77 / 144
第七章:新しい魔術士とそのパートナーの歓迎会
75 僕たちは催事企画部の人に会いに行く
しおりを挟む
僕とスタイズさんは移動用の魔道生物に乗って、催事企画部がある建物を目指している。
一昨日は医療棟から割と近くにある居住区まで移動しただけで、昨日は居住区の近くにある第五転送機まで歩いたぐらい。
魔術研究所の敷地内を本格的に移動するのはこれが初めてだ。
とはいえ、移動用の魔道生物に目的地を伝えると自動で向かってくれるので、初めてでも迷子になる心配はない。
それに障害物や段差があれば自動で避けてくれるので、スタイズさんが手綱を持っているのは、姿勢を保つ為や速度調整の意味が大きいのかもしれない。
起伏が少ない草原には黄色い花の絨毯が広がり、小さな木が点在している。
澄み渡る青空、時々聞こえてくる小鳥のさえずり、穏やかに吹く風は、僕を清々しい気分にさせてくれるようだ。
しばらくの間、平原を爆走していると、小さな林の先に石造りの建物が見えてきた。
移動用の魔道生物の頭に付いている二つの小さな角が小刻みに動いているのは、目的地が近付いてきた合図らしい。
催事企画部……パートナの面談をした一人以外は、初めて顔を合わせる人ばかりだ。
そもそも面談をした人だって、一か月ほど前に少しの間だけ話をしただけなので、あまり覚えていないのだけれど。
色々な催しを計画する部署なのだから、やっぱり底抜けに明るくて元気な人が多いのだろうか?
僕は大勢でワアアアと盛り上がることが苦手なので、そういう人たちの勢いに付いていけるのか不安だな……
建物の前に、茶髪の女性が両手を振りながら立っている。
何か見覚えがあるなと思って考えてみると、以前パートナーの面談をした人だということに気が付いた。
僕とスタイズさんが移動用の魔道生物から降りると、彼女は僕たちに向かって頭を深く下げた。
「セルテ様、お久しぶりです! 催事企画部、道具管理課のアロイーズです! 少し前に医務室から連絡がありまして、お待ちしていました!!」
満面の笑顔でハキハキと話す姿……そういえば、面談の時もこんな感じだった気がする。
「お、おひさしぶりです。セルテです。面談の時はその……失礼しました……」
彼女と面談したのは魔術士になって割とすぐで、精神的に余裕が無い時だった。
今思えば、かなりやる気のない感じの失礼な態度だったと思う。
僕はお詫びしつつ頭を下げた。
けれどアロイーズさんは胸のあたりで両手をグッと握り、魔術士がそんな卑屈になる必要はない、ドーンと偉そうに構えていれば良い、と言ったんだ。
魔術士は国に三十人しかいないから、皆にとっては凄い存在なんだろうとは思う。
とはいえ、王族や貴族の生まれならともかく、少し前までただの平民だった僕が大人相手に偉ぶるのは、かなり抵抗感がある。
返事が出来ずにいると、スタイズさんが右手をアロイーズさんの方に差し出した。
「アロイーズさん、セルテ様はとても謙虚で優しいお方だ。突然そんなことを言われても、そのようには出来ないだろう」
スタイズさんの言葉で、アロイーズさんは両手で自分の口を塞ぎ、両目をぎゅっと閉じた後、深く頭を下げた。
「すみません! 私如きがセルテ様に偉そうに言ってしまって、本当に失礼しました!! この前の面談の後、皆に面談での様子を話したら『少し前に親を亡くした子供に対して配慮が無い』って怒られてしまって……私何かと失言が多いらしくて、別室で面談の様子を見ていたエイシア様に認められなかったのも、当然だと思います!」
……そういえば、面談の後に看護士のライナートさんが言っていたのを思い出した。
面談した結果僕が直接断ったという体にすると、今後関わるであろう職員さんとの関係に影響が出る可能性があるので、「エイシア様が認めなかった」ということにすると。
スタイズさんは、アロイーズさんに頭を上げるように促した。
「アロイーズさん。歓迎会の準備で忙しいだろうに、我々の対応で時間を取らせてしまって申し訳ない。早速だが、案内してもらえないだろうか?」
「は、はい! あっ、セルテ様のパートナーのスタイズ様ですよね!? ご挨拶が遅れました!! 初めまして! よろしくお願いします!! 何日か前に部長から顔と名前を覚えるようにと写真を見せられて、男前だな~と思っていましたが、実物はもっと素敵ですね!!!」
彼女の言う、スタイズさんは素敵……その言葉には激しく同意だ。
嬉しくなって彼の方を見ると、右手で頭をかいて、少し照れた様子ではにかんでいる。
「ありがとう。あなたのような可愛らしいお嬢さんにそう言って貰えるなんて、光栄だよ。ははは」
するとアロイーズさんは笑顔でキャー!!と叫んで、その場で何度も飛び跳ねたんだ。
「ちょっとスタイズ様! 可愛らしいだなんて、もうっ!! その言葉で十日は元気でいられますよ!!」
うーん、元気な人だな……
明るくて良い人なんだろうけど、常にこんな調子なら、一緒にいて疲れそうだなと思ってしまった。
……ふと思った。
僕、スタイズさんのことを格好良いとか思っているけれど、彼に伝えたことがあったっけ???
一昨日は医療棟から割と近くにある居住区まで移動しただけで、昨日は居住区の近くにある第五転送機まで歩いたぐらい。
魔術研究所の敷地内を本格的に移動するのはこれが初めてだ。
とはいえ、移動用の魔道生物に目的地を伝えると自動で向かってくれるので、初めてでも迷子になる心配はない。
それに障害物や段差があれば自動で避けてくれるので、スタイズさんが手綱を持っているのは、姿勢を保つ為や速度調整の意味が大きいのかもしれない。
起伏が少ない草原には黄色い花の絨毯が広がり、小さな木が点在している。
澄み渡る青空、時々聞こえてくる小鳥のさえずり、穏やかに吹く風は、僕を清々しい気分にさせてくれるようだ。
しばらくの間、平原を爆走していると、小さな林の先に石造りの建物が見えてきた。
移動用の魔道生物の頭に付いている二つの小さな角が小刻みに動いているのは、目的地が近付いてきた合図らしい。
催事企画部……パートナの面談をした一人以外は、初めて顔を合わせる人ばかりだ。
そもそも面談をした人だって、一か月ほど前に少しの間だけ話をしただけなので、あまり覚えていないのだけれど。
色々な催しを計画する部署なのだから、やっぱり底抜けに明るくて元気な人が多いのだろうか?
僕は大勢でワアアアと盛り上がることが苦手なので、そういう人たちの勢いに付いていけるのか不安だな……
建物の前に、茶髪の女性が両手を振りながら立っている。
何か見覚えがあるなと思って考えてみると、以前パートナーの面談をした人だということに気が付いた。
僕とスタイズさんが移動用の魔道生物から降りると、彼女は僕たちに向かって頭を深く下げた。
「セルテ様、お久しぶりです! 催事企画部、道具管理課のアロイーズです! 少し前に医務室から連絡がありまして、お待ちしていました!!」
満面の笑顔でハキハキと話す姿……そういえば、面談の時もこんな感じだった気がする。
「お、おひさしぶりです。セルテです。面談の時はその……失礼しました……」
彼女と面談したのは魔術士になって割とすぐで、精神的に余裕が無い時だった。
今思えば、かなりやる気のない感じの失礼な態度だったと思う。
僕はお詫びしつつ頭を下げた。
けれどアロイーズさんは胸のあたりで両手をグッと握り、魔術士がそんな卑屈になる必要はない、ドーンと偉そうに構えていれば良い、と言ったんだ。
魔術士は国に三十人しかいないから、皆にとっては凄い存在なんだろうとは思う。
とはいえ、王族や貴族の生まれならともかく、少し前までただの平民だった僕が大人相手に偉ぶるのは、かなり抵抗感がある。
返事が出来ずにいると、スタイズさんが右手をアロイーズさんの方に差し出した。
「アロイーズさん、セルテ様はとても謙虚で優しいお方だ。突然そんなことを言われても、そのようには出来ないだろう」
スタイズさんの言葉で、アロイーズさんは両手で自分の口を塞ぎ、両目をぎゅっと閉じた後、深く頭を下げた。
「すみません! 私如きがセルテ様に偉そうに言ってしまって、本当に失礼しました!! この前の面談の後、皆に面談での様子を話したら『少し前に親を亡くした子供に対して配慮が無い』って怒られてしまって……私何かと失言が多いらしくて、別室で面談の様子を見ていたエイシア様に認められなかったのも、当然だと思います!」
……そういえば、面談の後に看護士のライナートさんが言っていたのを思い出した。
面談した結果僕が直接断ったという体にすると、今後関わるであろう職員さんとの関係に影響が出る可能性があるので、「エイシア様が認めなかった」ということにすると。
スタイズさんは、アロイーズさんに頭を上げるように促した。
「アロイーズさん。歓迎会の準備で忙しいだろうに、我々の対応で時間を取らせてしまって申し訳ない。早速だが、案内してもらえないだろうか?」
「は、はい! あっ、セルテ様のパートナーのスタイズ様ですよね!? ご挨拶が遅れました!! 初めまして! よろしくお願いします!! 何日か前に部長から顔と名前を覚えるようにと写真を見せられて、男前だな~と思っていましたが、実物はもっと素敵ですね!!!」
彼女の言う、スタイズさんは素敵……その言葉には激しく同意だ。
嬉しくなって彼の方を見ると、右手で頭をかいて、少し照れた様子ではにかんでいる。
「ありがとう。あなたのような可愛らしいお嬢さんにそう言って貰えるなんて、光栄だよ。ははは」
するとアロイーズさんは笑顔でキャー!!と叫んで、その場で何度も飛び跳ねたんだ。
「ちょっとスタイズ様! 可愛らしいだなんて、もうっ!! その言葉で十日は元気でいられますよ!!」
うーん、元気な人だな……
明るくて良い人なんだろうけど、常にこんな調子なら、一緒にいて疲れそうだなと思ってしまった。
……ふと思った。
僕、スタイズさんのことを格好良いとか思っているけれど、彼に伝えたことがあったっけ???
26
あなたにおすすめの小説
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー
夏目碧央
BL
強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。
一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。
僕に双子の義兄が出来まして
サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。
そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。
ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。
…仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。
え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる