スーサイドアップガール

釧路太郎

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小林陽子編

ギャルが夏休みに体験してしまったこと 第6話(全7話)

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不思議な体験をして一夜明けたのだけれど、疲れていたのにあたしは一睡も出来ないでいた。

お世話になった人達はみんな口々に、『悪い霊じゃなくてよかった』と繰り返し言っていた。

みんなと一緒に朝ご飯を食べ終えて、ばあちゃんのいる縁側に行くと

「昨日は大変だったね。お前のお父さんもお母さんも心配してたんだけど、悪いことにならなくて良かったって喜んでたよ」

たぶん、そんな感じのニュアンスの事を言っていたのだと思う。

聞きなれない方言でも大体は理解できたのは、たまにお父さんが使う言葉が混ざっていたからだろう。

昨日の夜にお世話になった人達一人一人にお礼を言っていると、神様と話してくれた男の人が庭で花を見ている姿が目に付いた。

「昨日はありがとうございました。あたしは何も知らないで怖がっていただけですけど、助かりました」

「いえいえ、僕でも役に立てたみたいで良かったです。北海道から遠路はるばるお疲れ様でした。実は、僕も北海道に住んでいるんですよ。札幌なんで陽子さんとは住んでる場所離れていますけどね」

「あら、北海道なんですね。札幌に行ったときは改めてお礼に向かいますね」

「それは本当に気にしなくていいですよ。僕もこの仕事をし始めたばかりでいい経験できたし、今回のは逆にこちらからお礼しないと罰が当たるようなもんですし。それにしても、同じ日本なのに暑いですね。夏場は北海道から出るのやめようかな」

「朝からずっと暑いですよね。札幌だと暑さも厳しそうですけど、やっぱりこっちの方が暑いですよね」

「ええ、同じ気温だとしても、こちらの方が暑い気がしています。そう言えば、昨晩はきちんと眠れました?」

「いえ、何だかいろいろ考えてしまって気付いたら朝になっていました」

「それならお昼くらいまで仮眠をとって、昼食の後にみんなで例の祠にお詣りに行きません?一人で行くのが望みならそれでもいいんですけど」

「はい、お詣りに行こうと思っていたんですけど、場所がわからないので誰かに頼ろうかと思っていましたので助かります」

「では、他の人達も誘っておきますね。眠れないかもしれないけれど、少しでも横になっていてくださいね」

あたしはお礼をいうと、さっきまで横になっていた部屋で座布団を枕にして横になった。

少しだけ何かが思い浮かんだのだけれど、やってきた睡魔には勝てず眠りに落ちていた。

昼食の準備が出来たとお母さんに起こされて大広間に行くと、朝にはいた人達のほとんどがいなくなっていた。

いなくなった人達はあたしが仮眠している間に祠にお詣りをすませて、それぞれの家に帰って行ったりお遍路巡りをしたりとそれぞれ分かれていったらしい。

結局祠にお詣りするのはあたしとお父さんとお母さんとお兄さんと親戚のおじさんだけになった。

お兄さんはお詣りを済ませると、夕方の便で東京まで戻って別の仕事があるらしい。

祠の場所はばあちゃんの家から歩いて行ける距離にあるらしく、お供え物を少しと各自の飲み物を持って出発することにした。

親戚のおじさんを先頭に十分ほど歩くと目的地に着いたようで、さっそく祠にお供え物をして手を合わせた。

綺麗に整理された祠はご近所さんも定期的にお詣りしてくれているらしく、綺麗な花が供えられていた。

案内されて着いた場所はあたしが知っている祠とは何か違うような気がした。

今来た道をさらに奥へと進むと道路わきに小さな小屋が目に入った。

何の小屋なのか気になって中を覗いてみたのだけれど、中には何も入っていなかった。

「今は使っていないんだけど、この辺で畑仕事をしていた時にみんなで使っていた小屋だよ」

とおじさんが教えてくれた。

何だか小屋が気になったあたしは中に入ってみたのだけれど、特に何もない部屋は異常に蒸し暑くてサウナのようだった。

暑さに耐えきれなくなって外に出ると、道路を挟んで向かい側にも何かがあることに気付いた。

「あ、あたしが見つけた祠だ」

自然と口に出してしまっていたらしく、そこにいたみんなが驚いていた。

「てことは、さっきの祠はなんだったんですかね?」

「わからないけど、こっちの祠も綺麗にしておこう」

みんなで祠を綺麗にした後に気付いたのだが、祠の中にあたしが描いた絵が置いてあった。

小さい時に描いたので覚えていないのだが、その絵には小さい女の子と髪の長い女性が笑顔で手を繋いでいた。

あたしのお母さんは昔からボブくらいの長さなので違うと思うのだけれど、この女性は誰なのだろう。

きっと神様なんじゃないかと思った。

画用紙に描かれた絵は十数年経っているにも関わらず、日焼け一つ無い綺麗な状態でつい先ほど描いたと言っても信じられるような状態だった。

祠の場所を間違えるといけないと思い、おじさんが場所がわかるように小屋と祠の写真を撮っていた。

「この小屋には春と秋になると何人も来ているはずなのに、気付かないなんて申し訳ない事をしたな。これからはきちんとお詣りさせていただきますね」

おじさんは多分そんなニュアンスで言っていた。

結局その絵は持って帰らずに、後日祠の隣にも小屋を建てて中に祭壇を作ってそこに祀る事になったらしい。

ばあちゃんの家に帰ってお風呂から出るとそんな話を聞いた。

晩御飯を食べるときにはあたしの家族とばあちゃんだけになっていた。

お兄さんもおじさんももう帰って行ってしまった。

お父さんはテレビで野球中継を見ながらビールを飲んでいて、お母さんはばあちゃんと何か話をしていた。

あたしは一人で縁側に座って空を眺めていた。

地元で見る星空よりも、四国で見る星空は少し綺麗に感じた。

夜でも蒸し暑いなと思っていると、お母さんがスイカを持ってきてくれた。

お母さんはスイカを持ってくるとお父さんとばあちゃんにもスイカを渡していた。

あたしの横に置かれた二つのスイカを見ていると、隣に髪の長い女性が微笑んでいるような気がした。

「ねえ、明日お詣りに行くときはスイカ持って行ってもいい?」

あたしがそう言うと、おばあちゃんはにっこりと微笑んでいた。
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