君のナミダに渇くカラダ

あーむす。

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30.何でそれを私に…?

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「…それでだな…」

ラーメン屋を出てしばらく歩いた後、ようやく話が始まった。

もう、充分すぎるほどの時間もたち、心の準備も嫌という程した。

彼の目を真っ直ぐに見つめ、続く言葉を待つ。

「…あのな、俺、里佳と出張行ったけどさ、っいや、そのっ、さ、何もない、いや何もなかったから、俺ら。」

………ん?

私は彼の目を見つめたまま固まっていた。

そりゃ、その情報は私が一番知りたかった情報であり、さらには希望どうりの内容ではあったものの、向こうから言われる意味がわからない。

なぜ私に報告するのか、ん、もしかして私知らない間に聞いてたのか?
…いや、そんなわけない。

「…あ、そうなんですね。」

頭の中はごちゃごちゃだったが、信じられないくらい腑抜けた間抜けな返答しかできなかった。

「…あぁ。」

なぜか相槌をうたれ、気まずい沈黙が広がる。

え、なに、これで話って終わったの?

何が言いたかったのかも分からず、必死に頭の中で今日の一連の会話を考えるが意味がわからない。

気がついたら家のすぐ近くまで来ていた。

まずい、どうしよう、このまま別れていいの…?

「…っあのっ、何でそれを私にっ」

気がついたらぽろっと言うつもりのなかった言葉がすべり落ちていた。

慌てて自分の口を塞ぐが、一度でた言葉は帰ってこない。

もう、何で思ったことそんまんま言っちゃったんだろう私…

いたたまれなくなってぎゅっと目を閉じて俯いていたがリーダーは何も言ってこない。

…困っているのだろうか、怒っているのだろうか。

どちらにしてもいい状況であるとは言えない。

どうにかしなければっ、勇気を持って私は顔を上げた。

「…あのっ、今の何でもなくってっっ!!」

そこで私は固まってしまった。

彼の目も私をじっと見つめていた。

少し驚いたような、それでいて少し恥じらうような、そんな目。

「、そうか、」

だがそう言って彼はすっと目をそらしたため、私もはっとして顔をそむける。

「…っあ、着きましたね。今日はご馳走さまでした、ありがとうございますっ!」

私はその場から逃げるように早口に別れを告げて玄関に向かった。

ーーその時。

「…あのさ。」

背後から小さく声が聞こえて、反射的に立ち止まった。

「さっきの話、俺が安田に言っときたかったんだ。」


それだけ。おやすみ。

遠ざかる足音を聞き、私も再び足を動かす。

…今も、さっきみたいな目をしてたんだろうか。

あんな目されたら、期待しちゃうじゃないか。

すると、ちょうど雲に見え隠れしていた月がすっぽり隠れて暗くなったので、今度こそ駆け足で玄関に向かった。

私が建物内に入ると同時に月は完全に雲の中へ消えていった。
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