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妖精マリモ子登場
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大粒の涙を目に浮かべた少女がマーちゃん中尉の腰に抱き着いてきた。着ている服がボロボロになっているのは少女が貧乏で服が買えないのではなくイザー二等兵が送り込んだ虫たちの仕業だろう。少女は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をマーちゃん中尉の腰にぐいぐいと押し付けていた。
「あんなにたくさんの虫を送り付けるとか頭おかしいんじゃないの。マーちゃんからもあの女に何か言ってやってよ」
少女はイザー二等兵を睨みながらマーちゃん中尉にお願いをしているのだが、それは頼んでいるというよりも命令に近い言い方であった。
「その子ってマーちゃんの知り合いなの?」
イザー二等兵は今まで見たことのなかった少女がマーちゃん中尉と知り合いであるかのようにふるまっている姿を見て気になったことを聞いていた。イザー二等兵としては、自分と栗宮院うまな中将が来るまでマーちゃん中尉が誰かと仲良くしていたという話を聞いたことがなかった。それゆえ、この少女が何者なのか気になっていたのだ。
マーちゃん中尉とこの少女が出会ったのは偶然ではなく仕組まれたことではあったが、それには栗宮院うまな中将もイザー二等兵も関わってはいない。この少女が自分のためにマーちゃん中尉を引き寄せたのだ。
イザー二等兵も一緒にやってきたのは少女としては誤算だったのでイザー二等兵を返そうとあの手この手で妨害をしてきたのだけれど、そういった小細工はイザー二等兵の虫たちによって逆に自分が追い込まれてしまったのだった。
少女はマーちゃん中尉が阿寒湖温泉にやってきた時からずっと会いたいと思っていたのだ。だが、その願いがすぐに叶うことはなく二人が出会うまでにはそれなりの時間を要してしまったのだ。
「マーちゃん中尉って、全部の系統の魔法を使うことが出来るんでしょ。それって凄いよね。私も真似してみたいって思ったけど、覚えている魔法を全部忘れないといけないってのは無理かもしれない。でも、私のお願いをマーちゃん中尉が聞いてくれたらそれでいいってことになるかも」
初めて会ったはずの少女はマーちゃん中尉が昔からの知り合いであるかのように抱き着いてきたのだ。まるでその姿は仕事から帰ってきた大好きなパパが帰ってきて嬉しいと思う子供のようであった。ただ、身長は低いもののその豊満に育った胸はとても子供だと呼べるようなものではなかった。
「私はね、この阿寒湖に住んでいる妖精のマリモ子って言うの。マーちゃん中尉のその魔法を使って私が好きな場所に行けるようにしてくれたら嬉しいな」
「好きなところに行けるようにってどういう事なの?」
「私はね、この土地に縛られてるんだ。別にそれが嫌ってことではないんだけど、どうせなら私もいろんな場所に行ってみたいなって思ってね。それで、私をこの地に縛り付けている邪竜モココココを倒してほしいんだ」
邪竜モココココというのはふざけた名前だと思ったマーちゃん中尉ではあった。それと同時に、マリモ子という名前も本当なのか考えてしまっていた。
「あのね、邪竜モココココは行動するたびに弱点属性が変化するんだよ。弱点属性以外の攻撃は全て体力回復になっちゃうから普通に攻撃するだけじゃ倒せないんだって。そんな感じの邪竜モココココはマーちゃんなら倒せると思うんだけど、お願いしてもいいかな?」
マーちゃん中尉は正直なところ、この件には関わりたくないと思っているのだ。毎回属性が変化する敵と戦うのはちょっとだけ面白そうだなと思ったけれど、いちいち弱点を考えるのは面倒くさいと思った。何より、その弱点をどうやって見分けるのかもわからないので面白そうだという理由では戦うことが出来ないと考えてしまった。
「お願いされたとしても無理だよ。弱点が毎回変化する相手となんて戦えないし。その弱点がわかったとしても俺程度の魔法じゃどうすることも出来ないと思う」
「大丈夫ですよ。邪竜モココココの弱点なら私が教えますから。それに、マーちゃんには『うまな式魔法術』の凄いやつが使えるんだから問題ないって。『うまな式魔法術』とマーちゃんの魔法で一瞬だって。私には無理でもマーちゃんなら一瞬で倒せると思うだけどな」
人間同士の戦いばかりだったこともあって『うまな式魔法術』を使っても相手にダメージを与えられないと思い込んでしまっていたのだが、邪竜相手なら『うまな式魔法術』を使えばどうにでもなるんじゃないかと考えていた。邪竜と呼ばれるくらいだから『うまな式魔法術』を使えるようになっている可能性もあるのかと思ったけれど、『うまな式魔法術』を使えるのは世界でも日本人だけだという事を思い出したのであった。
「マリモ子のために邪竜と戦うって本気で言ってるの?」
イザー二等兵はマーちゃん中尉の目を真っすぐに見つめながら問いかけていた。マーちゃん中尉はその目を真っすぐに見返すことが出来ずに視線を不安定に動かしているのであった。
「それにしても、邪竜モココココって変な名前よね。マリモ子ってのも変な名前だと思ったけど、それ以上に邪竜モココココってふざけすぎてると思うんだけど」
「そんなこと言うけど、イザーって名前だって変な名前だと思うけど。うまなとイザーって二人とも変な名前だと思うんですけど」
マーちゃん中尉は二人の話に加わらないように存在感を消そうとしたのだが、抱き着いていたマリモ子はそのまま顔を上げて真っすぐにマーちゃん中尉の顔を見つめているし、イザー二等兵も少しだけ怒ったような顔でマーちゃん中尉とマリモ子の事を何度も何度も見ていたのだった。
「あんなにたくさんの虫を送り付けるとか頭おかしいんじゃないの。マーちゃんからもあの女に何か言ってやってよ」
少女はイザー二等兵を睨みながらマーちゃん中尉にお願いをしているのだが、それは頼んでいるというよりも命令に近い言い方であった。
「その子ってマーちゃんの知り合いなの?」
イザー二等兵は今まで見たことのなかった少女がマーちゃん中尉と知り合いであるかのようにふるまっている姿を見て気になったことを聞いていた。イザー二等兵としては、自分と栗宮院うまな中将が来るまでマーちゃん中尉が誰かと仲良くしていたという話を聞いたことがなかった。それゆえ、この少女が何者なのか気になっていたのだ。
マーちゃん中尉とこの少女が出会ったのは偶然ではなく仕組まれたことではあったが、それには栗宮院うまな中将もイザー二等兵も関わってはいない。この少女が自分のためにマーちゃん中尉を引き寄せたのだ。
イザー二等兵も一緒にやってきたのは少女としては誤算だったのでイザー二等兵を返そうとあの手この手で妨害をしてきたのだけれど、そういった小細工はイザー二等兵の虫たちによって逆に自分が追い込まれてしまったのだった。
少女はマーちゃん中尉が阿寒湖温泉にやってきた時からずっと会いたいと思っていたのだ。だが、その願いがすぐに叶うことはなく二人が出会うまでにはそれなりの時間を要してしまったのだ。
「マーちゃん中尉って、全部の系統の魔法を使うことが出来るんでしょ。それって凄いよね。私も真似してみたいって思ったけど、覚えている魔法を全部忘れないといけないってのは無理かもしれない。でも、私のお願いをマーちゃん中尉が聞いてくれたらそれでいいってことになるかも」
初めて会ったはずの少女はマーちゃん中尉が昔からの知り合いであるかのように抱き着いてきたのだ。まるでその姿は仕事から帰ってきた大好きなパパが帰ってきて嬉しいと思う子供のようであった。ただ、身長は低いもののその豊満に育った胸はとても子供だと呼べるようなものではなかった。
「私はね、この阿寒湖に住んでいる妖精のマリモ子って言うの。マーちゃん中尉のその魔法を使って私が好きな場所に行けるようにしてくれたら嬉しいな」
「好きなところに行けるようにってどういう事なの?」
「私はね、この土地に縛られてるんだ。別にそれが嫌ってことではないんだけど、どうせなら私もいろんな場所に行ってみたいなって思ってね。それで、私をこの地に縛り付けている邪竜モココココを倒してほしいんだ」
邪竜モココココというのはふざけた名前だと思ったマーちゃん中尉ではあった。それと同時に、マリモ子という名前も本当なのか考えてしまっていた。
「あのね、邪竜モココココは行動するたびに弱点属性が変化するんだよ。弱点属性以外の攻撃は全て体力回復になっちゃうから普通に攻撃するだけじゃ倒せないんだって。そんな感じの邪竜モココココはマーちゃんなら倒せると思うんだけど、お願いしてもいいかな?」
マーちゃん中尉は正直なところ、この件には関わりたくないと思っているのだ。毎回属性が変化する敵と戦うのはちょっとだけ面白そうだなと思ったけれど、いちいち弱点を考えるのは面倒くさいと思った。何より、その弱点をどうやって見分けるのかもわからないので面白そうだという理由では戦うことが出来ないと考えてしまった。
「お願いされたとしても無理だよ。弱点が毎回変化する相手となんて戦えないし。その弱点がわかったとしても俺程度の魔法じゃどうすることも出来ないと思う」
「大丈夫ですよ。邪竜モココココの弱点なら私が教えますから。それに、マーちゃんには『うまな式魔法術』の凄いやつが使えるんだから問題ないって。『うまな式魔法術』とマーちゃんの魔法で一瞬だって。私には無理でもマーちゃんなら一瞬で倒せると思うだけどな」
人間同士の戦いばかりだったこともあって『うまな式魔法術』を使っても相手にダメージを与えられないと思い込んでしまっていたのだが、邪竜相手なら『うまな式魔法術』を使えばどうにでもなるんじゃないかと考えていた。邪竜と呼ばれるくらいだから『うまな式魔法術』を使えるようになっている可能性もあるのかと思ったけれど、『うまな式魔法術』を使えるのは世界でも日本人だけだという事を思い出したのであった。
「マリモ子のために邪竜と戦うって本気で言ってるの?」
イザー二等兵はマーちゃん中尉の目を真っすぐに見つめながら問いかけていた。マーちゃん中尉はその目を真っすぐに見返すことが出来ずに視線を不安定に動かしているのであった。
「それにしても、邪竜モココココって変な名前よね。マリモ子ってのも変な名前だと思ったけど、それ以上に邪竜モココココってふざけすぎてると思うんだけど」
「そんなこと言うけど、イザーって名前だって変な名前だと思うけど。うまなとイザーって二人とも変な名前だと思うんですけど」
マーちゃん中尉は二人の話に加わらないように存在感を消そうとしたのだが、抱き着いていたマリモ子はそのまま顔を上げて真っすぐにマーちゃん中尉の顔を見つめているし、イザー二等兵も少しだけ怒ったような顔でマーちゃん中尉とマリモ子の事を何度も何度も見ていたのだった。
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