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2度目の夏至祭
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しおりを挟む合同結婚式もクライマックス。
しかし、そこでハプニングが起きた。
アリシアさんの祝福魔法が、発動しない。
「え?なんで?」
「わかんないわよそんなの!」
「いつもできてたんだろう?去年だって見事に務めあげていたぞ?」
でも現実に、魔法が発動していない。
遠目にもわかる、アリシアさんの狼狽している姿。
一体どうなってるの?
********************
『星姫』の祝福は、ひとりひとり行われる。
そのあと、同時に大掛かりに全員の頭上に光が降り注ぐ、というものだ。
この祝福魔法、もちろん神聖魔法なので、聖属性の魔力がなければ使えない。
普段も神殿では、この祝福魔法を受けに来る人はいる。子供が産まれたりする時に多い。後は貴族の結婚式などだ。
他にも浄化魔法あたりも需要が多い。病気の時なんかにね。
今回、順番としてはアリシアさん、巫女頭さん、そして2人同時に全員へ、という形のはず。
だけど、今アリシアさんが祝福魔法を使おうとしているが発動しない。いつもなら祈りを捧げた手の周りに光の粒が集まり…となるはずが、全くだ。
周りもおかしい事に気がついたのか、すこしざわめきだした。
アリシアさんは一生懸命魔法を発動させようとしているみたいだが…
「どうなるのよ、これ」
「『星姫』から祝福が行われない・・・となれば、今年の結婚した人は女神からの恩恵が受けられない、という事になるな。
そうなると、神殿の面目もだが、アリシアさんも責められないとはいえない」
「何か・・・なんだろ?変?ん?・・・『能力値解析』」
特に目的があったわけでもない。ただ、魔法が使えなくなった…つまり、何らかのステータス異常?とゲーム脳が囁いた。
もしかしてPOW減少?なーんてね!
「コズエ?なにその魔法」
「あまり聞かない魔法だな?使えるのか?」
「え、結構役に・・・って、ぎゃっ」
ありえない、POWが3?それって最低値とかじゃなかった?
アリシアさんのステータスがそんな低いわけない、これは何らかの妨害を受けたって事?
ふと目の前のボックス席を見た。
そこで私は見た。そこにいた巫女達が皆、くすくすと嫌な笑いを浮かべているのを。困っているアリシアさんを見下ろすその顔を。
「コズエ?何見て・・・って、何よあいつら」
「どうし・・・。なんで笑っているんだ?まさか、何かしたのか?彼女達が?」
「絶対そうよ!じゃなきゃなんでこんな事になって笑ってるのよあいつら!シメてくるわ!」
「待てキャズ!証拠がない!そんな事したら問題になるぞ!」
「だってディーナ!・・・ん?コズエ静かね?」
「それにしてもそうだな?どうした?」
「巫女頭、も笑ってる?」
「え?」
ステージの上にいるもう1人の『星姫』。
彼女は心底不思議そうにアリシアさんを見ている。その顔に見えるのは、不審と、苛立ち。
あれが演技だとしたら女優だけど!
でもあの顔に、あの態度に嘘はないと信じたい。
「彼女は知らないのかしら?」
「あの様子から見るとその様だな?しかし目の前の巫女達は確実に黒だと思うが」
「やっぱシメるしかないわね」
「だから待てキャズ」
「・・・やっちゃうか?」
「さすがコズエよ!あいつら平手じゃ許さないわ!」
「ちょっと待てコズエまで!キャズもだ!落ち着け!」
本当に殴り込みに行きそうなキャズ。それをなんとか諌めるディーナ。意外と冷静そうなキャズだが、彼女は頑張る人の味方だ。ああいったこそこそ悪戯をするような輩を許さない。
しかし、早くなんとかしないといけないのはアリシアさんだ。
今はまだ場を取り繕っているが、早く祝福魔法を披露しないとここは収まらない。
「セバス、いる?」
「はい、ここに。コーネリア様」
「使っていい?わからないように誤魔化せる?」
「誤魔化すのは難しいかと。しかしこの場合は致し方ありませんね。何があろうともお護り致します」
「ごめんキャズ、ディーナ。騒がしくなるけど巻き込まれて?」
2人を見ると、突然現れたセバスに驚いていた。
しかし、私の言葉を飲み込んだのか、諦めたように笑う。
「あーもう、こうなるって知ってたわ。あんたといるといっつもこうよね」
「まあ退屈しないじゃないか。構わないよコズエ。好きにすればいい。アリシアさんを助けよう」
「やだディーナったら格好良い!惚れそう!
私の騎士様に任命しちゃおうかしら!」
「それもいいな。私の剣を預けてもいいのはコズエくらいだし」
「やめときなさいよ、毎回こうやって騒動に巻き込まれるわよ」
「えっ?キャズは確定だけど?何言ってんの、知らん振りとか不可だから、認めないよ?」
「嫌よ!私は普通の人生歩むんだから!」
さて、オチが付いたところで。
ここで私が魔法を使うと、恐らく神殿の上層部の人は『タロットワーク』がここにいる事がわかるだろう。
そして今ここにいるのが『タロットワーク』でも『私』だという事に辿り着くのは容易だ。
でも構わない。アリシアさんの為でもあるし、個人的にあの妨害してきた巫女達には痛い目にあってもらいたい。
「・・・『解呪魔法』」
私が魔法を発動した瞬間、アリシアさんの周りに青い光が2.3度煌めく。そしてすぐにアリシアさんの両手には溢れる程の光の粒が集まり出した。
そして、アリシアさんの『力ある言葉』と共に会場に光の粒がひろがる。それを皮切りに、巫女頭さんが祝福魔法を放つ。
私は直後、目の前のボックス席を見た。
そこにあったのは、驚愕の顔。ステージを見て驚く巫女達に、そして数名こちらを見て睨み付ける巫女も。
私もまた見返した。顔、覚えてやるんだから!
こんな事して、アリシアさんだけじゃなく巫女頭さんにも、会場に集まった全ての人に迷惑をかけるつもりだったのか。
…いや、恐らくアリシアさんに恥をかかせようとしただけだったのかもしれない。だけど、こんなことは許されない。許しちゃいけないんだ。
下では『星姫』2人が手を取り合い、力を同調させて広範囲に祝福魔法を放つ。
キラキラと眩く、光の粒が舞い降りる。
この場に集まった全ての新郎新婦に向けて、新しい夫婦となった人達への餞として。
その光景は本当に、切り取って保存しておきたいほどに感動的で、美しかった。
*********************
「さて、どうしよう?」
「これよこれ、無計画ないつものやつ」
「こっそり神殿から出られれば事は済むのだから、サッサと撤退すべきではないのか?」
「そうね、もう怒るのは後からでもいいわよね。アリシアさんに『頑張ったね!』って言いたいけど、それも後ね」
「ちょっと外を偵察してくる。コズエといてくれ、キャズ」
「え、皆で出てサッと逃げようよ」
「あんたホントに無計画過ぎ!囲まれたいの!?」
「いいからここにいてくれ、ねっ?」
「アッハイ」
2人の圧力に負けました。でもさっさと出た方が…と思っていたらディーナがすぐ戻ってきた。あれ、早い。
「・・・これは悠長に偵察するより強行突破がいいかもしれない。外に近衛騎士団が来ている。彼等に力を貸してもらって出よう」
「了解よ。いいわねコズエ」
「もうお任せします」
部屋を出れば、そこには2人近衛騎士がいた。私達にペコッと頭を下げて言葉少なに話す。
「脱出経路は押さえています、お早く」
「グランツ様が先に行っています」
「ありがとうごさいます」
「クロフト、お嬢様達を頼んだぞ」
「はい、お任せください!」
私はキャズに手を引かれて足早に廊下を進む。
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敵は誰?巫女さん達?それとも…
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