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結婚に向いていない
しおりを挟む優志さんから「転職する事にした」とのご報告。
マジでか。
⋯まさか、うちの会社に来る訳じゃないよな?
「去年一級建築士の試験にやっと合格して、大学の時の伝手で、先輩の事務所に誘ってもらってね。いつかは転職するつもりだったし、いい機会かなって。元々営業希望じゃなかったし」
良かった。まともな理由だった。
だからしばらく忙しくなるかも。って、しょげているが大事な時期なんだから仕方無いだろう。
当たり前だけど、優志さんは本当に忙しそうだ。
一応連絡は取れているが、休日に会う回数は激減した。
俺がランニングをする時間帯にも家にいないみたい。
週末、久しぶりにフットサルに参加した。
前に一度、真壁さんが付いてきて「どんな関係なんだ」と、聞かれて大変で、それ以来足が遠のいていたんだ。
あの時は仮初の恋人という、微妙な関係だったから。
みんな「おー、久しぶり」って普通に迎え入れてくれた。
社会人のフットサルチームは、メンバーが年単位で参加出来ない事も珍しくないから、みんな全然気にしてないっぽくて安心した。
ランニングは毎日してたけど、フットサルは久々。念入りに準備運動を行う。
セックス三昧の自堕落な生活をしているから、さぞ体力も落ちただろうと思ったら意外にもキレキレで、「調子いいね」と言われた。
セックスと言う名のトレーニングの成果かな。
♢♢♢
「実家を追い出される事になった」
またもや人生の帰路に立たされている男、真壁優志。
玄関で致したのがバレたのかと怯えたが、そうではないらしい。
「両親は定年退職してもそのまま海外に住むんだって。この家は売りに出す」
「実家を無くしてもいいんですか?」
「むしろ面倒な事を僕に押し付けられてラッキーと思ってそう。妹もあっちで結婚して、もう子どももいるんだって」
いつの間にか身内が増えていた事も最近聞かされたようだ。
家族の話をする時、優志さんは諦めたような遠い目をする。
「じゃあ優志さんは、都内に戻るんですか?」
都内にいた時に住んでいたマンションは分譲で、今は貸出しているらしい。
「ううん。人に貸しちゃったらもう住む気なくなったし、いいかな」
1LDKの分譲マンションは利便性が良く、今は小さな子どもがいる家族が住んでいるらしい。
「だから自分で設計した理想の家を建てようと思って」
それはまた豪勢な。
「今の仕事に慣れるまでは水曜日と土日どちらかを休みにする予定。でもそれじゃ結局涼くんと会える時間て限られるし、一人で暮らすのももう嫌。
涼くん社宅でしょ。一緒に暮らすよ」
またまた強引に決めてきたけどさすがに簡単には頷けない。将来設計を勝手に決めるな。
「俺、まだローンとか組みたくない」
「僕の家なんだから僕が支払うに決まっているでしょ」
道理である。
「ただし完全に僕好みの家にするから。庭は面倒だから造らないし、ガレージは絶対必要。気密性のある家にする。もちろん個室は作るよ。鍵は付けさせないけど。許せる範囲ならリクエストも可能。ガラス張りのお風呂は却下ね」
「⋯掃除しやすい家なら何でも」
そんなドスケべな風呂、俺だってお断りだ。
整理整頓清掃 3S大事。
「あのね、もう一つ相談なんだけど、涼くん僕の車乗らない?」
もう一つ相談???
相談、されたっけ?
全部事後報告だった気がするんだけど。
「今の車も大事だけど、どうしてもスポーツカーも乗りたいの。でも僕、電車通勤だから」
俺は配送で日常的にトラックも扱ってる準中型免許保持者。だから自家用車サイズならMTだってハイルーフのワゴンだって問題なく運転出来る。
関係ないがフォークリフトの免許も持っている。
「涼くんの車、そろそろ車検だよね。走行距離も結構行ってるって言ってたし」
「新居は職場から少し離れてるし、車は必要だよね?涼くんが乗ってくれたら嬉しいんだけどなぁ」
畳み掛けてくる。
うーんと唸ってみせるが、恐らく優志さんはスポーツカーも買う。
何ならもう商談している。
下手したら明日には届くまである。
♢♢♢
そろそろ梅雨明けも近いある夜。
愛し合って、まだ眠くないねってベッドでイチャイチャしていたら優志さんが思い出したかのように言った。
「あ、新居もうすぐ出来るよ。今度見に行こっか」
完成するまで楽しみにしてて。と大まかな場所以外内緒にされていた新居。
結構時間かかったな。
「基礎に力入れたからね。揺れに強い、しっかりとした家だよ」
すごく楽しそうに図面を引いていた。
一度、どんな家なのか聞いてみたら「一般的には受けない、男の夢が詰まった家」と笑顔で返されて、曖昧に笑って流してそのままだった。
優志さんは仕事の合間にも色々打ち合わせしていて、物凄く満足のいく家に仕上がっているらしい。
平日、休みを合わせて見に行った新居は、立派なガレージがあって、通りから中を伺い知る事は出来ない造り。
要塞みたいだ。
チラッと見えたガレージの中に、初めましての車があった気がするが見なかった事にした。
中に入ると優志さんの大学の先輩であり現上司が、わざわざご挨拶にきてくれていた。
内装業者さんとか、エクステリア業者さんも出入りしている。
何故だか皆さんから生暖かい目を向けられている。
新築の匂いにわくわくしながら玄関に入った。広くて明るいリビング。キッチンも大きい。エアコンついてるのかな。梅雨時の不快な湿度を感じない。
水周りを確認して階段を上る。
「涼くんの個室はこっちにする?選んでいいよ」
3部屋が並んだ角部屋を指差す。個室嬉しいな。
ガチャリと入って驚いた。
「何これ!」
狭!ベッド入らないんですけど!?
作り付けの棚とクローゼットはある。部屋の規模に対してでかい。
「???」
なんで部屋の中にもう一個ドアがあるんだ?
恐る恐る開けるとドドンと巨大なベッドが鎮座する寝室。お邪魔します。
一瞬唖然としたが、そのままベッドを横切り、反対側へ。
あったのだ。反対側の壁にもドアが。
開けるとそこにも書斎サイズの部屋。
3つの部屋は、室内で行き来出来るように繋がっていた。
「これ、流行ってるんすか?」と聞こうとしてやめた。
「そうだよ?今の住宅の標準装備」って素知らぬ顔して言うんだ。この、真壁優志という男は。
「どうしたの?まさか個室で寝るつもりじゃないよね」
「いやいや!ベッド一つって!喧嘩した時とかどうするんすか!?俺、リビングで寝ますからね?!」
「駄目に決まってるでしょ!」
「いやいやいや、せめてベッド二つにしてくれないと気まずいでしょ」
「同じ部屋で寝るなら一台でも二台でも変わらないよ。ま、僕たち喧嘩した事ないけどー」
それもそっか!はは!ってそうじゃなくて!!
俺達の諍う声に何か不備があったのかと上司の方と内装業者さんが真っ青な顔をして部屋に飛び込んで来た。
そして、俺達の様子を見、瞬時に理解したらしい上司さんは
「お前、マジか」
といった表情で優志さんを見ている。
優志さんて、ホント 俺以外との結婚に向いてない‥‥。
【END】
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