじっと見つめている。ルーちゃんが場所を変えてもすぐにその場所に視線を向けていて逃すことはなかった。イザー二等兵の後ろに回り込んでいたのにもかかわらず、その視線から逃れることは出来なかったのだ。
ルーちゃんはさらに虫を追加しているはずなのだが、イザー二等兵についている虫たちはその数を徐々に減らしていた。その原因はわからないが、ルーちゃんが追加している虫たちよりも減っている虫の方が多いことだけは間違いない。イザー二等兵の顔も少しずつ見えてきているし、手も動いているように見えていた。
「ほら、私の言ったとおりでしょ。イザーちゃんがもうすぐ反撃をするって。マーちゃんはイザーちゃんの事を信じてなかったけどさ、私はずっとイザーちゃんの事を信じてたもんね」
「その言い方だと俺がイザーちゃんの事を信じてないみたいに聞こえるじゃない。俺だって信じてるし」
「あれれ、その割には試験を止めた方が良いとか言ってたような気がするんですけど。あの時に止めてたらイザーちゃんが今みたいに新しくなることもなかったと思うんだけどな」
「新しくなるってのはよくわからないけど、あの虫の集団に耐えたから逆転の目が出てきたってことだよね?」
栗宮院うまな中将は小さくため息をつくと、画面ではなくマーちゃん中尉の方に体を向けて真剣な表情を作っていた。
「逆転ってのはさ、イザーちゃんが負けてる状態があったってことになると思うんだよね。でも、私が見てた限りイザーちゃんはルーちゃんに負けてるときってなかったと思うんだ。サッカーとか野球みたいに得点でハッキリわかればいいんだけど、私が見た限りではイザーちゃんは一度もルーちゃんに主導権を握られた時なんてなかったと思うんだよね。マーちゃんの言い方だとルーちゃんがイザーちゃんよりも勝っていた時間があるってことだと思うんだけど、どの時の事を言っているのかな?」
マーちゃん中尉は真っすぐに見つめてくる栗宮院うまな中将と視線を合わせることが出来ずに目を逸らしていたのだが、それがバレないように画面に映し出されているイザー二等兵の事を見守っていた。
「俺だってイザーちゃんが負けてたなんて思ってはいないよ。でも、あんな風に体の動きを封じられた状態で虫が好き勝手してる状況を見たら一般的には負けてるって思っても仕方ないんじゃないかな。俺がそう思ってるってことじゃなくて、一般的に見たらそうなんじゃないかって言ってるだけだからね」
「そんな風に言い訳なんてしなくてもいいのにな。マーちゃんが思ったことを素直に言ってくれたら私もイザーちゃんも嫌な気持ちにならないと思うんだけどな。だから、素直に言ってくれたら大丈夫だよ」
「そんな風に言われてもさ俺だってイザーちゃんの事は信じてたし。負けるはずがないとは思ってたんだけど」
「その言い方は、負けるかもしれないって思ってたってことだよね。私たちの間に書く仕事なんてしてほしくないんだけどな。マーちゃんが素直に言ってくれたら、私もとっておきの秘密を教えてあげてもいいんだけどな」
「俺はいつだって素直だよ。ほら、イザーちゃんが何かしようとしているみたいだよ。注目してた方が良いんじゃないかな」
マーちゃん中尉はうまくごまかせたと思っているようではあるけれど栗宮院うまな中将は優しいのでそれに乗ってあげているようだ。マーちゃん中尉もその事は重々承知していて、その優しさに甘えることにしたようだ。
体についていた虫を掴んでルーちゃんに投げ返していた。その虫を優しく手で包み込むように受け取ったルーちゃんは自分の影の中へ虫を戻すと、その影となっていた虫たちを自分の右手へと集めていた。
「なんか、イザーちゃんじゃないみたいだけど、虫たちに襲われておかしくなっちゃったのかな?」
ルーちゃんの事をじっと見つめたまま動かないイザー二等兵であった。だが、ルーちゃんの動きに合わせて体の向きを変えていき、常に自分の体とルーちゃんの体が向かい合っている状況を作り出していた。
イザー二等兵は何かを確かめるように自分の右手を顔の前で閉じたり開いたりしていた。ゆっくりとした動きではあるが、確実に自分の意志で動かしているという事だけは見ている側もルーちゃんもわかってはいた。
「どうやって毒を中和したのかわからないけどさ、そんな簡単に出来ることでもないと思うんだよね。やっぱりイザーちゃんって凄いんだな。私が思ってるよりもずっとずっと凄い人だってわかってよかったよ。じゃあ、私はこの辺で失礼しちゃおうかな」
そのまま帰ろうとしているルーちゃんの隣に一瞬で移動したイザー二等兵はそのままルーちゃんの腕をつかみ、ルーちゃんの耳元に優しく囁いていた。
「ダメだよ。まだお前とおれの勝負が終わってないよ。決着をつけないで終わるなんて許されるはずがないよね。それにさ、まだおれがお前に攻撃してないってのを忘れてほしくないな」
体内に隠していた虫を一気に放出してイザー二等兵の動きを止めようとしたルーちゃんではあったが、その虫たちはイザー二等兵の体に触れることもなく地面へと落ちていって影の中へと消えていった。
「そんなんじゃ、おれの動きはもう止められないよ」
ほんの一瞬だけ見えている目は色々な場所を確認するようにキョロキョロと動いていた。だが、ルーちゃんの姿を捉えてからはじっと見つめている。ルーちゃんが場所を変えてもすぐにその場所に視線を向けていて逃すことはなかった。イザー二等兵の後ろに回り込んでいたのにもかかわらず、その視線から逃れることは出来なかったのだ。
ルーちゃんはさらに虫を追加しているはずなのだが、イザー二等兵についている虫たちはその数を徐々に減らしていた。その原因はわからないが、ルーちゃんが追加している虫たちよりも減っている虫の方が多いことだけは間違いない。イザー二等兵の顔も少しずつ見えてきているし、手も動いているように見えていた。
「ほら、私の言ったとおりでしょ。イザーちゃんがもうすぐ反撃をするって。マーちゃんはイザーちゃんの事を信じてなかったけどさ、私はずっとイザーちゃんの事を信じてたもんね」
「その言い方だと俺がイザーちゃんの事を信じてないみたいに聞こえるじゃない。俺だって信じてるし」
「あれれ、その割には試験を止めた方が良いとか言ってたような気がするんですけど。あの時に止めてたらイザーちゃんが今みたいに新しくなることもなかったと思うんだけどな」
「新しくなるってのはよくわからないけど、あの虫の集団に耐えたから逆転の目が出てきたってことだよね?」
栗宮院うまな中将は小さくため息をつくと、画面ではなくマーちゃん中尉の方に体を向けて真剣な表情を作っていた。
「逆転ってのはさ、イザーちゃんが負けてる状態があったってことになると思うんだよね。でも、私が見てた限りイザーちゃんはルーちゃんに負けてるときってなかったと思うんだ。サッカーとか野球みたいに得点でハッキリわかればいいんだけど、私が見た限りではイザーちゃんは一度もルーちゃんに主導権を握られた時なんてなかったと思うんだよね。マーちゃんの言い方だとルーちゃんがイザーちゃんよりも勝っていた時間があるってことだと思うんだけど、どの時の事を言っているのかな?」
マーちゃん中尉は真っすぐに見つめてくる栗宮院うまな中将と視線を合わせることが出来ずに目を逸らしていたのだが、それがバレないように画面に映し出されているイザー二等兵の事を見守っていた。
「俺だってイザーちゃんが負けてたなんて思ってはいないよ。でも、あんな風に体の動きを封じられた状態で虫が好き勝手してる状況を見たら一般的には負けてるって思っても仕方ないんじゃないかな。俺がそう思ってるってことじゃなくて、一般的に見たらそうなんじゃないかって言ってるだけだからね」
「そんな風に言い訳なんてしなくてもいいのにな。マーちゃんが思ったことを素直に言ってくれたら私もイザーちゃんも嫌な気持ちにならないと思うんだけどな。だから、素直に言ってくれたら大丈夫だよ」
「そんな風に言われてもさ俺だってイザーちゃんの事は信じてたし。負けるはずがないとは思ってたんだけど」
「その言い方は、負けるかもしれないって思ってたってことだよね。私たちの間に書く仕事なんてしてほしくないんだけどな。マーちゃんが素直に言ってくれたら、私もとっておきの秘密を教えてあげてもいいんだけどな」
「俺はいつだって素直だよ。ほら、イザーちゃんが何かしようとしているみたいだよ。注目してた方が良いんじゃないかな」
マーちゃん中尉はうまくごまかせたと思っているようではあるけれど栗宮院うまな中将は優しいのでそれに乗ってあげているようだ。マーちゃん中尉もその事は重々承知していて、その優しさに甘えることにしたようだ。
体についていた虫を掴んでルーちゃんに投げ返していた。その虫を優しく手で包み込むように受け取ったルーちゃんは自分の影の中へ虫を戻すと、その影となっていた虫たちを自分の右手へと集めていた。
「なんか、イザーちゃんじゃないみたいだけど、虫たちに襲われておかしくなっちゃったのかな?」
ルーちゃんの事をじっと見つめたまま動かないイザー二等兵であった。だが、ルーちゃんの動きに合わせて体の向きを変えていき、常に自分の体とルーちゃんの体が向かい合っている状況を作り出していた。
イザー二等兵は何かを確かめるように自分の右手を顔の前で閉じたり開いたりしていた。ゆっくりとした動きではあるが、確実に自分の意志で動かしているという事だけは見ている側もルーちゃんもわかってはいた。
「どうやって毒を中和したのかわからないけどさ、そんな簡単に出来ることでもないと思うんだよね。やっぱりイザーちゃんって凄いんだな。私が思ってるよりもずっとずっと凄い人だってわかってよかったよ。じゃあ、私はこの辺で失礼しちゃおうかな」
そのまま帰ろうとしているルーちゃんの隣に一瞬で移動したイザー二等兵はそのままルーちゃんの腕をつかみ、ルーちゃんの耳元に優しく囁いていた。
「ダメだよ。まだお前とおれの勝負が終わってないよ。決着をつけないで終わるなんて許されるはずがないよね。それにさ、まだおれがお前に攻撃してないってのを忘れてほしくないな」
体内に隠していた虫を一気に放出してイザー二等兵の動きを止めようとしたルーちゃんではあったが、その虫たちはイザー二等兵の体に触れることもなく地面へと落ちていって影の中へと消えていった。
「そんなんじゃ、おれの動きはもう止められないよ」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ホテル「ソラスフォレスト」と季節の人々 ~44歳男性コックと25歳女性コックの不器用関係と不思議なスタッフと~
物書き赤べこ
キャラ文芸
さまざまな背景を抱えた人々が働くこのホテルに――
ある日、ひとりの男が倒れて運び込まれた。
無精ひげに、旅で焼けた肌。
存在感の薄いその男はまるで風景の一部のように静かだった。
名前は 神谷奏──44歳。
旅の終わりに行き場を失い、空腹と疲労で朦朧としながら倒れていた男。
その男の目が開いた瞬間から、ホテルの空気は、ゆっくりとしかし確実に変わり始める。
この話は―― ささやかだが確かな“再生”の物語。
そして、世界を巡った男と、ホテルに人生を賭けた者たちが 出会ってしまった、その始まりの話である。
料理人は、時に人生を賭けて鍋を振る。
食べる者の人生に触れ、作る者の過去を暴かれ、それでもなお、皿の上にすべてを置く覚悟を試される。 彼もまた、その一人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる