異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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留学帰国後 〜王宮編〜

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真紅のドレスに身を包んだ女神が私の目の前に降臨。
うっとりするくらいの微笑みを浮かべ、シャンパンを取る。



「どうかな?姫?私の姿は」

「うふふふふ、もうバッチリ。シャンデリアの中で見ると違うわね」

「後はダンスだな?」

「楽しみだわ。フレンさんにも『素敵です』って伝えてね」

「伝えておこう。帰りは私が護衛するから待つように」

「わかったわ」



グラスを2つ取り、フレンさんの元へ戻った。
お似合いの夫婦よねえ。美男美女とはこの事よ。でもフレンさんには愛人いるのよね。子供の事あるしね。仕方ないっちゃないのかな。

タロットワーク別邸に帰った私を迎えたのは、もちろんゼクスさんとセバスさん。そしてアナスタシアだった。
前に見たよりもアナスタシアの顔は幾分和らいでいて、やはり無理矢理にでもクレメンス邸から離したのは正解だったのかもと思った。

戻ってきてから、ゼクスさんとも色々と話をした。
でも1番話をしたのは、アナスタシアとだったかもしれない。込み入った話をしていた訳ではないけれど、アナスタシアの顔は柔らかくて、とてもリラックスしていた。
本人もそこまで気付いてはいなかったのかもしれないが、あの屋敷にいる事で精神的に何か思い詰めていたのだろうなと思った。

フレンさんとは騎士団詰所で毎日会うから、全く顔を合わせない訳でもなく、関係は良好だといえた。
むしろなんだかいい関係なのでは…?と思わせる事もあり、私もちょっとほっとしたものだ。引き裂いた、なんて思いたくないし。

しかし毎朝送り出す時にアナスタシアは私の頬にキスをするのだが…むしろ私が新妻なのか…?



「さてさて、ちょっと働きますかね」

「あまり無理しないでくださいよぉコーニー」
「グラスを下げる以外の事はしないでくださいね」

「わかってまーす」



あまり手を出して本職のメイドさん達の仕事を奪う訳にもいかない。私の目的はこっそりパーティーを見ることなのだから。



********************



夜会の途中、フロアの一角がざわりと空気が変わった。

そっと視線を向ければ、ゼクスさんが入ってきた所だった。
周りの貴族達はすっと頭を下げ、ゼクスさんに道を譲る。それはまるで決まっている事のようで。

軽く手を挙げてそれを制するゼクスさんの姿も、いつもの事のように決まったような仕草だった。

ゆったりと歩きながらもたくさんの人から挨拶を受け取って、会場内を歩く。
ゼクスさんが足を止めたのは国王陛下の御前。美しく流れるような礼をして、話をしている。きっとシリス王子やエリーに祝いを告げているのだろう。

ゼクスさんもシリス王子とエリーの婚約を後押しした1人だ。この情勢で王太子妃に相応しいのはローザリア公爵令嬢を置いて他にいないと意を示し、他の貴族達の不満を封じたと言う。
…ていうか冷静に考えてもそれしかないと思うけどね、私も。

『コーネリアがその気ならシリス王子の婚約者に押し込むがいいのかな?』と笑いながら言っていたっけ。確かにゼクスさんの権力チカラがあればそれは容易に叶えられるのだろう。
でも私は笑って首を横に振った。いつか自分の場所元の世界に戻る私が王太子妃になんてありえない。彼の隣に並ぶのはエリーのような女性が相応しいのだから。

エリー…ローザリア公爵令嬢が王太子妃、正妃となり、他に数人…2~3人の貴族令嬢を側妃に据える。
それはもう決定事項であり、側妃候補の令嬢達にも非公式に通達が行っているらしい。恐らくここ1~2年の間に順番に話が上がってくるのだろう。
もちろん、シリス王子とエリーの婚姻が済んだ後で、だけど。

私もだけど、エリーも学園を卒業する歳となる。年齢としては18歳。貴族としては結婚をするお年頃だ。
他の女生徒達も卒業すると同時に婚約・結婚する子も多いだろう。
エリーも同様。学園を卒業と同時に王太子妃としてシリス王子と婚姻を結ぶ事となる。

そういえば、ローザリア公爵家はエリーのお父さんからお兄さんに当主が変わったそうだ。
あのお父さんと若い後妻さんは、ローザリア公爵領へ隠居したとの事。エリーが気にしていたものねえ。当主交代もすんなりと済んだのだそうだ(ターニャ談)



「いかがですか?夜会は」

「変装バッチリですセバスさん」

「見抜かれるような変装を施すような技術はタロットワークにはございませんので」



フフフ、と満足げに微笑むセバスさん。
ライラと同じくどこから来たのか分からない技術。もう気にしても仕方がない…こういうものなんだこの人達は…



「旦那様も話に来たいようでしたが、そんな事をすれば注目を集めますので御遠慮していただきました」

「うーんその方が無難ですよね。ゼクスさんは目立ちますから」



私の視線の先。そこにはゼクスレン・タロットワークとアナスタシア・タロットワークの2人が話す場があった。
そこだけなんだか切り取られたかのように別の場所のようだった。周りに人は沢山いるのに、なんだか空気が違うかのよう。
フレンさんも緊張しているみたい?やっぱり妻の兄、というだけじゃないのかもしれないなあ。

セバスさんは『戻りますが、くれぐれもご無理はなさいませんように。コーネリア様』と囁いて戻った。

うーむ…セバスさんもイケボ…(ぽっ)



********************



広間から離れ、ちょっと御手洗へ。
流石に立ちっぱなしは辛いし、メイドさん達も交代で小休憩を取ったりする。私も水分補給と軽食をいただきに行くことにした。

宛てがわれた小部屋でひとり休憩。
流石にメイド姿なので使用人用の小部屋だが。軽食とはいえ料理はいいものを出してくれている。まあ作ってるのマートンだからな…

食後のお茶で寛いでいると、何やら男女の声がしているのが耳に届いた。
…そういや、この部屋の裏って、さっきの広場の外庭じゃない?
私はそっと気配を消して(本当に消せているかは分からない)、聞き耳を立てることにした。だって気になるじゃなーい?



「─────ちくださいな、───様」

「申し訳ないが、私は────」



迫っているのは女性の模様。男性はあんまりイケイケではないらしい。やっぱしこういう時は肉食系女子の本領発揮よね?



「前からお慕いしておりましたわ、カイナス様」

「困りましたね、アントン嬢。お誘いはお断りしたと思いますが・・・」

「わたくし、諦めきれませんの・・・ずっと、ずっとお慕いしておりましたもの。ディオーネ様との婚約を破棄したとお聞きしてから、ずっと・・・」

「アントン嬢・・・私は、もう、誰とも」

「では何故?何故、また、夜会へ出てきてくださいましたの?」

「それは───」

「今すぐ、でなくともいいのです。避けないでくださいまし。
カイナス様、貴方はまだわたくしの事を何もご存知ありませんでしょう?」

「それはそうですが・・・」

「わたくしの事を少しずつでいいのです。知ってください。それからお返事をください。何も知らないまま、知ろうとなさらないまま拒絶しないでください」



おーーーっと!?迫られているのはカイナスさんでした!
やっぱりなーーー!こんないい男ほっとかないってやっぱり!
しかも何?聞いてると結構グイグイ来るじゃないの!

こ  れ  は  お  も  し  ろ  く  な  っ  て  ま  い  り  ま  し  た  よ  ?

───残念ながらこの続きは、2人が移動してしまったので聞けませんでした、不完全燃焼だわ…

ターニャに頼んでカイナスさんの恋模様を探ってきてもらわねばいかんなこりゃ…

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