JDの憂鬱

asami

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第十五話

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 春先になってすこし暖かくなってきたころ、母から手紙がありました。
なんだろうと思ってあけてみると、最近私の家の近くにコンビニが2件できたと書いてありました。
ちょうど私の実家の酒屋の坂の上と下に、店を挟むようしてコンビニが開店したため、店の売り上げは半分近くに減ってしまったそうです。
今までは、なんとか貯金を食いつぶして仕送りをしてきたけれど、とてももう続けられないと言うことでした。
私はもっとはやく言ってくれれば無駄使いしなかったのにと思いました。
いろいろと考えてみましたが、やはりアルバイトをするしかないと思いました。
一応は名門の女子大なので家庭教師をするのが一番だと思いました。
クラブの先輩に相談してみると、先輩が家庭教師をしている学生の友達の家で、家庭教師を捜しているからと教えてくれました。
先輩の評判がよくて、同じ大学の人に来て欲しいと頼まれたそうです。
さっそく電話してみると、会いたいからこれから来て欲しいと言われました。
教えられた住所にいってみると、ずいぶんと立派なお屋敷でした。
玄関のチャイムを鳴らすと、お母様らしい女性で出てきて奥の応接間に通されました。
あらかじめ用意してきた履歴書を渡すとお母様は丁寧に目を通していました。
「今本人つれてきますから」とお母様が言うと部屋を出て行きました。
しばらくして制服姿の女の子がお母様の後から入ってきました。
名前は咲子さんといって、眼鏡をかけておとなしそうな女の子でした。
体格は小柄で胸の大きさもまだ小さくて子供っぽく見えました。
「何か聞きたいことあるなら聞きなさい」とお母様が娘さんに何度か言いましたが黙って俯いて何も言いませんでした。
私が気を利かせて「好きな音楽は何ですか」と聞いてみるとお母様が「家の娘はクラシックしか聴きません」と答えて会話になりませんでした。
そのあと出身地や、家族の事などを聞かれた後「残念だけど、家の娘とは性格が合わないから」と言って断られました。
私はがっかりして履歴書を受け取って帰り道を歩き始めました。
履歴書を見ただけなのに、娘と性格が合わないとか言われるのはどうにも納得できない話しでしたが、本当の理由は多分他にあるはずだと気が付きました。
きっと私が東京出身でないから嫌われたんだと思うと、なんだか悲しくて涙が出そうになりました。
大通りに出ようとして角を曲がるとちょうど目の前に喫茶店があるのが目に入りました。
一休みしてコーヒーを飲んでから席を立とうとすると、店の奥に「アルバイト募集」の張り紙が見えました。
これはちょうどいいと思ってさっそく店のマスターに声を掛けて「私アルバイトしたいんですけど」と言いながら履歴書を渡しました。
マスターはちょっとだけ履歴書をみただけで「ちょうど良かった、すぐにでも働いて貰えるかな」と言ってくれたので私は安心して胸が楽になりました。
翌日から夕方2時間ほどアルバイトすることになりました。



 近くに勤め先があるらしくて、毎日コーヒーを飲みにくる常連のお客さん何人かいました。
そのうちの一人が、まだ店に客がほかにいないとき、いろいろと話しかけてきました。
近所の会社の社長さんで、自分の会社だから好きなときにお茶を飲みにくるのだと言っていました。
パッケージ用品の卸をしている会社だそうでした。
「学校はどこ」とかいろいろ聞かれてから、「今日店が終わった後一緒に飲みにいかないか」と誘われました。
私はどう返事をしていいのか判らなくて、しばらく黙ったまま俯いていました。
「俺が奢るからいいだろう、接待費で落とせるんだ。一人で飲むより二人で飲む方が楽しいからな」
「それとも今夜は彼氏とデートの約束でもあるのかな、そうなんだろうデートの後はラブホテルか」と社長さんに言われて私は思わず「私今彼氏いません」と答えてしまいました。
「それだったら今夜俺と付き合っても困ることは無いじゃないか、いやちょうどよかった」と言われてまた困ってしまいました。
私はすぐに断りましたが、お客さんはあとで迎えに来ると言って帰りました。
店が終わって帰ろうとすると昼間のお客さんが、店の前にたっていました。
私は怖くなって裏口からそっと逃げるようにして帰りました。
しかし、アパートの近くまでくると、後からつけられたのに気がつきました。
私はあわてて小走りで駆け出しました。



 私はもう間に合わないと思い公園に走り込むと公園のトイレに駆け込みました。
トイレのドアを閉めようとしましたが手が震えて鍵がなかなかかかりませんでした。
社長さんはドアを力任せに開けると、私の逃げ込んだトイレに私を押し込めるようにして入ってきました。
社長さんは私の体を後ろから抱え込んで押さえつけてきました。
熱く煮えたぎった欲望を前にして、私の心は逆らう気力を失いました。
私の期待を裏切るように、ゆっくりとした波が私の感触を楽しむように打ち寄せてきました。
しだいに激しさを増す欲望には抵抗する気力もなくなるほどの荒々しさがありました。
激しい渦の流れに私の体は飲み込まれ、体ごと深く沈み込んで浮き上がる望みもなくなりました。
支配者に従属するのが女の宿命だと私は心のそこから思い知らされました。
このままずっと続くのなら、私の体は支配者に従うしかないと覚悟を決めました。
望みを失って泣き叫ぶ私の身体は、最後の快楽で一杯に満たされました。
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