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プロローグ:道明寺万理と言う女
カレーの衝撃はオズロンの常識を変えた…え、そんなに!?
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「旨っ、旨…っ!?」
はぐはぐと銀色スプーンを手にカレールーとライスを口へと運ぶオズロン。
中央に置かれた福神漬けを適度に放り咀嚼してはゴクン、と飲み込み空になったらご飯をよそってカレールーを掛ける…いやはやもう5杯目のおかわりである。
翼も万理も2杯くらいが限界だ。
「…良く食べるな、オズさんは」
ピリリと辛いジ○ワカレーの辛口。
大人の辛さがクセになる一品。
万理の家族では翼と万理、父方の祖父と父がジャワカレーの辛口派で、姉の茉梨はゴー○デンカレーの辛口、父方の祖母と母がバーモン○カレーの甘口派、それ以外はどれでもいい派だ。
なので道明寺家では作り手によってカレールーが違った。
肉だって牛肉だったり、豚肉だったり、チキンだったり…その中でも切り方がバラやブロックや、細切れだったりするのだ。
反対に海老イカオンリーだったり、野菜と豆類とササミだったりもするのだ。
実家や祖父母の家でも好みが分かれる。
カレーに関しては道明寺家では実に拘りが強く、密かな争い?が起きている…まあ、平和的に、ではあるが。
…。
……。
…………。
夕食を食べ終え客間にオズロンを案内して。
「──と言う訳で明日の朝から街を目指そうと思う」
『そうか…なあ、その男──オズロンとか言ったか?浮気、してないよな?』
「ああ。私は兄さんだけだよ(性欲の発散をしただけ)」
『…そう。うん、信じるよ』
ピクリ、と翼の中の何かが反応する。
テレビ電話で1人窓際で佇んでいる。
宙に浮かせたスマホ…薄紫色の四角いGALAXYの画面越しに翼が睨め付けてくる…流石溺愛系妹至上主義者。
「差し当たっては冒険者登録だな。そこから暫くはランク上げに専念するよ」
『…そちらではたった1日の出来事でもこちらでは3日経過しているんだ──時間も暦の並びも同じだが、な』
「不思議だよな~」
『うん』
スマホの画面越しの会話は楽しい。
…例え、触れられなくても。
理由が相手が身内で実の兄だけではない。
──それは、翼が万理にとっての『最愛の人 』だからでもあるのだろう。
共に在って心地良いと、夜風呂上がりの縁側でコーヒー牛乳を飲むような。
そんなほっとする相手…だから。
開け放たれた窓から見上げる満天の星…その空に浮かぶ満月。
蒼白いその月が眼下の万理を睥睨する。
ミーンミーンミーン─…ッ
ジッジッジジジ──ッ
ミンミンミンミンッ!
セミの喧しい声が真夏の夜空にいつまでも反響して木霊する。
『…なあ、万理…お前はちゃんと帰って来てくれるよな…?』
スマホの画面の「兄さん」が不安そうにこちらを見てくる。
「ああ。私は必ず兄さんの隣に戻るよ」
考えるまでもない──万理は穏やかに微笑んで最愛の人へと返答を返す。
昨夜の事は本当に自慰行為のようなもの──少なくとも男が娼館に行くのと変わらない。
…それを「介抱」と一泊飯付きを対価にしただけ──それ以上でも以下でもない。
『…そう。俺も万理しか愛せないし、万理以外に隣を許すつもりはないから』
「うん…兄さん、愛している」
『俺も万理だけを愛しているよ…もう、夜も遅い──お休み、万理』
「ああ。おやすみなさい、兄さん…」
通話を切ってアラーム設定をしたスマホを机の上に置く。
「…兄さん…愛しているよ。」
ぽつりと誰ともなく呟いて窓を閉めた。
森の中は外と違って涼しい。
加えて結界の張られたこのコテージ界隈は蚊の1匹すらも弾く。
台所の黒い悪魔やダニ、蟻や蜘蛛、蝿や蜂の1匹すらも侵入不可。
その他細菌や雑菌すらも弾いているのだ。
もう一度月を見上げてみる。
満天の星空に蒼白い丸い月…。この月は地球で、日本で見るよりもやや大きく見えるが…基本は同じようだ。
「…必ず戻る、兄さんの下へ」
言葉にすれば叶うはず──少なくとも魔法があるこの世界では。
言葉には“魔力”が宿る。
言霊、と呼ばれ古き時代より在る部族は独自魔法──“符術”を使う民族も居るのだとか。
言葉には能力が宿る。
一度口にした言葉は「誓い」となって「枷」となり──やがて、「実」を結ぶ─…それは人に寄っては新たな術を開花させたり、新たな才能を花開かせたり、放つ魔法の威力が上がったりする─…と。
まあ、『信ずる者は救われる』──と言う言葉の通りになるのだろう。
愚直にまっすぐただ前だけを見ていれば──何れ大成を果たす事も可能であろう、と良くある教えの一つにあるようだ。
「…明日から森の外を出るのか…」
この場所は結界を張って、万理以外の侵入者は訪ねる事も不可能な異空間に隔離する。
定期的にここへは帰って来るが…まあ、ここ以上の優れた宿は無さそうだと、オズロンの反応で解っている。
風呂も家電もないような宿には止まりたくないな──せめて風呂は欲しい。
浄化魔法だけでは満足できない。
毎日のように風呂に入らないと気持ち悪い──気分の問題、かもしれないが。
「…なら、依頼が終わる度にここへと戻るか。
まあ、食事は美味しいかもしれないから寄るかもしれんが…」
“取り寄せ”で炭酸飲料──サイダーをグイッと飲み干してグラスに浄化を掛けて無限収納へと仕舞う。
「…寝るか。」
……。
はぐはぐと銀色スプーンを手にカレールーとライスを口へと運ぶオズロン。
中央に置かれた福神漬けを適度に放り咀嚼してはゴクン、と飲み込み空になったらご飯をよそってカレールーを掛ける…いやはやもう5杯目のおかわりである。
翼も万理も2杯くらいが限界だ。
「…良く食べるな、オズさんは」
ピリリと辛いジ○ワカレーの辛口。
大人の辛さがクセになる一品。
万理の家族では翼と万理、父方の祖父と父がジャワカレーの辛口派で、姉の茉梨はゴー○デンカレーの辛口、父方の祖母と母がバーモン○カレーの甘口派、それ以外はどれでもいい派だ。
なので道明寺家では作り手によってカレールーが違った。
肉だって牛肉だったり、豚肉だったり、チキンだったり…その中でも切り方がバラやブロックや、細切れだったりするのだ。
反対に海老イカオンリーだったり、野菜と豆類とササミだったりもするのだ。
実家や祖父母の家でも好みが分かれる。
カレーに関しては道明寺家では実に拘りが強く、密かな争い?が起きている…まあ、平和的に、ではあるが。
…。
……。
…………。
夕食を食べ終え客間にオズロンを案内して。
「──と言う訳で明日の朝から街を目指そうと思う」
『そうか…なあ、その男──オズロンとか言ったか?浮気、してないよな?』
「ああ。私は兄さんだけだよ(性欲の発散をしただけ)」
『…そう。うん、信じるよ』
ピクリ、と翼の中の何かが反応する。
テレビ電話で1人窓際で佇んでいる。
宙に浮かせたスマホ…薄紫色の四角いGALAXYの画面越しに翼が睨め付けてくる…流石溺愛系妹至上主義者。
「差し当たっては冒険者登録だな。そこから暫くはランク上げに専念するよ」
『…そちらではたった1日の出来事でもこちらでは3日経過しているんだ──時間も暦の並びも同じだが、な』
「不思議だよな~」
『うん』
スマホの画面越しの会話は楽しい。
…例え、触れられなくても。
理由が相手が身内で実の兄だけではない。
──それは、翼が万理にとっての『最愛の人 』だからでもあるのだろう。
共に在って心地良いと、夜風呂上がりの縁側でコーヒー牛乳を飲むような。
そんなほっとする相手…だから。
開け放たれた窓から見上げる満天の星…その空に浮かぶ満月。
蒼白いその月が眼下の万理を睥睨する。
ミーンミーンミーン─…ッ
ジッジッジジジ──ッ
ミンミンミンミンッ!
セミの喧しい声が真夏の夜空にいつまでも反響して木霊する。
『…なあ、万理…お前はちゃんと帰って来てくれるよな…?』
スマホの画面の「兄さん」が不安そうにこちらを見てくる。
「ああ。私は必ず兄さんの隣に戻るよ」
考えるまでもない──万理は穏やかに微笑んで最愛の人へと返答を返す。
昨夜の事は本当に自慰行為のようなもの──少なくとも男が娼館に行くのと変わらない。
…それを「介抱」と一泊飯付きを対価にしただけ──それ以上でも以下でもない。
『…そう。俺も万理しか愛せないし、万理以外に隣を許すつもりはないから』
「うん…兄さん、愛している」
『俺も万理だけを愛しているよ…もう、夜も遅い──お休み、万理』
「ああ。おやすみなさい、兄さん…」
通話を切ってアラーム設定をしたスマホを机の上に置く。
「…兄さん…愛しているよ。」
ぽつりと誰ともなく呟いて窓を閉めた。
森の中は外と違って涼しい。
加えて結界の張られたこのコテージ界隈は蚊の1匹すらも弾く。
台所の黒い悪魔やダニ、蟻や蜘蛛、蝿や蜂の1匹すらも侵入不可。
その他細菌や雑菌すらも弾いているのだ。
もう一度月を見上げてみる。
満天の星空に蒼白い丸い月…。この月は地球で、日本で見るよりもやや大きく見えるが…基本は同じようだ。
「…必ず戻る、兄さんの下へ」
言葉にすれば叶うはず──少なくとも魔法があるこの世界では。
言葉には“魔力”が宿る。
言霊、と呼ばれ古き時代より在る部族は独自魔法──“符術”を使う民族も居るのだとか。
言葉には能力が宿る。
一度口にした言葉は「誓い」となって「枷」となり──やがて、「実」を結ぶ─…それは人に寄っては新たな術を開花させたり、新たな才能を花開かせたり、放つ魔法の威力が上がったりする─…と。
まあ、『信ずる者は救われる』──と言う言葉の通りになるのだろう。
愚直にまっすぐただ前だけを見ていれば──何れ大成を果たす事も可能であろう、と良くある教えの一つにあるようだ。
「…明日から森の外を出るのか…」
この場所は結界を張って、万理以外の侵入者は訪ねる事も不可能な異空間に隔離する。
定期的にここへは帰って来るが…まあ、ここ以上の優れた宿は無さそうだと、オズロンの反応で解っている。
風呂も家電もないような宿には止まりたくないな──せめて風呂は欲しい。
浄化魔法だけでは満足できない。
毎日のように風呂に入らないと気持ち悪い──気分の問題、かもしれないが。
「…なら、依頼が終わる度にここへと戻るか。
まあ、食事は美味しいかもしれないから寄るかもしれんが…」
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「…寝るか。」
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