エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

文字の大きさ
13 / 22

第十三話 初めての火球!

しおりを挟む
  ディンも無事回復し、療養を続けてきた。そして、あれから数ヶ月が経とうとしている頃。

  ようやくディンが剣を用いた魔法の行使コントロールができる頃を見計らい、ミザリーはディンの元へと再び足を運ぶ。

  噂によるとザイモールはリアナの元へ突き返された。それからはディンとリアナの戦術教師としてディグル村に身を置いている。

  それにザイモールはディオーネ協会支部へ真っ直ぐ戻らずに結局適当に羽を伸ばしてから報告したようで、リアナのチクリの方が早かったようだ。

 現にミザリーがディオーネ王都に戻った方がザイモールより早かったのだ。

  そして現在、ディグル高山にてディンは修練の真っ只中である。ディグル高山は標高三千メートルを優に超え、人気ひとけが無い。

  それ故に魔物が住み着くこともなく、周りを気にすることなく力の解放が出来るため修練に向いている。

  ひたすらザイモールの無理難題に応えるディン。いじめかと思うくらいにめちゃくちゃな事ばかり求めてくる。決まってその間、ザイモールはいつも姿を消す。あいつ、絶対どこかで寝ている。そうディンは思う。

  数日に一度はリアナも差し入れに様子を見に来てくれるが「ディン、その調子だよ」「ディンもっと食べなきゃ駄目だよ」などの冷やかしともとれる軽い応援や注意しかしてくれなかった。
  邪魔をしてはいけまいと、リアナもあまり干渉しないようにしているらしい。

  それからというもの、ザイモールはなんだかんだでディグル村に居ながらディンの世話役、更なる調査を同時進行する事を課せられていた。

  協会の任務を遂行する時ばかりは席を外すのだが、隙あらば職務怠慢を決め込む。リアナはザイモールを監視をする事も含め、チェックしに来ているのだ。

  その日はリアナが来た。

  ディンはオードのコントロールが大分出来るようになっていたので、リアナに見せてやろうと意気込んでいる。

「リアナって魔法を使う時どういうイメージをしてるか教えてくれよ」

「うーん、なんだろうね、一箇所に力を溜め込むように深く念じる…。それを上手いこと放てるように感覚で制御してるかな?」

「ようやく俺もそれが分かってきたんだよ! ちょっと見てて欲しいんだけどさ!」

「いいよー」というリアナを背にしてディンは右の掌に力を込める。


  オードの力を引き出す為に己のオードを制御する。制御出来て初めて周りに自分のオードを周りに放出し大気のオードに共鳴及び、増幅する事で魔法が初めて発動できる。

  明鏡止水にてオードの流れを読み解き、感覚頼りにオードを均す。その際にはオードの流れにノイズが発生しないようにする。

  火球を作りたいとして、ノイズが走ると不発に終わったり、発動しても種火だったりゼロ距離で爆発がおこってしまう。

  ディンはこの期間、ザイモールからそう教わり様々な技を独学にて習得した。

  ググググ…。
  少し力が溜まると明るい炎の様なオードが掌から染み出ている。今までならこれだけ力めばとてつもない力が引き出せていたのに。ディンは本気で小さな火球を作り出す。今はたったこれだけの力を引き出すために必死で鍛え、尽力している。

  そして、空へと放つ。近くにある雲さえ穿つ事は出来ないが、魔法を使い初めて日が浅いにしては上出来であった。

  リアナは少し悲しそうに火球を目で追う。

  行使することは出来なかったがこんなちっぽけなな力、昔のディンなら…とどうしても脳裏を過ぎってしまう。

「どうよ! 前までの感覚ならちょっと適当に力貯めればすげぇ力が手に溜まっていってんのが分かったんだけど、今じゃそうはいかなくてさ。

 小さい力を器用に使う感じって言うのかな? それが難しいんだよね」

  珍しく言葉多く話すディン。この数週間悩んだ結果、自分なりの答えに辿り着いたらしい。

「私にはよく分からないんだけど、一度覚えた感覚が壊れて使えくなってまた頑張ってこんな早くに少しでも使えるようになったディンはすごいと思うよ」

  リアナは控えめに笑う。本当に尊敬はしている。心の底からそう思っている。それでもやるせない気持ちになるのだ。

 そんなリアナの事を何となく理解しているディンは今更つまらない事を気にしない。見返してやればいいとそんな事は心に灯る情熱の添加剤にする。

「リアナは昔から魔法が上手いからなあ、リダズさんもそうだし、天才なんだろうな」

  そう言って笑うディン。少し褒めてみたが、あまりリアナはよく思わない。彼女は彼女で悩みを抱えている。必死なディンを見て、自分も感化されているのだ。故に大きな壁にぶつかった。

「そんな事ないよ、もっとやってみたいことがあるから」

「やってみたいこと?」

「知ってるとは思うけどうちの家系ではね、四属性の他にある光と闇の魔力オード、珍しい話みたいなんだけどそのうちの光属性を得意としているの。でも、私にはそれがよくわからないの」

「うわぁ、なんか難しそうだな。そういうの想像できねーもん」

「そうなの。せっかく近くにいるおじいちゃんに聞いてみてもバッ! グン! ドン! みたいな事しか言わないし……。そんな感じだと、私には才能無いのかなって思っちゃう時があるよ」

  アハハハ、と最後に付け足して笑うリアナ。

「だから、天才じゃないと思うよ」と小さく呟いた。

  実際の所、属性魔法のうち3種を行使できるリアナは都でしっかりとした審査を受けたとしても上級魔導師としての認定が降りるほどの実力ではあるのだが、いかんせんそうは思っていない。

 彼女は彼女なりに不甲斐なさを感じ、納得がいかない頑固な所があった。

  そこに、昼過ぎにしてようやくザイモールが現れる。

  しんみりと何を話しているのか気になったため隠密に姿を晦まして盗み聞きしていたらしい。

「ちょっと! ザイモールさん何で聞いてるんですか!?」

「いや、僕もそんな事思った事もあったりしたかなーと思って」

「あなたには関係ないんです! 勝手に盗み聞きしないでください!」

「相変わらず当たりが強いんだから。それに僕だって少し位なら助言しようと思ってたのにさ」

  本気で嫌がるリアナにザイモールはわざとらしくしょんぼりとしてみせた。

「助言ですか?」

  リアナは戸惑う。

  確かに彼は凄腕の大英雄。客観的に見れば大英雄のしっかりとした助言は千金にも並んでもおかしくないと。

「うん、まあ、リアナちゃん僕に冷たいし考えどころだけどね……」

  「トホホ……」と臭味のある演技を重ねる。両人差し指同士でつんつんしている。

(うんっ、その指凄くへし折ってやりたい……!! けど……!!)

「えっ、そうならそうと早く言って下さいよ~ザイモールさん」

  三文芝居には三文芝居で応対するリアナ。急にすごい変わりようだとディンは感心していた。

「言ってみただけだよ、君ならいつか自分で気づけるだろうし」

「へ? どういう事ですか?……?話して損した気分になりました」

「そもそも僕、光とか発動すら出来ないからね。ほら、この通りさ」

  そう言うと、ザイモールは掌から闇と炎を混ぜ込んだ火球を出してみせる。

  で? と言わんばかりにジーッと目線を送るリアナ。一方、ディンは「かっけー」と浅いリアクションを取る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

退く理由ある探索者

ソイラテ
ファンタジー
正面から挑んだ探索者は、だいたい帰ってこない。 東京にダンジョンが出現した世界。 危険度は低〜中、初心者向け――そう説明される場所でさえ、死者はゼロではなかった。 金は必要だ。 だが、死ぬつもりはない。 強くもなく、装備も足りない主人公が選んだのは、 勝つ方法ではなく、「退く理由」を積み上げること。 一本道を避け、引き返せる余地を残し、 生きて帰る確率を、ほんの少しだけ上げていく。 これは、無双しない探索者が、 現代日本のダンジョンで“生き残る”ための物語。

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...