私が、望むのは…

アリス

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プロローグ:道明寺万理と言う女

出会いは計画されたもの──だった。秒で終了したが。

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公立の高校に通う万理は部活には入っているが──幽霊部員である。
それは、“バイト”しているからに他ならない。
高校を卒業すると同時に一人暮らしを始めた翼の家に同棲する形で万理も高校入学する頃には自活するようになった。
高い入学金を両親が出してくれ、授業料諸々を持ってくれた…翼には感謝してもしきれない。
『気にしなくて良い』と言うものの…やはり、恋人として、妻としては気になるもの。
毎夜のだけでは足りない、と思う…だから、彼が望むなら──

ピピピピッ──…

子供を1ダースだろうと2ダースだろうと作ってもいい…そう思っていたら、いつの間にか朝を告げる無機質な電子音が万理の眠りを邪魔する。

 「…んっ、……朝?」

…小説家である兄は締め切りさえ守れば基本家にいる。ので。

 「…」

まだ、眠る兄の美麗な寝顔を朝から拝めて眼福眼福♪である。

 「…顔洗ってご飯作るね、兄さん。」

チュッとその頬に唇を寄せた。

 「……万理…?おはよう…ああ、目覚めのキスをしてくれたんだな…嬉しいよ、万理」
 「兄さん…朝ご飯作るから離して。」
 「お、おぅ…」

抱擁から朝の“スキンシップ”になったら──それこそ朝食を食べる時間もなくなる。
こう言った予定はきっちりとこなさないと1日の予定が崩れる。
バイトは9時~18時まで内昼休憩1時間を除いては働いている──ああ、勿論土日祝の予定は、だが。
平日は普通に18時~21時までの時間がバイトの時間だ。
食材や消耗品の買い出しは昼間の時間に兄が代わって冷蔵庫の上に張り出したメモ用紙を見て購入してくれている。
衣類や生理用品なんかは個人的に買うこともあれば、下着や服なんかはデートのついでに行う事もある。
…因みにバイトは週5日で2日休みの平日は3時間ほどで、土日祝日が8時間ほどがバイト時間だ。
…ん?何のバイトか……って?
それは後で分かる。
……今は朝食の準備と昼食用の自身の弁当の支度をしなくては。

 「…♪~~♪♪…♪」

広々としたオープンキッチンは、清潔に保たれており、白で統一されたキッチンスペースは人3人は横に並んですれ違えるほど。

当初一人暮らしをしていたアパートとは居を変えてこの一戸建てに引っ越したのは去年の今頃だろうか。

ミーンミーンミンミンミンミーン…。

セミが五月蝿く泣き叫ぶ日差しの強い7月…今年の夏は猛暑らしい。

冷暖房が良く効いているこの家の中ではその日差しの影響もあまり受けないけれど…。

 「…うん、よし♪」

さんまの塩焼きにだし巻き玉子、鶏の照り焼きに小松菜とアーモンド和え、切干大根の煮物、味噌汁に納豆、とろろを添えてご飯を装ってもぞもぞと顔を洗ってきた兄がテーブルに並べるのを手伝ってくれる。

 「あ、ありがとう…兄さん」
 「これくらいお安いご用だよ」
 「うん…」

…ニコッと微笑まれると頬が熱くなる。
じっと見詰めてくる瞳の熱さは変わらない。
一途に、愚直に、真摯に向けてくる。
兄だとか、妹だとか…そんなのは気にしなくてもいいのだ、と…その瞳の熱量はずっと私へと向けられている。
この愛を受け入れて、昇華して…私は今兄さんの隣に居る。

 「兄さん…で、できたよ」
 「うん」
ニコニコと微笑わらう兄の顔にはありありと私のどぎまぎを見透かされてる。

ダークブラウンの木目調のダイニングテーブルは6人用──家族が家を訪ねてきた時に座れるようにしている──で、今は対面するように座るのは私と兄さんだけ。

私は感じる視線の熱さに堪えかねて、慌てたようにテレビを着けた。

 「…残念」
 「え?兄さん、今なにか言った…?」
ぽつり、と呟かれた言葉は小さく聞き取れなかった。

 「何も──それより、今日も熱いそうだよ?水分補給は忘れずに、ね」

朝のスッ○リ の天気予報が流れる…

7:30~10:20まで掛かる朝の情報番組の最初に天気予報は流れる。

朝食を作るために毎朝6時起き。
習慣となっている為、特別辛いとかはない。
…それよりも、愛しい人に毎日美味しいものを食べて欲しいと言う気持ちの方が勝ってしまい、特別苦にはならないのだ。

今だってキラキラと朝の日差しに照らされ明るい食卓を大事な人と囲んでいる──それが堪らなく嬉しいのだから。

 「うん、やっぱり万理の焼いてくれたさんまの方が美味しく感じるよ。」

加○浩次のコメントをBGMにして、椎茸とぶなしめじ、ワカメが入った味噌汁を口に含む。

…ああ、良い出汁だ。上手くいった。

 「うん…味噌汁もいい出汁だ…俺の奥さんは料理上手で鼻が高いよ」
 「!に、兄さんは大袈裟なんだから…///」

!き、気付いてくれた…!?
兄さんって…分かってたけど!分かってたけど!!

たらしだよ~!

細かい所気付いてくれるのは嬉しいよ?でもね、

 「…どうかした?」

はうっ!?

こてん、と小首を傾げた姿が小動物っぽくてあざとい!あざとかわいい!!

反○隆史風の美麗なお顔でこてん、とか!

どんなギャップだ…!!?

男らしい顔立ちの兄さんがこてん、とか!もう!もう、もう、もう!!

 「ぁ、ぅ……ぅぅ~~っ!///」

顔どころか、耳のみならず、鎖骨部分まで真っ赤になってしまった私は俯いてぼそぼそとご飯を口に運ぶしかない…おかずも含めないで…ぼそぼそと…ご飯のみを…。

 「…?万理、ひょっとして惚れ直してる…?さっきからご飯しか口にしてないよ?」
 「!」

…図星過ぎて何も言えません。

誕生日の時の“子作り宣言”の時と同等に絶句してしまう。
…自分は、いつからこんなにも兄さんを好きなのだろう──否、瞬間から、なのだ。

…いつの間にか兄妹の枠を越えて「好き」になった、「愛しい」と思ってしまった──その瞬間から。

…こうして、何気ない仕草の一つとっても好きだと言う気持ちが溢れて…どうしようもなくなる。

初恋の人が兄で、初めての相手が兄さん──それも14歳と若い時に…(いや、今も若いけど) 経験して。
焦がれるほどの抱擁を…口付けを幾度も交わした。

 「…俺はそんな照れて何も言えなくなる万理も可愛くて好きだけど…ちゃんとご飯以外も食べないと。──遅刻するよ?」
 「!…わ、分かっている…っ、兄さんが…その…何でもない///」
 「ふふ…本当にかわいいな」

赤面する私を微笑ましく眺め、兄さんは箸を持つ手を再開させる。
……。
















その後、どうにか無事?に朝食を終わらせると、黒の短パンと、Tシャツ、腰まである黒髪をポニーテールにした私はショルダーバッグを肩から掛けて、家を出た。

その道の途中、住宅街の端──電柱の下で蹲る男の子?の姿を見掛けた。

 「キミ、大丈夫──?」

思わずと、そう声を描けるほど…男の子?は泣いていた。

だから、訊いた。

 「…泣いている…の、か……?」
 「…うぐ…っ、ぐすっ!ひっく…。」

…土曜日の朝に男の子が一人。

泣いているのに──誰もいない。

ん……?

 「…邪神が…いつも……っ!」

…邪神?いつも…?

要領を得ないぼやき?呟きは……しかし、万理のも捉えなかった。

 「そう。──じゃあ、私、バイトあるから。」

尚も続く邪神が男の子の大切にしていたものを壊す──だのと言った嘆きは聞き流して。

スタスタと歩き去った──を自力で。

 「──えっ!?な、なん──っ!?」

男の子?が呆気に取られながらも振り向けば──遥か彼方にまっすぐ前を向いた万理の後ろ姿が見えるだけ…男の子は放って置かれた。
……。





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