エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

文字の大きさ
14 / 22

第十四話 一段階、解放

しおりを挟む
「これは意図的に混ぜ込んでいるけど、リアナちゃんのも見せてご覧よ。」

「良いですけど」

  リアナは若干不貞腐れながらも掌から火球を生み出す。因みに火属性と言うのはかなり初歩的な魔法であるが、リアナは火属性の扱いに関してはあまり長けていない。人により得意属性や、自分の相性の良い属性が存在する。一つ相性が良いだけでも冒険者として、かなり恵まれている方ではあるが。

  そんなリアナの火球を見たザイモールはうーん、と顎を撫でながら思いを巡らせる。

「やっぱりね。ほんの少しだけ、光属性が混ざっている気がするんだよ。あの時の崩壊もリアナちゃんでしょ。同じ感じがするね」

「混ざっているんですか? わたしにも!?」

「無意識かぁ、僕も初めは似たようなもんだったからね。まあ、これさえ分かれば後はどうすればいいかすぐに分かるはずだよ」

「そうですね、ゆっくり考えてみます! ありがとうございました」

「僕にかかればこんなもんさ」
 
 さっきまでの雰囲気とは打って変わってザイモールもリアナも満足そうにしている。腐っても大英雄。魔力オードの知識、感覚には常の域から逸する絶対的なレベルが違う。

「オレ、ザイモールのそれなら作れるかも」
 
  ディンがそう言うといきなり火球を作り出し、うっすらと闇のオードを纏わせた。

  すると、目を見張る才能を前にザイモールは片眉をぴくりと動かし感心する。

「流石だよ、まさかそこまで出来たとはね」

「今のは初めてやったよ」

「嘘だろ? でも、今はまだその力には頼らない方がいい」

  闇のオードは使用者の隙に入り込み内部から蝕んでいく、行使する力が大きければ大きいほどそのリスクが生じるからだ。

(やはり、ライドさんの血を継いでるからとあってセンスが化け物じみてるな……)

 ザイモールは多少の不安を覚えながらも、ディンにライドを重ねてしまう。ザイモールは無情にもディンに更なる期待をしてしまう。

(きっと、ディンなら……)

 ーーーーーーーー

  それからして数日後、ディンは久々に山を下り、村へと帰ることになった。

  ディンが剣を用いた魔法の行使コントロールができる頃を見計らい、ミザリーはディンの元へと再び訪れる。

「待たせたかしら?」

「そうでもないよ、ミザリーは相変わらず小さいな!」

「余計なお世話よ。ディンもすっかり落ち着いたようね」

 と久々の再会を喜ぶディン。一気に体躯が伸びたことから、改めて再会すると新鮮なまでにミザリーが小さく見える。

  そして、不服な表情をしたザイモールが何か言いたげにミザリーを睨みつけていた。

「何よザイモール。私を恨んだ所でお門違いよ」

「わかってるよ」

  ミザリーはリダズからの命令によりザイモールを連れ帰りに来た。

  それに、ザイモールは結局のところディグル村に来てからもディンを殆ど放置していたとリアナから聞いている。正に職務怠慢である。

  そして、もう一つ。真の目的はディンの呪印、第一段階の鎖を解く事。それによりディンは本来持つ力の一部が還元される事になる。ディンの才能、強靭的な魔力の器があればこの程度の力であれば身を滅ぼすこともないと考えられた。

  今はまだ協会でディンの話を出していないが、ザイモールを連れ帰った際は二人で報告する手筈になっていて、その際にはリダズも肝を冷やす事になるだろう。

(絶対怒られるんだろうなぁ)

 リダズと同じく大英雄であるザイモールはそう思う。立場で言えば似たようなものだが、絶対的な差がある。冒険者協会での立場。

  それに、この事は協会ないしはディオーネ王国としても只事では済まされないのが目に見えている。あのライド・アラングルドの息子に何かあったとなれば血色を変えてこの事態に取り付くだろう。その辺はザイモール、ミザリー共に疎いところがあり、己達にどんな処罰が下るかも想像がつかない。

 素人達の簡単な推測だけでも大事になる可能性が高い事象である事から隠蔽したとしても隠蔽リスクが高過ぎる。素直に報告をしようと言うミザリーの意見にザイモールも渋々納得したのだ。

  それに、ザイモールとのしばしの別れ、誰も惜しむ者も居なかった。円満で送り出される情けない幕切れとなった。

「それじゃあ、本当に戻るよ……? いいんだね?」

  ザイモールの別れ際のしぶとさったらなかった。

  結局リアナに脅され強制帰還となったのだ。


 ーーーーーー

  ミザリーはしっかりと責務を果たし、ディンは新たに力を手にしていた。体の奥底から何とも言えないエネルギーに満ちた感覚を覚える。

  今回は元から持っていた力よりも少し力を増した程度の魔力総量も多少は上がるらしい。つまりは、大幅なバージョンアップのようなもの。それが後、二回以上待っている。総計三回以上にもなる。ディンの持つ力が大きすぎた故の特例処置だ。それもライドの血を引くディンだからこそ、ではあるのだが。その上、焦らず一つ一つの壁を乗り越えていく事がディンには求められる。先はまだまだ遠いだろう。

  闇の魔力オードに関しても今までより多少扱える量が増えるだろうが、引き続き使用禁止の旨を珍しい事にザイモールが口を酸っぱくして言っていた。

 ザイモールは闇の魔力オードの危険性を体を持って理解しているからディンもまた不思議と説得された。

  そしてザイモールやミザリー、リアナを含め話した所、まずは冒険者協会本部のあるディオーネ王都まで出向いて欲しい、との事。

  それに従いディンとリアナは都へいく準備をする。ディンは長い間ディグル村に居ざるを得なかったが為に早く外の世界を見たいのだ。ディンの為にも片時も離れること無かったリアナもまた伸び盛りであるこの期間、無碍にするわけはいかない。

  冒険者としての成長、ミザリーの非人道的な実験への負い目、才能に溢れる亡きライドの後継としても協会の庇護の元、力をつけていって貰うことになるだろう。それに、現状ではザイモールたちでもディンがどのような成長をするのか見当がつかない。

  一番は危険視される強力な闇の魔力オードによる魔人化だろうと言葉を残して。

  包み隠さずに言うとするならばいつでも始末出来るように協会のお膝下に置いておきたいという理由があるが故の待遇。

  ただ、それも重々承知の上である。

  そしてディンは己の夢へと一歩歩みだそうとしている。

  冒険者としての高みを目指し、冒険者の遥か高みに居る父の行方を探す旅へ。

  「それなら、おじいちゃんのところに行こうよ!」

  リアナが提案する。

  確かにディンはディオーネ王都へ向かえば良いとしか思っていなかった。どうやって行くかも知らずに。
 
「そうだな、そうするか!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

退く理由ある探索者

ソイラテ
ファンタジー
正面から挑んだ探索者は、だいたい帰ってこない。 東京にダンジョンが出現した世界。 危険度は低〜中、初心者向け――そう説明される場所でさえ、死者はゼロではなかった。 金は必要だ。 だが、死ぬつもりはない。 強くもなく、装備も足りない主人公が選んだのは、 勝つ方法ではなく、「退く理由」を積み上げること。 一本道を避け、引き返せる余地を残し、 生きて帰る確率を、ほんの少しだけ上げていく。 これは、無双しない探索者が、 現代日本のダンジョンで“生き残る”ための物語。

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...