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第26話 夜明け、そして
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翌朝──。
水平線が、淡いオレンジにゆっくりと染まり始める。
光が差し込み、リクは静かにまぶたを開けた。
頭の奥が鈍く痛んで、節々が軋むように重い。
ぼやけた視界に映ったのは、見慣れない天井。
古びた梁と、潮の香りがわずかに混じる木の匂い──。
「……ん……」
微かに身じろぐと、隣からふわりと温かな気配が伝わってきた。
視線を向けると、澪が布団のそばに寄り添い、膝を抱えたままうたた寝していた。
リクの額には、湿ったタオルが乗せられたまま。
(……ずっと、そばにいてくれたんだな)
それだけで、胸の奥にじんと灯るものがある。
あの混乱と焦燥の果てに、澪が「好き」だと言ってくれた。その言葉に、どれほど救われたか。
「……澪」
掠れた声で名を呼ぶと、澪の肩がピクリと震えた。
ゆっくりと顔を上げた澪は、リクが目覚めていることに気づき、はっと目を見開く。
「リクさん……っ! 目、覚ましたんですね。よかった……!」
澪が顔を近づけ、うっすら熱の残るリクの額にそっと自身の額を触れる。呼吸が近づいて、思わずどちらも一瞬、息を止めた。
「……ああ、大丈夫だ。まだ……身体は重いけど」
痛みはまだ残っているが、心に沁みるような安堵が、身体の奥から溶け出してくる。
すぐそばに澪がいて、眠らずに付き添ってくれていた──その事実だけで、リクの心は満たされていく。
「ごめんなさい……私が、逃げたせいで……」
澪は俯いたまま、小さく呟いた。
リクはゆっくりと手を伸ばし、その頬にそっと触れる。
「それは違う。きちんと伝えなかった俺が悪い。澪を不安にさせたのは、俺のほうだ」
優しく触れる指に、澪は自分の手を重ねた。
その温度に、じわりと涙がにじむ。
「……リクさん……」
「澪が、俺を好きだと言ってくれた。それが……どれだけ嬉しかったか」
その声に、澪の心が小さく震える。
リクの目には、獣の鋭さはない。
ただ、まっすぐで優しい光がある。限りなく純粋な金色が、彼の想いをそのまま映していた。
「もう、どこにも行かないでくれ」
そう告げた彼の声は、切なさと、どこか怯えを含んでいた。
それがあまりにも人間らしくて、澪はこくりと頷く。
「……私の居場所は、リクさんのそばだから」
照れくさそうに笑ったその顔が、朝の光に照らされて、どこまでも綺麗だった。
リクの喉が、ごくりと鳴る。
「……もう、触れていいよな……?」
掠れる声が、熱と渇きを滲ませながら問いかける。
「澪が、俺に“好き”って言ってくれたから……」
リクは澪の指先に、そっと唇を落とす。
そのまま何度も、確かめるように繰り返し、指を辿るように舌を這わせる。
唇の熱が、指先から胸の奥へ伝わって、澪の心が甘く溶けていく。
「……どうしようもないくらい、澪のことが好きだ」
滲むような声音に、涙を含んだ瞳。
「もう一度、好きだと言ってくれ」
「もう……言ったでしょう?私の意思で、リクさんを選んだって」
澪はリクの頬に手を添え、微笑む。
リクの瞳が強く揺れた。
長い尻尾が、求めるように彼女の腰にくるりと巻きついた。その先が、そっと背を這う。
「……もう、離さねぇ。絶対、離せねぇから……」
低く震える声が、澪の鼓膜に優しく響いた。包まれるような安心感に、心がとろけていく。
(……どうしてだろう。すごく、心地いい……)
胸の鼓動が、ぴたりと重なる。
自然と、澪の手がリクの首筋へ滑り、指先がその熱をなぞった。
「……っ」
今度は、リクが小さく息を呑む。
「……澪。……キス、してもいいか……?」
「うん……」
その一言で、唇がふれ合った。
最初は、触れるだけ。けれど、徐々に熱を帯びていく。
舌が触れ合い、甘く絡まり、湿った音が静かな朝に溶けていった。
「……澪……っ」
リクが名を呼ぶたびに、その声に色が差す。
切実さと、こらえきれない愛おしさが滲んでいる。
「……夢じゃないよね……?」
掠れた声で澪が呟く。リクは答えず、もう一度キスを落とす。
唇を離したあと、喉元に顔を埋め、そっと囁く。
「……俺も、ずっと夢見てた。心が通じて、澪に触れること……お前が、俺を選ぶ瞬間を……」
その声に、澪の背筋が甘く震える。気づけば、澪の唇がまた、リクを求めていた。
深く、熱く、愛しさのすべてを込めて。
やがて、リクの耳がぴんと立ち、尾が小さく震える。
それは、理性が崩れかけている証。けれど彼は、ぐっと堪えるように、澪を抱きしめた。
「……澪が“好き”だと言ってくれたから、これ以上のことは、全部我慢できる」
額を重ね、かすれる声で告げる。
「本当は、今すぐ繋がりたい。澪の全てが欲しい。でも……お前の準備ができるまで、俺は待てる」
ふたりの間にあった不安も、すれ違いも、痛みも。
今、すべてが確かな愛に変わっていた。
朝の光が、そっと二人を包み込んでいた。
水平線が、淡いオレンジにゆっくりと染まり始める。
光が差し込み、リクは静かにまぶたを開けた。
頭の奥が鈍く痛んで、節々が軋むように重い。
ぼやけた視界に映ったのは、見慣れない天井。
古びた梁と、潮の香りがわずかに混じる木の匂い──。
「……ん……」
微かに身じろぐと、隣からふわりと温かな気配が伝わってきた。
視線を向けると、澪が布団のそばに寄り添い、膝を抱えたままうたた寝していた。
リクの額には、湿ったタオルが乗せられたまま。
(……ずっと、そばにいてくれたんだな)
それだけで、胸の奥にじんと灯るものがある。
あの混乱と焦燥の果てに、澪が「好き」だと言ってくれた。その言葉に、どれほど救われたか。
「……澪」
掠れた声で名を呼ぶと、澪の肩がピクリと震えた。
ゆっくりと顔を上げた澪は、リクが目覚めていることに気づき、はっと目を見開く。
「リクさん……っ! 目、覚ましたんですね。よかった……!」
澪が顔を近づけ、うっすら熱の残るリクの額にそっと自身の額を触れる。呼吸が近づいて、思わずどちらも一瞬、息を止めた。
「……ああ、大丈夫だ。まだ……身体は重いけど」
痛みはまだ残っているが、心に沁みるような安堵が、身体の奥から溶け出してくる。
すぐそばに澪がいて、眠らずに付き添ってくれていた──その事実だけで、リクの心は満たされていく。
「ごめんなさい……私が、逃げたせいで……」
澪は俯いたまま、小さく呟いた。
リクはゆっくりと手を伸ばし、その頬にそっと触れる。
「それは違う。きちんと伝えなかった俺が悪い。澪を不安にさせたのは、俺のほうだ」
優しく触れる指に、澪は自分の手を重ねた。
その温度に、じわりと涙がにじむ。
「……リクさん……」
「澪が、俺を好きだと言ってくれた。それが……どれだけ嬉しかったか」
その声に、澪の心が小さく震える。
リクの目には、獣の鋭さはない。
ただ、まっすぐで優しい光がある。限りなく純粋な金色が、彼の想いをそのまま映していた。
「もう、どこにも行かないでくれ」
そう告げた彼の声は、切なさと、どこか怯えを含んでいた。
それがあまりにも人間らしくて、澪はこくりと頷く。
「……私の居場所は、リクさんのそばだから」
照れくさそうに笑ったその顔が、朝の光に照らされて、どこまでも綺麗だった。
リクの喉が、ごくりと鳴る。
「……もう、触れていいよな……?」
掠れる声が、熱と渇きを滲ませながら問いかける。
「澪が、俺に“好き”って言ってくれたから……」
リクは澪の指先に、そっと唇を落とす。
そのまま何度も、確かめるように繰り返し、指を辿るように舌を這わせる。
唇の熱が、指先から胸の奥へ伝わって、澪の心が甘く溶けていく。
「……どうしようもないくらい、澪のことが好きだ」
滲むような声音に、涙を含んだ瞳。
「もう一度、好きだと言ってくれ」
「もう……言ったでしょう?私の意思で、リクさんを選んだって」
澪はリクの頬に手を添え、微笑む。
リクの瞳が強く揺れた。
長い尻尾が、求めるように彼女の腰にくるりと巻きついた。その先が、そっと背を這う。
「……もう、離さねぇ。絶対、離せねぇから……」
低く震える声が、澪の鼓膜に優しく響いた。包まれるような安心感に、心がとろけていく。
(……どうしてだろう。すごく、心地いい……)
胸の鼓動が、ぴたりと重なる。
自然と、澪の手がリクの首筋へ滑り、指先がその熱をなぞった。
「……っ」
今度は、リクが小さく息を呑む。
「……澪。……キス、してもいいか……?」
「うん……」
その一言で、唇がふれ合った。
最初は、触れるだけ。けれど、徐々に熱を帯びていく。
舌が触れ合い、甘く絡まり、湿った音が静かな朝に溶けていった。
「……澪……っ」
リクが名を呼ぶたびに、その声に色が差す。
切実さと、こらえきれない愛おしさが滲んでいる。
「……夢じゃないよね……?」
掠れた声で澪が呟く。リクは答えず、もう一度キスを落とす。
唇を離したあと、喉元に顔を埋め、そっと囁く。
「……俺も、ずっと夢見てた。心が通じて、澪に触れること……お前が、俺を選ぶ瞬間を……」
その声に、澪の背筋が甘く震える。気づけば、澪の唇がまた、リクを求めていた。
深く、熱く、愛しさのすべてを込めて。
やがて、リクの耳がぴんと立ち、尾が小さく震える。
それは、理性が崩れかけている証。けれど彼は、ぐっと堪えるように、澪を抱きしめた。
「……澪が“好き”だと言ってくれたから、これ以上のことは、全部我慢できる」
額を重ね、かすれる声で告げる。
「本当は、今すぐ繋がりたい。澪の全てが欲しい。でも……お前の準備ができるまで、俺は待てる」
ふたりの間にあった不安も、すれ違いも、痛みも。
今、すべてが確かな愛に変わっていた。
朝の光が、そっと二人を包み込んでいた。
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