エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

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第十五話 リオルデの秘密

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  ディグル村の小山にある村長リオルデの屋敷は、村の言い伝えに拠れば地下に金銀財宝が眠っていると言われている。

  だが、そんな事で盗みを働く者もおらず噂にしか過ぎない。

  頂上の屋敷へと続く、長い階段を上がる途中でリアナは言う。

「おじいちゃん、ディンに会うの久しぶりだから急に大きくなって驚くかもね」

  リアナはクスクスと笑いながら言った。確かに、ディンは長いこと村長を見ていない。特に用件も無いのだ。

  それに村長はあまり村へと必要以上に降りてくることは無い。その村に眠る財宝を守っているからと村の人々は口を揃えて言う。

  「おじいちゃーん、来たよー」

「ん? ああそうそう、そうなんじゃ。がはははは」

 奥から何とも面白そうに誰かと話すリオルデの声がする。

(誰か来ているのかな)

 とディンは思う。

「ウチのおじいちゃん、いつからかこんな調子なのよ」

  リアナは呆れ気味に、ディンに「上がって」と言う。屋敷の放つ慎ましさにディンは珍しく履き物を揃え、上がる。屋敷へ上がる際は履き物を脱がないといけないらしい。
 
「ん、おお、リアナか。それと、ディン!? お主、急に成長しおってからに……まあ、こんなもんだったっけ? 今日は何用じゃ?」

 リオルデはすっとぼける。正直な所、村の少年の大きさなど気にしていない。

「私ね、お父さんの所へ行こうと思うの」
 
「そうか……まぁ、いいんじゃね?」

「相変わらず軽いわね」

  半笑いで答えるリアナ。

「それで、都への行き方とかよく分からないから教えてもらえないかなって思って今日は来たの」

「ほう、それなら村から北に出た2つの道に別れる所を東じゃ。道沿いに進んでワイゼルの町へ行けば大体分かるじゃろ」

 話の受け止めが早すぎる。何か事情を知っているかのようにリアナの話に食いつかない。

「そっか、ありがとうねおじいちゃん」

  そこで思い出した様に「あ、そうそう」とリオルデが言う。ここからが、本題だ。

「リアナには初めて言うんじゃがな、この家の下に魔獣が生まれちった。ザイモールとやらに頼んだんだが、リアナとディンに言ってくれと断られてしもたわ」

「えぇ!?」

「恐らく、ワシのこの老体じゃ太刀打ち出来ん。倒してやってくれんか」

  リオルデは老体と言うもののかなり恰幅が良く、老体という言葉程似つかないものは無い。

(おじいちゃんが倒せない魔獣……)

  急展開に表情が強張り、思考が止まるリアナ。

(無理……かな? うん、無理)

「村長の頼みって言うなら、俺はやるよ」

  ディンが名乗り出る。

(えぇ~!! 何言い出してるのよディン!! おじいちゃんの事だから何かの罠かもしれないのよ!?)

「ほう、冒険者としていい心構えじゃ。リアナもこんな心意気を持ってほしいわ」

「お、お、おおじいちゃん! 何言ってんのよ! 私だって行かないってわけじゃないんだから!」

  リアナの焦り方にガハハハハハ、と笑うリオルデ。

「ほんと、リアナは親に似てわかり易いわな。そんじゃ履き物を持って付いてきてくれんか」

  そう言ったリオルデの大きな背中の後を二人はついて行く。今でも十分力に漲った背中だ、とディンは思う。

  家の奥まで行くと隠し扉が待っていた。リオルデが扉を光の魔力オードにて開けるとそこには下へ下りる階段があった。

  二人は感嘆の声を上げる。

(財宝への扉か……?)

 ディンは息を飲み、一段一段丁寧に降りていく。

「中には普通とはちと変わった魔獣の他にも魔妖精がおる。気をつけるんじゃぞ」


 ーーーーーーー


  リオルデの話によると二部構成の祭壇らしい。一度階段を降りて鍵を使い扉を開けばあたりにはフレイムピクシーと言う初めて見る闇と炎の魔力オードが混合した魔の妖精が行く手を阻んだ。

「なんだこいつら! 凄い数だな!」

「ここは私に任せて!」

  リアナは広間中央部、フレイムピクシーの溜まっている方へと手を翳し迫力のある雷撃魔法を幾度か放つ。

「サンダーボルト!」

  掛け声と同時にドォン!!ドォン!!ドドドン!!と爆発的な雷撃の音が広間に響き渡る。直視すればかなり目が眩む明るさだ。

  その音と光が放たれる度、ピクシーの数は激的に姿を消していく。ピクシーは生命体では無い。完全にオードから体が構築される。

 ただ、ピクシーが生まれてしまうほどに奥の魔獣はオードを蓄えた化け物という事である。密室の中である為にオードの力も濃く滞留する。その事からピクシーが誕生しやすい環境でもあった。

  そして、ピクシーは攻撃により体を保つ力が絶たれればそのままオードとなり、大気へと還る。

「なんか消えていくな」

  ここは任せて、と言われた通り、ただリアナとピクシーの行く末を見届けるディン。

「このピクシー達、脆いけど束の力が結構厄介ね」

  ピクシー達は全身全霊捨て身の魔法を束ねて放ち、リアナの魔法を何度か相殺してくる。ピクシーの数も半分ほどになったが、リアナもオードを使い過ぎて消耗してきている。もう幾数分もこうして雷撃を放ち続けていたのだ。

 このままではリアナのオードかピクシー達どちらが先に尽きるかという事態に陥る。ジリ貧である。リアナが思った程にピクシーの力が脆弱でないということが伺える。

  「じゃあ、俺も一発ぶちかましていいか?」

「一発と言わず、全部お願いできるかな? 私、力を使い過ぎちゃったみたい」

  えへへへ、と笑うリアナに「おつかれ」と声を掛けるディン。

「じゃーあ、やっちゃいますかあ!」

  ディンは剣を持ち、柄をグッと強く握りしめた。手に持つ剣に冷気を纏わせ力を高めて行く。ピクシーも、危険だと分かるや否や急襲してくる。

 ボゥゥン!!ボゥゥン!!

 と数人を、一瞬で丸焦げにしてもおかしくない大火力。熱風ですら火傷する程に熱い。

「おらっ!! おらあっ!!」

  ディンは剣を振るい、剣の軌道に合わせて魔力オードのこもった氷の礫を撒き散らす。フレイムピクシーの業火を全て打ち消し、その剣を振りかざす。

「デカいのいくぜっ! アイスデルタ!!」

 フレイムピクシーは自ら達の、危険を強く感じ警戒する。氷塊が慌てふためくピクシー達目掛けて飛び散り、剣を振りかざした先が凍てついた。 瞬間にして広間は白銀の世界へと一変する。

  そして、そこにピクシーの姿は微塵も残っていなかった。

「あ、なんかやり過ぎたっぽい?」

  ディンは力の解放直後という事もあり範囲、威力共にコントロールが難しく、想定外に大きくなってしまった。

「何? 今の……」

  ディンの放つ技が、桁違いに進化していた。リアナはディンの覚醒した力を前に拍子抜けする。

  そして、奥へと続く扉にディンが魔力を供給し、扉を開く。その扉は開ける者として、一定量の魔力が無ければ開かないようになっている。それは、最低でも上級の魔導師以上のオードの力が必要とされる。
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