14 / 49
2章
ビケの森
しおりを挟む
彫像損壊事件から早2週間が経った。
あの事件は、6人が結託して彫像を破壊したと結論づけられ、彼らは2ヶ月の停学処分と6点の彫像の修理を負担することを言い渡された。
魔石はシュドレー公爵家が用意したということばかりは覆すことが出来ない事実であるため、俺は「友人たちに売るために持ち込んだがいつの間にか盗まれていた」と証言した。加えて、「はじめ6名を庇ったことは、ただ友人として素直に彼らが言っていたことを信用し無実を晴らそうとしただけ。だから、彫像を破壊した件とは無関係だ」と話した。
もちろん盗まれたなんて全くの嘘だが、あいつらも嘘を言っていたわけだしおあいこということで良いだろうと思った。
この証言に加え、シュドレー公爵である父が押し切って俺は彫像損壊事件には関与していないということになった。
しかし、学園の理事長が言うには、学園に魔石を持ち込んだことと人工的な石持ちであることを隠していたことは流石に無視できないとのことなので、俺は2週間の停学を食らった。父からは、その間実家へ戻るようにと言われたが何をされるか分かったもんじゃないので無視して、寮に留まることにした。
そして今日、ひたすらただ引きこもってやっと2週間ぶりに学園に戻ってきたのだが…登校してからずっと周りの生徒は俺をジロジロと見て陰口を叩いている。
(今回の件どうにか出来たと思ったが、周りから見れば事実を公爵家の力でねじ伏せたみたいにそりゃ映るだろうな。いや、実際そういうことになるか…)
まぁ使える権力は使わねば勿体ない。今回は自分の身を守るために使ったということにしようと気を紛らわした。
「シアン、おはよー!」
うるさい奴がきた。
「あっ、煩わしいみたいな顔しないでよー!シアンが2週間もいないから寂しかったんだよ」
朝からうるさくて、ベタベタくっついてくるこいつは、イブリン・ヴァレントというまだ謎多き男。
「寂しかったって、お前ここ2週間ほぼ毎日俺の部屋に押し入ってきてただろ」
「いやいや、でも学園で会えないのとはまた違うでしょ!だから、本当に戻ってきてくれて嬉しい」
そう言ってイブリンは人懐っこい笑顔を見せた。うっ…今日は注目されている分周りからの視線が痛い…。
俺は、とっとと自分の教室に行くことにする。
「あっシアン待って」
「なんだよ」
「1年生の中間実技試験、無くなったの知ってる?」
「ああ…今回の騒動で試験どころじゃなくなったんだっけ?」
「そう。でも、その代わりに別の試験を1年生はやることになったらしい」
「別の試験?」
「…ビケの森魔獣討伐大会に参加すること」
「ビケの森…」
ビケの森とは、学園からは割と近い所に位置する魔獣のみが潜む森だ。昔、この王国が対立していた時魔獣はあちこちに生息し人を襲っていた。そのあまりの危険性から、女神が魔獣を付き従わせビケの森へ閉じ込めた。今は、魔獣を森から外へ出さないために魔法庁が定期的に魔法陣を貼り替えているという。
魔獣討伐大会は、そんな魔獣が山のように潜むジャングル、ビケの森で年に1度行われる。討伐大会と言われているが、討伐数が重要ではなく早く森を出た者が優勝とされる。と言うのも、魔獣は人を見ると襲う性質故、戦うことは避けられない。だからこそ、最も早く外へ出られた者が多くの魔獣を相手に難なく応戦できたということであり、最も優秀であることを意味する。
もちろん、ゲームでこの大会イベントはシナリオに入っている。しかし…。
「魔獣討伐大会に参加できるのは、2年生からじゃなかったのか?」
「ああ、俺もそう聞いてた。だけど今回は特例として1年生も参加することを許して、前期の成績をつけるんだって」
「だが、まだ魔法を覚えたての奴らもいる中で魔獣討伐は早すぎるんじゃないか?」
「俺もそう思う。そのリスクから、大会へ参加した1年生は2年へすぐ進級できることになるんだって」
「はぁ?なんだそれ…。特例にも程があるだろ。ちなみに、大会に参加しないっていう手段はあるのか?」
「うん、まぁ…学科試験があってそれを受ければ普通に前期の成績が決まってたんだけど…。その…シアンが停学中に終わっちゃったんだ」
「………はぁ。つまり、大会に出なければいけない訳だな」
「で、でもねシアン、安心して!俺も大会出るから!中間実技試験で一緒にペア組もうって約束したんだから、絶対俺が守るよ」
「約束した覚えはないけどな。でも、そうだな…仕方ない。お前とペアになって大会出るよ」
「ほんと!?シアンーー!」
またデカい図体に抱きしめられ、俺はやめろと言わんばかりにイブリンの脇腹を軽くグーで殴った。
それにしても不思議だった。
2年生になって起こるはずのイベントが何故このタイミングで行われることになったのか…。
俺がシナリオを変えてしまったことが原因なのか?疑問はたくさん生まれた。しかし、何よりも大きな問題がこの先待ち受けているかもしれない。
もし、この大会が2年生のときのシナリオ通りで進められるのだとしたら、俺はまた悪役として巻き込まれる可能性があるからだ。この大会はシュレイにとっては非常に重要なイベントであり、シアンの悪事によって彼の運命が変わる。
そうなると、今回シュレイの運命を動かすために悪役令息としてシナリオ通りに動くか動かないか、考えてしまう。
だが結局、深く考えるのを止めて…
「シアン、大会の参加届出しに行こ!」
こいつの、イブリンの顔を見て、不思議と安心感が出てきて…俺は「まぁ、今回も何とかなるかもしれない」という漠然とした思いを抱いて、歩みを進めた。
あの事件は、6人が結託して彫像を破壊したと結論づけられ、彼らは2ヶ月の停学処分と6点の彫像の修理を負担することを言い渡された。
魔石はシュドレー公爵家が用意したということばかりは覆すことが出来ない事実であるため、俺は「友人たちに売るために持ち込んだがいつの間にか盗まれていた」と証言した。加えて、「はじめ6名を庇ったことは、ただ友人として素直に彼らが言っていたことを信用し無実を晴らそうとしただけ。だから、彫像を破壊した件とは無関係だ」と話した。
もちろん盗まれたなんて全くの嘘だが、あいつらも嘘を言っていたわけだしおあいこということで良いだろうと思った。
この証言に加え、シュドレー公爵である父が押し切って俺は彫像損壊事件には関与していないということになった。
しかし、学園の理事長が言うには、学園に魔石を持ち込んだことと人工的な石持ちであることを隠していたことは流石に無視できないとのことなので、俺は2週間の停学を食らった。父からは、その間実家へ戻るようにと言われたが何をされるか分かったもんじゃないので無視して、寮に留まることにした。
そして今日、ひたすらただ引きこもってやっと2週間ぶりに学園に戻ってきたのだが…登校してからずっと周りの生徒は俺をジロジロと見て陰口を叩いている。
(今回の件どうにか出来たと思ったが、周りから見れば事実を公爵家の力でねじ伏せたみたいにそりゃ映るだろうな。いや、実際そういうことになるか…)
まぁ使える権力は使わねば勿体ない。今回は自分の身を守るために使ったということにしようと気を紛らわした。
「シアン、おはよー!」
うるさい奴がきた。
「あっ、煩わしいみたいな顔しないでよー!シアンが2週間もいないから寂しかったんだよ」
朝からうるさくて、ベタベタくっついてくるこいつは、イブリン・ヴァレントというまだ謎多き男。
「寂しかったって、お前ここ2週間ほぼ毎日俺の部屋に押し入ってきてただろ」
「いやいや、でも学園で会えないのとはまた違うでしょ!だから、本当に戻ってきてくれて嬉しい」
そう言ってイブリンは人懐っこい笑顔を見せた。うっ…今日は注目されている分周りからの視線が痛い…。
俺は、とっとと自分の教室に行くことにする。
「あっシアン待って」
「なんだよ」
「1年生の中間実技試験、無くなったの知ってる?」
「ああ…今回の騒動で試験どころじゃなくなったんだっけ?」
「そう。でも、その代わりに別の試験を1年生はやることになったらしい」
「別の試験?」
「…ビケの森魔獣討伐大会に参加すること」
「ビケの森…」
ビケの森とは、学園からは割と近い所に位置する魔獣のみが潜む森だ。昔、この王国が対立していた時魔獣はあちこちに生息し人を襲っていた。そのあまりの危険性から、女神が魔獣を付き従わせビケの森へ閉じ込めた。今は、魔獣を森から外へ出さないために魔法庁が定期的に魔法陣を貼り替えているという。
魔獣討伐大会は、そんな魔獣が山のように潜むジャングル、ビケの森で年に1度行われる。討伐大会と言われているが、討伐数が重要ではなく早く森を出た者が優勝とされる。と言うのも、魔獣は人を見ると襲う性質故、戦うことは避けられない。だからこそ、最も早く外へ出られた者が多くの魔獣を相手に難なく応戦できたということであり、最も優秀であることを意味する。
もちろん、ゲームでこの大会イベントはシナリオに入っている。しかし…。
「魔獣討伐大会に参加できるのは、2年生からじゃなかったのか?」
「ああ、俺もそう聞いてた。だけど今回は特例として1年生も参加することを許して、前期の成績をつけるんだって」
「だが、まだ魔法を覚えたての奴らもいる中で魔獣討伐は早すぎるんじゃないか?」
「俺もそう思う。そのリスクから、大会へ参加した1年生は2年へすぐ進級できることになるんだって」
「はぁ?なんだそれ…。特例にも程があるだろ。ちなみに、大会に参加しないっていう手段はあるのか?」
「うん、まぁ…学科試験があってそれを受ければ普通に前期の成績が決まってたんだけど…。その…シアンが停学中に終わっちゃったんだ」
「………はぁ。つまり、大会に出なければいけない訳だな」
「で、でもねシアン、安心して!俺も大会出るから!中間実技試験で一緒にペア組もうって約束したんだから、絶対俺が守るよ」
「約束した覚えはないけどな。でも、そうだな…仕方ない。お前とペアになって大会出るよ」
「ほんと!?シアンーー!」
またデカい図体に抱きしめられ、俺はやめろと言わんばかりにイブリンの脇腹を軽くグーで殴った。
それにしても不思議だった。
2年生になって起こるはずのイベントが何故このタイミングで行われることになったのか…。
俺がシナリオを変えてしまったことが原因なのか?疑問はたくさん生まれた。しかし、何よりも大きな問題がこの先待ち受けているかもしれない。
もし、この大会が2年生のときのシナリオ通りで進められるのだとしたら、俺はまた悪役として巻き込まれる可能性があるからだ。この大会はシュレイにとっては非常に重要なイベントであり、シアンの悪事によって彼の運命が変わる。
そうなると、今回シュレイの運命を動かすために悪役令息としてシナリオ通りに動くか動かないか、考えてしまう。
だが結局、深く考えるのを止めて…
「シアン、大会の参加届出しに行こ!」
こいつの、イブリンの顔を見て、不思議と安心感が出てきて…俺は「まぁ、今回も何とかなるかもしれない」という漠然とした思いを抱いて、歩みを進めた。
435
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる