私が、望むのは…

アリス

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プロローグ:道明寺万理と言う女

万理のバイトは

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カシャッ、カシャッ。

毎度お馴染みの緑色背景のバックの前で用意されたの新作衣装に身を包み──道明寺万理、16歳はポーズを取ったまま制止。

カシャカシャッとフラッシュが炊かれる中──綺麗に化粧をし、髪を整え、イヤリングやアクセサリーで着飾り、温和な、アンニュイな笑みを…カメラのレンズ越しに魅せている。

 「いいよ~、おっ、今の頂き♪」

雑誌、『月下美人』の表紙を飾ったのは──いつの頃か。

少なくとも万理が14歳の頃には今の事務所──“ミラージュ”に所属していた。

モデルと舞台をメインにタレントは在籍している。

事務所自体が新しい──2001年始動の──為、タレントの人数も24名と少ない。

皆、ファッション雑誌やパリコレなんかの晴れ舞台を目指す真面目な事務所だ。

…万理の場合は街でスカウトされ、そのまま今日までモデル業をで契約を交わし、ファッション雑誌を中心に撮影を楽しんでいる。

綺麗な格好やかわいい服、普段着ないようなヒラヒラとしたゴスロリ──のような格好も出来て万理的にも事務所的にもWin-Winな関係。

──と言うのも、万理の評判がすこぶる良いからである。

彼女が『月下美人』の表紙を飾るようになってから──雑誌も雑誌に掲載されている洋服も問い合わせの電話が鳴り止まない──らしい。
(らしい、と言うのは社長や社員からそう聞かされたが、万理自身に直接何か知らされた訳ではないから)

 「はい、次行ってみよー!」
 「…ぷっ、ふふ…なんですか、それ…」
 「ああ~!今の頂きましたー♪」

カシャカシャと自然な笑顔がまた切り撮られていく…。

万理自身はじっとしているのも、服を着替えるのも、フラッシュを炊かれるのも…そんなに嫌ではないからこのバイトは成り立っている。

合間合間の休憩時間(機材の点検とか、次の衣装への着替えとか)と昼の1時間休憩以外はぶっ続けの撮影だ。

基本立ち仕事でヒールのある靴も長時間履くことになるので…結構、終わったら足のケアが大変なのではあるけれど。

好きだからしている、と。

カメラのレンズ越しに笑顔を振り撒く。

洋服がどうすれば可愛く写るのか、どう“魅せれば”輝くのか、とか…考えるのが楽しいのだ。
綺麗に着飾り、プロのメイクで美しく変えられた自分が──写真になると、まったく違った自分の姿になるのだ。
これほど、好奇心が刺激される職業もないだろう──

 「はい、次~!」
 「ふふ…石田さん、だからそれなんですか?さっきから…ふふっ。」

クスクスと笑ってポーズを決めていく…ああ、因みにこの緑色背景は後でCGで空の上とか路地裏だとか、海の中だとかと風景を合成するのだ。

…撮影費をケチッた──んんっ!!社長の経費削減策だ。

…パリコレに出たいだとか、ブロードウェイに出たいだとか…そんな高尚な目標も夢もない万理がモデルをバイトとしているのは──まあ、社長のご厚意だろう。

何れ、このまま“本契約”するのか、それとも──

 「──とっ、もう時間か~。万理ちゃん、また1時間後にね~!」
 「はい、お疲れ様です」

にこやかに挨拶を交わして、衣装から私服へと着替え、クーラーボックスごと弁当が入ったクーラーボックスを手に屋上へ。

吹き抜けの“そこ”は涼しい風が吹く。

日差しはどうすることも出来ないが──青空と眼下の町並みはこうして見ると綺麗だ。

 「はあ~。いい天気…」

呟いてベンチに腰掛ける。
ここの屋上はちょっとした屋上庭園みたいになっている。
今は季節柄向日葵の花が彼方此方で咲いている。

…その向日葵を見ながら、町並みを見下ろせば…海の向こうに富士山が白くぼんやりと見える。
オフィス街のこのスタジオの周辺には多種多様なビルが聳え建ち…往来する色とりどりの自動車、バイク、自転車…が良く見える。

 「…うん、美味しい…やはり綺麗な景色を見ながらの食事は良いものだな」

…内容は朝食にも出した煮物とかだし巻き玉子、小松菜のアーモンド和えに唐揚げ(冷凍)を加えたものとご飯。…味噌汁はない。
水筒に淹れたキンキンに冷えた麦茶が乾いた喉を潤す。
万理はまだ学生であり“仮契約”のバイトなので──あまり、自宅からそう遠くは離れない距離での撮影になる。
他のモデルは海外や沖縄とかで泊まり掛けの撮影になるそう。

曖昧な夢の形──モデル業は楽しいが…一生の職にしよう、と言うほどの情熱が──“ミラージュ”所属の他のモデル仲間と同じ“夢”を抱いているのかと──万理は未だその答えを出せていない。

 「──ふぅ、よそう。折角の飯が不味くなる」

自身は未だ高校一年生──せめて、卒業するまでは。
まだ、決めなくてもいい──と。

青空の下で弁当を掻き込むのだった─…。









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