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第十五話

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 フォークリフト運転士のバイトに応募したときのことである。フォークリフトと言っても今までのカウンター式やリーチ式のものとも違う、大型の海上コンテナを運ぶようなものである。9時間半拘束8時間労働(もちろん残業は別であり)月の休みは6日とかで研修期間の日当は当時最低時給+数円レベルの7700円ほどとまあ求人からしてブラック感がすごかったが応募するだけしてみた。途中電車を乗り間違えたものの速めに出発していたことが功を奏したのか30分近く前に到着できた。早く来すぎたため迷惑だったかもと思われたが

「こんなに早く来ていただきありがとうございます。」

と面接官の一人にお礼を言われた。まあなんか嫌味っぽくもあったがそのまま前倒しで面接を進めてくれたのは良かったと思う。面接官は5人ほどいて部門ごとのお偉いさんのようだった。履歴書を見ながら色々聞かれ途中変なことを言ってしまい笑われたりもした。しかしその場で落とすような感じにはならず今度実際に乗ってみてくれと言われた。そこは仕事の現場ではなくかなり離れた事務所であったためか現場の雰囲気をつかむためには一度行って体験しないと難しいとのこと……だったら最初からそこで面接すれば良いだろと思った。とはいえまあ体験できるなら二度手間だがやっておくに越したことはないため了承したのだがその後、メールで体験予定でしたが現状それが難しく遠くから見学するだけになりました。と送ってきた。いやそれじゃ体験も現場の雰囲気もまったくわからないだろうに。交通費も出ないのにそこまでして遠くへ行く意味あるか! と思ってそのことを言ったらではこの件については白紙にさせていただきます。また次に選考する機会があってもその時の採用はかなり厳しくなります。と脅すようなことを言われた。すぐやめる人が多くて困っていると面接で語っていたがそりゃ自分たちのせいだろとも思った。

 住んでるところから15分足らずの場所で求人が出ていた。何やら工場のようなところで廃棄物等の仕分け作業をするものらしい。時給は1200円とまあまあで一日2時間~、週3日からでOKということで肉体労働っぽかったが短時間で良いというのは魅力だったので応募してみることにした。ウェブ応募から一時間ほどで電話連絡が返ってきてすぐさま面接へと向かう……工場が沢山連なる場所でグーグルマップじゃ看板すら確認できなかったが実査近くまで行ってみてようやくそれが確認できた。面接を行った事務所はとても狭く人一人まともに通れないほどのものだった。そんなところに現場作業員が出入りしており、粉塵が舞う時点で正直ここで働きたいという気は失せていたのでもうその時点であまり受かりたい! という気持ちで臨めなくなっていた。仕事内容を改めて聞くとやはりかなりきつくて汚い場所での力仕事みたいで、とても自分にはできそうもなかった。当然数日で不採用の連絡が来たのだが、ショックはなくむしろ安心してしまった自分がいたのは言うまでもない。

「フォークリフトのやつは見学行っとけば採用されたかもしれないでしょうが!!」

ビリビリビリビリリイィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!

嫌模試採用されたとして確実に続けられなかったのは明白だろうに……。
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