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死んだ恋心 後編※
しおりを挟む「なぁ、啓二、何で死んじゃったの?」
そう尋ねても啓二は困ったように笑い、同じ返事しか返してくれない。
「俺が誰よりも春斗の近くにいたかったからだよ」
「そんなのわざわざ死ななくてもよかったじゃん」
夢の中での逢瀬は幸せだが少しだけ物足りない。
「もっと二人で色んな所に出掛けたりしたかったのにな⋯」
「俺が許せない」
一緒の大学に通いたかった。
啓二のいない大学など何も面白くない。
「夢の中なら誰にも邪魔されずに二人きりでいられる」
「それは、⋯っん、そう だ、けど⋯あっ」
二人だけ。陽の光も届かない、啓二しかいない世界で睦言を交わす。
幸せだが、どれだけ跡を付けられようと、どれほど精を注ぎ込まれようと、目覚めたら何も残っていないのが少しだけ寂しい。
「おい、この前より状況が悪くなってんじゃねえか」
またあの霊能力のある男に話しかけられた。
ええと、名前は何と言ったか。
「内田だ」
「内田さん、ほっといてくださいって言いませんでしたっけ?」
「⋯⋯ッ!⋯はは、他の男の名前呼んだだけでこの威嚇、ほんっとやべえのに愛されちゃってるのね春斗君は」
汗をかきながら空を睨み付ける。
「⋯⋯近付いてんな。兎に角、見ちまったもんは放っておけねえよ。俺ん家近くだからちょっと来い」
「は!?ちょっと離せって!」
手首を掴まれ引っ張られた。
「ほら見ろ。こんなのすら振り解けない位今のお前はヤバイんだって」
声帯も弱っているのか大声すら出せず、家に連れ込まれてしまう。
内田は素早く春斗を部屋に押し込めると、玄関外の虚空に向かって「入ってくんな!」と怒鳴り、乱暴に戸を閉めた。
所在なさげに佇む春斗を洗面所に招き、手と口内を清めさせた後、塩とアルコールを振り掛ける。
「少しは落ち着いたか」
「啓二、近くにいてくれてたんだ」
「おい、話を聞けって」
姿は見えないが、一緒に大学に通うという望みを叶えてくれようとしていたらしい。
嬉しくてニヤついた春斗の後頭部を内田が思い切り弾いた。
「何すんだよ!?」
「浮かれんな馬鹿が!⋯⋯ちょっと待て。お前、アイツとどこまで繋がっている?」
「どこまで、って」
「お前、アイツとやってたのか」
「やった?」
「セックスだよ。お前の体の中にアイツの精を出させたかって聞いてんの」
「⋯⋯答えたくない」
「おいマジで洒落になんねえぞ」
よく聞けと内田が深刻そうに言った。
「お前、アイツに相当深い所まで侵食されている。ここまで魅入られた人間見た事ねえよ。本っ当に危険な状態」
先程から部屋にはラップ音が響いているが、聞こえている筈の内田は気にも留めず春斗を説得にあたる。
「今からお前にとっては嫌な事を行う。後で殴ってもいいから取り敢えず大人しくしとけ」
そう言うと清酒を呷り、無理矢理春斗の唇を塞ぎ口移しで流し込んできた。
「んっ!?んんんー⋯っ!」
飲酒経験がない上、疲弊していた春斗はそれだけで酩酊状態になり抵抗する力を失った。
くたりと力の抜けた体をソファに縫い付けられ、ぼんやりと視野に広がる天井を眺めていたら内田が覆いかぶさり春斗の性器を取り出し、自らのと合わせて擦り始めた。
「ー⋯えっ、なんで⋯?!」
「一度イくからちょっと協力しろ⋯ッ」
事務的な手淫とは言え、年頃の春斗には他人から施される性技に耐えられる筈もなく、呆気なく内田の手の中で果てた。
「っ⋯、くっ、」
春斗の痴態を目の当たりにし、間を置かずに内田も精を放った。
「⋯俺の精子を此処に入れて対処する。本番はしねえが、なるべく痛みを感じないように努力はする」
「は?ここって⋯」
これで終わりではなかったのか。知らず、恐怖で体が強張る。
夢の中では啓二と体を繋げているが、実際はまだ暴かれた事のない春斗の秘部に内田の指が入ってきた。
「痛っ!⋯いたい、やめろよ」
「力抜けって」
自らの精液をまとわせ、中に塗り込むのを目的とした、愛撫とは程遠い行為。
窓がドンドンと叩かれた。
「うるせえ!悪霊如きが邪魔すんな!」
内田は舌打ちし、指を増やしていく。
「やべえな⋯想定以上に精を注ぎ込まれてんな。おい、最後までしねえって言ったが状況が変わった。いいか、これは人命救助だからな。医療行為だと思って受け入れろ」
そう言うと内田は自らの肉棒を春斗の秘部にねじ込んだ。
「痛っ、いたい、やだ、⋯あ、たすけっ⋯けいじ」
「呼ぶな!」
口を塞がれ恋人の名を呼ぶ事すら出来ない。
恋人が見ているのに他の男に犯される屈辱に、情けなくて涙が溢れた。
「ふざ⋯っけるなよこの レイプ魔、詐欺師、くそっ⋯!」
「アイツを呼ぶ以外だったら何とでも言えよ。ただし助けは絶対に求めるな。」
「やだッ、けい」
「呼ぶなっつっただろ」
開いた唇に再び清酒が流し込まれ、喉が焼けるような濃度に咳込んだ。視界が回る。飲み込めなかった清酒と唾液が口から溢れる。
「あ゛あ、あ⋯、」
泥酔し、上手く喋れない口からは無意味な喘ぎしか出てこない。
腰の下に置かれた逆流防止のクッションのせいで、中に出された内田の精液を排出する事も叶わず、胎の中が満たされた頃、春斗はようやく解放された。
散々犯された体は内田を拒絶し、同じ空間に居ることすら耐えられず、最低限身なりを整え内田がほんの数分意識を失っている間に家を飛び出した。
ふらつく体を叱咤し、どうにか自宅へ辿り着きシャワーを頭から被った。
出始めの冷水が春斗へ罰のように降り注ぐ。体温と同じ位の温度になった頃には、顔から滴るのが涙なのか判別が出来なくなった。
何度も着信があってうるさいスマホも着信拒否をするとようやく静かになった。
早く胎内の精を掻き出したいのに、知識の無い春斗には全て出し切るのは容易ではなかった。
まだ中に残っている。そのせいなのか、その晩啓二が夢に出てくる事は無く、春斗は落ち込んだ。
「啓二、俺がアイツに汚されたから出てきてくれなくなったのか?⋯⋯啓二以外に犯されてごめんなさい、ごめんなさい⋯」
何度も謝り、今夜は会いたいとこいねがう。
しかし、あれだけ手酷く抱かれたのに不思議と体が軽い。
頭の中の靄が消えたかのような、最近では無かった爽快感。
今日は一限に余裕で間に合いそうだ。
ホームで電車を待っていると、またスマホが震えた。
内田の番号は着信拒否した筈だ。見れば、春斗に内田を紹介した佐藤の名が表示されている。
切ろうとして間違って通話ボタンを押してしまった。
「⋯⋯もしもし」
『やっと出たな!おい、お前いまどこだ!?』
電話の相手は何故か内田だった。やけに焦った内田が怒鳴るから思わずスマホを耳から離した。
『まもなく、◯番線を列車が通過します。危ないですから⋯』
雑踏にすぐさま反応した内田が叫んだ。
『すぐそっから離れろ!お前に憑いている奴は既に人一人殺してんだよ!』
「⋯は?どういうこと?」
何かの間違いだ。啓二が人を殺す筈がない。
『おかしいと思ったんだよ!佐藤に聞いたらお前の恋人、同級生じゃねえか!』
「え、」
『お前にどう見えてんのか知らねえが、ソイツはどう見てもオッサンだ!お前の恋人に嫉妬して成り代わろうとしている!』
風がホームに入り込んでくる。電車が近付いてくる気配。影が射し、視界が悪くなった気がした。
見上げると、泣き顔の啓二を飲み込む得体の知れない物がすぐ側にいた。
「⋯啓、二?」
『お前の恋人を殺したのもソイツだ!』
内田が真実を告げるのと同時に春斗の体が得体の知れない物に引っ張られた。
(夢の中で会話してたのも、俺を抱いてたのも、啓二を殺したのも⋯この化け物だったのか⋯?)
バンッ!!
内田の耳には永訣の轟音が届き、春斗に電話が繋がる事はもう二度と無かった。
【END】
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