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2度目の夏至祭
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しおりを挟む部屋を出ると、そこには先程までより厳しい顔をした近衛騎士が。
私は王国騎士団の騎士礼をし、彼の言葉を待つ。
「ディーナ・クロフト、で間違いないか?」
「は、王国騎士団第2中隊所属、ディーナ・クロフトであります」
「本日は騎士として姫に付いている訳では無いのだな」
「はい、私個人としてです。本日は休暇を貰っていますので」
「そうか。だが、何かあったら姫の護衛を頼みたい。任せてもいいか」
「元よりそのつもりです。彼女は私にとってかけがえのない友人の1人でもありますから」
「・・・なら、安心だ。近衛騎士団の人間には話を通しているが、他の王国騎士団までは話していない。まあ、持ち場が違うから接触する事もないと思うが。
万が一の場合は、タロットワークの『影』が御身をお守りすることになるだろう。そうならないよう、気をつけてくれ」
「承知しております」
「では、頼む」
「はっ」
近衛騎士団の騎士礼を返し、グランツ様は踵を返す。
…しかし、素晴らしく無駄のない均整のとれた体付きだ。私もあのように美しい筋肉の付け方をしたいものだ。
後ろからついて行く時は思わず見惚れてしまったが…
ああいった尊敬出来る殿方にこそ、嫁ぎたいと思うものだ。
一呼吸付いて、部屋へ戻る。
すると、私の大切な友人でもあり、今後忠誠を誓っていく事にもなるだろう姫が詰め寄ってくる。
「ディーナっ!ねえねえどうだったの?ドキドキしたよね?ね?」
「ディーナ、適当にあしらいなさいよ?この子、さっきの騎士様とディーナの間に恋愛感情が!?とか思ってるだけだから」
「ひどいキャズっ!だってディーナもうっとり見てたし!
あっでもディーナってケリーと付き合ってるんでしょ?そっちの話も聞きたい!どーなの!?」
「まあまあ落ち着いてくれ、コズエ」
聞いてない!聞きたい!と興味津々のコズエ。
それを呆れたように見ているキャズ。
全く、この2人といると退屈しない。
********************
「え、付き合って、ないの?」
「なーんだ、嘘だったの?あれ」
「いや、嘘・・・と言えばそうだな、真実ではないんだ。
そもそも、私の父親が煩くてね。騎士団に入る事も難癖を付けていたんだが、最後には『好きな奴がいるのか!?』とか『見合い相手を見繕ったから帰ってこい』と煩くて」
「領地に帰るの止めたんだものね?お父さん心配だったのかな」
「そうなんじゃない?一人娘だしね。弟いても、やっぱり娘って違うもんよ」
「そうなのかもな。私も子供の時は体が弱くてな。それで剣術を始めたらぐんぐん健康になって。それで今の私があるんだ。だが、父上はその頃の私の事が頭にあるみたいなんだ、いつまで経ってもね。母上に毎回どやされているようだけど」
どうやらディーナの母上はディーナそっくりらしい。
腕も立ち、気概もしっかりした女剣士だとか。
「ケリーも私同様、王国騎士団に入ってな。冒険者ギルドからもスカウトが来ていたな。キャズも知っているだろう?」
「ああ、確かにね。ギルマスはまだケリーをスカウトするの諦めてないみたいよ?たまに私にも『どうにかならないか?』って聞きに来るもの。
こればっかりは本人のやる気次第だし、どうこうできないわよね?」
「ケリーは近衛騎士団入団も狙っているからな。冒険者になるのは・・・その後か?
と、話が逸れたな。ケリーはあの調子だから、王国騎士団でもかなり頭角を現してるんだ。だからっていうのもあるが、女性関係が派手でね。本人にその気がなくても」
「あっ、想像つく」
ケリーは元々ハンサムさんだ。話を聞くと背も伸び、体格もガッチリしてきていて、細マッチョになっているようだ。
しかも平民。貴族出身の騎士が多い中、平民出身の騎士は数えるくらいしかいない。しかも近衛騎士団入団を狙うくらいだから、腕も立つのだろう。
ディーナも女性ながら同期だけでなく数年違いの騎士も相手にならないくらいの実力があり、2人とも期待の新人と言われているようだ。
「で、私もケリーも困っていてね。ならお互いがお互いの相手となれば、外野は静まるんじゃないかって」
「ああ~そのパターンかあ~」
「ケリーってモテるけどちやほやされるの嫌いよね。硬派というかなんというか。女性の好みが高いのかしらね」
「さあな?私もケリーはいい男だとは思うが、まだ恋に溺れるよりも自分を試したいという気持ちが強いんだ。何処まで行けるか自分を試してみたい。・・・ケリーも同じだろう」
「え、じゃあジェイクさん何だって?」
「ああ、ここの説明をね。後、下は王国騎士団が警備に立つから何かあったら私が話を通せと」
「ふうん、なるほどね」
「でも確かにグランツ様は素敵だったぞ?あんなふうに美しい筋肉の付き方をしたいものだ。かなり腕の立つ御仁だな」
「「そっちか」」
ケリーとディーナ…並んだら美男美女だろうな…
今度王国騎士団に見学に行ってみようかな?近衛騎士団みたいに観戦できる試合とかないのかしら。
あ、でも私『コーネリア姫』にならないといけないんだっけ。これらお忍び作戦しかないか…?セバス許してくれるかな?
********************
話終わり、互いにたわいない会話をまた楽しんでいると、場内がスっと静まり始めた。
何かな?と思っているとキャズが『しっ』と唇に指を当てて静かにするように教えてくれる。
ディーナは下だよ、と手振りで教えてくれる。
2人の仕草に、下を見ると、講堂横の両扉より、新婚夫婦が揃って入場する所だった。静かに音楽が鳴り、まるで結婚式の入場だ。
合同結婚式に参加するのは、皆、平民の夫婦だ。
貴族の結婚式は、向こうの結婚式のようなものと同じ。彼等は神殿に出向き、祝福を得る。
けれど平民は結婚の度に神殿で祝福を受けるようなことはできない。機会もそうだが、何より納めるべき金額が途方もないのだという。それでも裕福な環境にある平民は、貴族と同じようにするそうだ。
そこでこの合同結婚式だ。年に一度、夏至祭のお祭りとして皆に祝福を送ることになっているのだ。
皆、思い思いの綺麗な服をまとい、幸せそうに寄り添っている。服装はどれも少しオシャレ着、といった具合か。そして新婦は皆、ベールを付けている。
…実はアレ、私が2年前にチラ見した時に『なんで結婚式なのにベールないの?』と聞いてしまったのが始まりで、メグが目敏く…いや耳聡くキャッチ。そこから色々と聞かれ、流行らせたらしい。
これまでは頭に花のティアラを付けるのが主流だったのだが、今はベールに花飾りをつける、という清楚な佇まいがヒットしている。バートン商会…ウハウハだろうな…
「ほら、来たわよ?『星姫』達が」
キャズが指す方向。
ステージの両端から、静かに2人の『星姫』が入ってきた。
2人はステージ中央に向かい、ゆっくりと歩いていく。
女神と同じドレスをまとい、花飾りで髪を彩り、本当に絵から抜け出てきたような2人だ。
中央には祭壇があり、『星姫』はそこから新郎新婦に祝福を送る…というものらしい。
「ん?」
「なによ」
「いや、目の錯覚かな?なんか一瞬アリシアさんの足元光ったような?気が?しなくもない?」
「なんで言いきれないのよ!」
「だってあのドレス、裾が長くて!」
アリシアさんと、巫女頭さんが来ているドレスは裾が長く、引きずるようにして歩いている。
しかし、アリシアさんの歩いていた足元、なんとなくなのだが光った?ような?気も?
照明とか魔法光とか見間違いと言われたら『そうか』と言ってしまう。だって遠いしさ。
「ディーナ、何か見えた?」
「どうだろう?そう言われれば一瞬チカッとして見えたが、私は魔法で照らされた照明が反射したのかと思っていたからな」
まあ気の所為よ、と言われてしまえばもう検証する事もできない。ステージ上の2人はもう、中央祭壇に付き、儀式は始まっている。
司祭様のお言葉や、祈りの言葉、祝いの言葉が送られている。
この後、『星姫』から祝福だ。私はさっきの事も忘れ、楽しみにしていたのだ。
しかし…やはりフラグは立っていた…
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