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第八話

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 今の世界の自宅から歩いて25分くらいのところにある倉庫のバイトに応募した。和食の製造所のようだった。ちょっと調べてみるとフォークリフトでの作業もあるらしく資格のある自分にとってはチャンスかもと思った。(そう思って何度も応募しては落ちているわけなのだが)わけあって夜遅い時間に面接してもらうことになった。そこでフォークリフトについて聞いてみると衝撃の答えが返ってきたのだった。

「うちはプラッター(リーチ式のフォークリフト)しか置いてないよ。経験ある?」

リーチは一度も乗ったことがなかったのである。教習所ではカウンター式という座って乗るタイプでしか実技を受けていない、それを正直に伝えた時点でこの勝負は決まっていたのだろう。(もしこの会社のフォークリフトがカウンターだったとしても結果が変わっていたとも思えないが……)

 バイトととはちょっと違うのかもしれないが非正規雇用という意味では同じ派遣の仕事にも応募した。フォークリフト作業で時給は1300円、研修期間や実務経験なしの場合は1100円スタートととかだったと思う。自宅近くのファーストフード店で派遣元の人事と待ち合わせてフォークリフトの講習証明書と履歴書を渡す。(一応その際飲み物はおごってもらった)本来は履歴書を派遣元が確認するのは違法だとも聞いたことがあるのだがこのときはそうだった。派遣元で応募者の中から選考を行うとも言っていた。派遣の仕事はそういうのも違法だと聞いていたがこれも良いのだろうか?
結局そのまま連絡が来ず終わった。

 性懲りもなくまた洗車のバイト、自宅から20分ほどでフルタイムじゃなく週数回で時給も千数百円ぐらいならまあ何でも良いくらいの気持ちだったからである。勤務地まで歩いてみるとこれが結構疲れる、やはり歩いて20分以上はちときつい、もうこの時点でしんどくなってしまいあまりやる気がなかったためか面接はかなり適当に答えてたと思う、そして当然のように

「いつから入れる?」

なんてことは聞かれることもなく

「後日連絡する。」

と言われて次の日の朝にすぐ採用見送りの電話が来た。もうバイトに落ちるのがルーティーンワークになってきた頃のこと。

「そんなもんルーティーンワークにしてるんじゃないわよ、本気で受かろうとしなさい!」
ビリビリビリビリビリリリィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

「うぐぉああああああああああああああああああ、だってしかたないだるぅおああああああああああああああああああああああああ……」
不採用にされて電撃を食らうまでがルーティーンワークで状態である。
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