49 / 53
小林陽子編
ギャルが夏休みに体験してしまったこと 第5話(全7話)
しおりを挟む
「夏休みにそんな経験をしちゃったんですよ」
小林さんがそう言うと、いつの間にか僕の隣に移動していたソフィアさんが腕に抱き着いていた。
「その声の主ってなんだったの?」
僕が訪ねても小林さんは腕を組んだまま考えているみたいで、ソフィアさんは小刻みに震えていた。
「ばあちゃんが言うには、その土地にいる神様の一種なんじゃないかって話なんですけど。神様って言っても、人にとって良い神様と自然にとって良い神様は別らしいんですよ。それで、その時に来たのは自然の方に良い神様だったみたいです。あたしも詳しく聞かないで体験したんで怖かったんですけどね」
夏休みに小林さんが変わった経験をしたのは本当だろうけど、いったいどうやって助かったんだろう。
この場に小林さんがいるのだから最悪の事態は避けられたとしても、何か大変なことになっていなければいいのだが。
「ねえ、ヨーコはそのあとどうやって助かったの?」
僕が気になっていたことをソフィアさんはストレートに聞いてくれた。
「助かったって言うか、もともと何か悪い事をされる感じじゃなかったらしいんだよね。よくわかんないんだけど、神様を呼び出すのってあんまりよくないんだっってばあちゃんが言ってた。で、近くの村の人とかその道で有名な人を呼んで集まって貰ったんだって。そうして、神様を呼ぶ儀式をやったって言ってたよ」
小林さんがそう言うとソフィアさんは少し安心したみたいで、僕から離れてお菓子に手を伸ばしていた。
「それで、その神様は何で小林さんを探していたの?」
「あたしは覚えていないんですけど、小さい時に四国に遊びに行ったときに山道を探検してて、その途中で手入れされていない祠を見つけたらしく、ばあちゃんの家ににいる間はそこに遊びに行って掃除したり、摘んできた花を供えたりしてたみたいなんです。でも、その祠って道沿いにあるのに、あたしがお花を供えるまで誰も気付かなかったみたいなんですよ。不思議ですよね」
小林さんは今でも教室にある花瓶の水をこまめに変えたり、掲示物が外れかかっていたら直したりしているので、昔からそういった事が自然にできる人なんだと思った。
「それから村の人達もその祠を定期的に手入れしたり、お供え物をしてみたり夏に祭りをしたりしていたみたいなんです。そうして何年か経って今年の春になると、ばあちゃんの夢にその神様らしき人の声が聞こえてきたらしいんですよ。でも、ばあちゃんは何って言っているのか聞き取れなかったみたいで、あたしをここに呼ぶように言われていただけは理解できたみたいです。それで、霊能力者みたいな人達を集めてからあたしを呼んだって話です」
「でも、ヨーコにとって良い神様なのにそんなに人を集めなくちゃ呼べないもんなの?」
「ばあちゃんはあたしを呼べって部分しか理解できてなくて、悪い霊があたしを呪うんじゃないかって思ってたの。それで、あたしを守る結界を作る人を十人呼んで、霊とお話し出来る男の人が一人きたの。神様が来る時間はあらかじめ分かっていたので、それまでにどうにか結界を完成させなくちゃいけなかったらしく、あたしに説明している時間は無かったんだって。で、悪霊だとしたら怖がってしまって弱った心に付け込まれると思って黙ってたのもあるらしいんだけど、あんだけ壁とか叩かれたり足音聞こえたらビビるよね」
小林さんはそう言って笑っていた。
「結界を作っていた人達はどうかわからないんだけど、男の人は途中で悪霊じゃないって気付いたんだって。それでばあちゃんに何か言うと、あたしの周りで結界を作っていた人達が離れて、さっきまで一生懸命に作っていた結界を壊そうとしていたみたい。その人達が笑いながら、『自分たちで作った結界を壊すのは初めてだ』って言ってたのがちょっと面白かったな」
小林さんはわざとソフィアさんを驚かせるように脚色していたのだろう。
それに気付かない純粋なソフィアさんは小林さんが無事だった事を心から喜んでいるようで、綺麗な瞳にうっすらと涙を浮かべていた。
本当は怒っているのかもしれないけれど。
「で、その男の人が扉越しに神様に説明したんだけど、結界が邪魔して中に入ってこれなかったみたい。そんなわけで、結界を作った人達と神様の力で結界を壊そうとしていて壁とか天井から音が聞こえていたみたいよ。でも、その音を聞いたのはあたしと男の人だけなんだって。ばあちゃんも結界を作っていた人達もそんな物音は聞いていないって言ってたから」
「足音もヨーコしか聞いてないの?」
「うん、足音はあたししか聞いてないみたいで、男の人も姿までは見えないって言ってたよ。それに、靄がかかって音が聞こえない空間って、神様の世界と一時的に繋がっていたらしく、あたしの姿は見えていたけど外から見ているとコマ送りみたいな動きをしていたってさ」
「それで、神様は小林さんを呼んで何をしたかったのかな?」
小林さんがそう言うと、いつの間にか僕の隣に移動していたソフィアさんが腕に抱き着いていた。
「その声の主ってなんだったの?」
僕が訪ねても小林さんは腕を組んだまま考えているみたいで、ソフィアさんは小刻みに震えていた。
「ばあちゃんが言うには、その土地にいる神様の一種なんじゃないかって話なんですけど。神様って言っても、人にとって良い神様と自然にとって良い神様は別らしいんですよ。それで、その時に来たのは自然の方に良い神様だったみたいです。あたしも詳しく聞かないで体験したんで怖かったんですけどね」
夏休みに小林さんが変わった経験をしたのは本当だろうけど、いったいどうやって助かったんだろう。
この場に小林さんがいるのだから最悪の事態は避けられたとしても、何か大変なことになっていなければいいのだが。
「ねえ、ヨーコはそのあとどうやって助かったの?」
僕が気になっていたことをソフィアさんはストレートに聞いてくれた。
「助かったって言うか、もともと何か悪い事をされる感じじゃなかったらしいんだよね。よくわかんないんだけど、神様を呼び出すのってあんまりよくないんだっってばあちゃんが言ってた。で、近くの村の人とかその道で有名な人を呼んで集まって貰ったんだって。そうして、神様を呼ぶ儀式をやったって言ってたよ」
小林さんがそう言うとソフィアさんは少し安心したみたいで、僕から離れてお菓子に手を伸ばしていた。
「それで、その神様は何で小林さんを探していたの?」
「あたしは覚えていないんですけど、小さい時に四国に遊びに行ったときに山道を探検してて、その途中で手入れされていない祠を見つけたらしく、ばあちゃんの家ににいる間はそこに遊びに行って掃除したり、摘んできた花を供えたりしてたみたいなんです。でも、その祠って道沿いにあるのに、あたしがお花を供えるまで誰も気付かなかったみたいなんですよ。不思議ですよね」
小林さんは今でも教室にある花瓶の水をこまめに変えたり、掲示物が外れかかっていたら直したりしているので、昔からそういった事が自然にできる人なんだと思った。
「それから村の人達もその祠を定期的に手入れしたり、お供え物をしてみたり夏に祭りをしたりしていたみたいなんです。そうして何年か経って今年の春になると、ばあちゃんの夢にその神様らしき人の声が聞こえてきたらしいんですよ。でも、ばあちゃんは何って言っているのか聞き取れなかったみたいで、あたしをここに呼ぶように言われていただけは理解できたみたいです。それで、霊能力者みたいな人達を集めてからあたしを呼んだって話です」
「でも、ヨーコにとって良い神様なのにそんなに人を集めなくちゃ呼べないもんなの?」
「ばあちゃんはあたしを呼べって部分しか理解できてなくて、悪い霊があたしを呪うんじゃないかって思ってたの。それで、あたしを守る結界を作る人を十人呼んで、霊とお話し出来る男の人が一人きたの。神様が来る時間はあらかじめ分かっていたので、それまでにどうにか結界を完成させなくちゃいけなかったらしく、あたしに説明している時間は無かったんだって。で、悪霊だとしたら怖がってしまって弱った心に付け込まれると思って黙ってたのもあるらしいんだけど、あんだけ壁とか叩かれたり足音聞こえたらビビるよね」
小林さんはそう言って笑っていた。
「結界を作っていた人達はどうかわからないんだけど、男の人は途中で悪霊じゃないって気付いたんだって。それでばあちゃんに何か言うと、あたしの周りで結界を作っていた人達が離れて、さっきまで一生懸命に作っていた結界を壊そうとしていたみたい。その人達が笑いながら、『自分たちで作った結界を壊すのは初めてだ』って言ってたのがちょっと面白かったな」
小林さんはわざとソフィアさんを驚かせるように脚色していたのだろう。
それに気付かない純粋なソフィアさんは小林さんが無事だった事を心から喜んでいるようで、綺麗な瞳にうっすらと涙を浮かべていた。
本当は怒っているのかもしれないけれど。
「で、その男の人が扉越しに神様に説明したんだけど、結界が邪魔して中に入ってこれなかったみたい。そんなわけで、結界を作った人達と神様の力で結界を壊そうとしていて壁とか天井から音が聞こえていたみたいよ。でも、その音を聞いたのはあたしと男の人だけなんだって。ばあちゃんも結界を作っていた人達もそんな物音は聞いていないって言ってたから」
「足音もヨーコしか聞いてないの?」
「うん、足音はあたししか聞いてないみたいで、男の人も姿までは見えないって言ってたよ。それに、靄がかかって音が聞こえない空間って、神様の世界と一時的に繋がっていたらしく、あたしの姿は見えていたけど外から見ているとコマ送りみたいな動きをしていたってさ」
「それで、神様は小林さんを呼んで何をしたかったのかな?」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる