エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

文字の大きさ
19 / 22

第十九話 ディオーネ王国第二王子モルオス

しおりを挟む
 そのまま何もなく、二人は道中をゆっくりと歩き、ワイゼルシティへ着く。

  「でっけえな町って!」

「王都はもっとすごいんだよ」

  ワイゼルシティはディグル村の数倍はある都から最も近い町。

  その為整備も行き届き、数は少ないが権力者も在住している。

  町長は冒険者協会支部から派遣されている。元々名の知れた魔族の男らしい。魔族ではあるものの種族の壁すら関係なく協会内外からの絶大な信頼を誇る人格者と言われる。それ故に都へ出るよりもこの町の方が多種多様の魔族が多く在住していると言う。

「それにしても疲れたな……」

 顔に覇気がない。声からも疲労感が感じられる。主にFGDのせいだ。

「私もちょっと疲れたかなぁ、少し早いけど宿に泊まろうか?」

 リアナは疲れよりも入浴がしたいと思い、提案する。治癒、浄化魔法で清潔は保たれるが、細かい汚れや土埃等はそのまま残ってしまうため、身なりの清潔感が多少気になっていた。

「じゃあそうしようぜ! 久しぶりに布団で寝られる~!」

 ディンはそのまま浮かれ気分で宿へと向かった。
 それを「待ってよー」と追いかけるリアナ。



 ーーーーーー

「ーーーあぁ、とうとう来たか。随分待ったよ」

  薄暗闇の中、伝令より齎された報告に一人。尖った牙を覗かせ、笑う男。雰囲気に似つかわない上下水色アロハで決め込んでいる。

  町長にして、協会における冒険者上級クラスの認定試験のジャッジメントを司る男、オーレン。
  ライドやリダズとも昔からの親交がある。中々親しい仲であるらしいのだが、大英雄では無い。謎が多く、数多くの噂は不明瞭である。

  唯一の情報は今は世界に殆ど存在しないと言われている吸血鬼であるという事だけ。その事を知っているのは協会の上層部である一握り。隠している訳では無いが、普段。民衆の前ではしっかりと己を魅せている事から、様々な事情があろうがなかろうが種族等の話は関係無かった。

  事の顛末は吸血鬼一族の非常に闇の魔力オードの干渉が受けやすい事にある。その為、吸血鬼一族から魔人化する者が多発。それを恐れた者達が吸血鬼狩りを始めた事もある。

 吸血鬼というもの自体がかなり個体差が出るものの殆どの吸血鬼はかなりの力、魔力を誇る。魔族の中でも随一の魔力含有を誇っている崇高なる一族であったのだ。その者が暴徒と化す、それはまさに大量虐殺を意味する。

  それ故に認識される個体として残る者は殆ど残っていない。オーレンは最後の吸血鬼家系の可能性さえあると言われる。今でさえも危険視される種族であり、厄災を齎す者として望まれない存在として吸血鬼は言い伝えられている。

  「それで? 二人は今どこに?」

「はい。今はマルクの宿に入ったとの事です。」

「そうかそうか。では、その二人を今夜ここに招いて貰えるか?」

「あの若者をですか?」

「いいからいいから」

  笑って部下に指示するオーレン。指を外へとクイクイさせる。

(さっさと行け、ということか……)

  部下は何か企んでいるのかと思考を巡らせるがオーレンに隠し事は通じない。大抵、思考が見透かされてしまう。

「分かりました」

  素直に返事をするだけであった。


 ーーーーーー


  ーーーマルクの宿。

  爆睡するディンの部屋にオーレンからの使いが訪問する。

  コンコンッ、コンコンッ。

「在室でございますか~」

 ノックと共に声を掛けることを繰り返す。

  「すいませーん、そちらはディン様でよろしいでしょうか?」

 反応が無い、隣を訪ねるかと肩を落とす使者。

(隣でも訪ねよう……)

 コンコンッ、コンコンッ。

「すいません、急にお伺い立てて申し訳ございません。そちらはリアナ様でよろしいでしょうか?」

「えっあっ、はーい?」

 部屋の中遠くから声が帰ってくる。

「少し、よろしいでしょうか?」

 ドアの向こうから聞いた覚えのない女性の声がする。

「ちょっと待って貰えますか?」

  リアナは返事をする。身体を流していたリアナは急いで髪を握り水気を切る。

  濡れた身体をばさばさと急いで拭き回し、急いで下着、肌着を身に付ける。

 そして、やや駆け足で急ぐ。

「すいません、お待たせしました。」

 少し息の乱れた少女の濡れた髪に、滴る水滴を見て、使者は申し訳ない気持ちになる。

「こちらこそ、急に訪ねてしまい、申し訳ございません。タイミングが悪かったようです。……それでですね、私が使われた理由を聞いて下さい。そちらも、突然な話で悪いのですが町長がお呼びです。要件はその時に話すと仰っております。隣の部屋に居るディン様も招待されております。お誘い合わせの上、リアナ様とご一緒に願えますか?」

 使われた者による、申し訳ございません、の一言の後に「いえいえこちらこそ」と言うリアナだったが、町長の招待と聞いて表情を一変させる。

(何だろう……。まだ何かあるの……?)

 また、少し憂鬱な気分に陥るリアナ。

「あぁ……そういう事なら、どうせ行かなきゃ行けないんですよね。それではお伺いさせて頂きますとお伝え下さい。」

「まあ、そうでしょうね……。それでは、冒険者協会ワイゼル支部にて今夜、お待ちしております」

  妙に物わかりの良いお嬢さんだと使者は感慨に耽り、その場を後にした。やはり、町長の知り合いだったのだろうと。


 ーーーーー


  日も暮れる頃、リアナは少し長い昼寝から起床する。

  起きる気配のないディンを起こしに行くリアナ。
 
 コンコンッ。

「ディーン、起きてー。まだ寝てるのー?」

 ドアノブを捻ると、鍵がかかっていない。その扉を開けると既にディンは居なかった。何だか嫌な予感がする。

(どこか行っちゃったのかな)

  リアナは一度用意を済ませ、宿をでる。

(変な所へ行ってなきゃ良いんだけど……)

  冒険者協会ワイゼル支部前まで行くと、嫌な予感的中。威勢のいいディンの声が聞こえてきた。

  取り巻くヤジもやいのやいの言いながらその場を楽しんでいた。
 
  「だから、その試験とやら受けさせてくれよ!」

「いえ、ですから……その……」

  受付も困った表情をしている。そんなものディンはお構い無しで続ける。

「大丈夫だって! それなら、試験とかじゃなくていいから!」

  ディンが一方的に要求し続ける。
  すると、一際気品を漂わせる若い、学生服を身を纏う男が野次を切って進んできた。

「騒がしいと思って来てみたら……。何をしているだ? こんな所で」

「モ、モルオス様!?」

 受付が驚き、野次もザワつき始めた。無理もない、かなり奇抜な髪型をしている。有名人なのだろう。

「フン、こいつが発端か。どうした? 平民風情が世間に迷惑をかけようなど言語道断だぞ?」

  ディンに向かって注意するモルオスという名の男。モルオスに背を向けるディンの肩を軽く掴む。見た目は若く、ディンと同じくらいに見える。

  ただ一つ、とんでもないトレードマークがある。それは、とてつもないキノコ頭である事。本人曰く威厳があり、権力の象徴を表し、唯一無二。それでいて目を惹く素晴らしい髪型と自負している。

  ちなみにモルオスはディオーネ王国のアルフバン・ハスベルン・ディオーネ王の子息であることをディンは知らない。

 肩を掴まれたディンは不快そうに振り返り言う。

「はぁ? 何だよキノコ野郎。お前に言ってねえっての。だから頼むよ、ね? ほらお姉さん?」

  キノコ野郎というストレートな不敬に周囲が更にザワつく。ディンは自分の事で精一杯だ。モルオスからすぐ顔を背ける。

「何がキノコ野郎だ……愚民が。俺を知らんと言うのか? 良いだろう、そんなに試験がしたいと言うのなら、俺が直々に相手してやろう!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

退く理由ある探索者

ソイラテ
ファンタジー
正面から挑んだ探索者は、だいたい帰ってこない。 東京にダンジョンが出現した世界。 危険度は低〜中、初心者向け――そう説明される場所でさえ、死者はゼロではなかった。 金は必要だ。 だが、死ぬつもりはない。 強くもなく、装備も足りない主人公が選んだのは、 勝つ方法ではなく、「退く理由」を積み上げること。 一本道を避け、引き返せる余地を残し、 生きて帰る確率を、ほんの少しだけ上げていく。 これは、無双しない探索者が、 現代日本のダンジョンで“生き残る”ための物語。

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...