異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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2度目の夏至祭

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足早に神殿内部を進みながら、キャズが小声で私に話しかけてくる。何があったのか知っておきたいのだろう。



「一体何だったのよ?あれ。あんた何かわかったのよね?」

「どうやったかはわからないけど、一時的に魔法が発動出来ないほど能力値を減退化させられてたみたいね。じゃないと解呪魔法ディスペル一発で治ったりしないでしょ」

「いやあれ解呪魔法ディスペルだったんすか?」
「どう見てもそんな威力じゃなかったよなあ・・・」
「彼女にを求めたら疲れますよ先輩方」

「ディーナいい事言うわね」

「ちょっと何気に失礼すぎる」

「でもあんたアレホントに解呪魔法ディスペル?ちょっと効果ありすぎる・・・というか効果出るの早すぎというか。
でもあんたにそこを追求するの間違ってるわよね」

「もうちょっとオブラートに包んでもらえませんかキャズさん!」



緊張感のない会話。しかし先導する近衛騎士さんがピタリと止まる。私達にも下がるように手振りで伝える。
それを見てもう1人の騎士さんが、私達を側の通路へ隠す為に誘導した。

そっと音だけに耳を済ませると、数人の人が通り過ぎる足音。女性の声が響くのを聞けば、巫女さん達かもしれない。



「・・・通り過ぎましたね」
「こちらへ。巫女達が探しているみたいですね。神官達が動いているよりはマシです。裏口はもう少しですから」

「はい、急ぎましょう。行くわよコズエ」



あー、ボックス席にいた巫女さん達かしら?
私達が向かいの席から出ていったの見てるものね?でも私達を追いかけてどうするつもりなんだろ?文句言いたいとかそういうの?

セバスも『お護りします』と言ってたけど…誰から護る事を想定しているのかしら?さっき『神官達』って言ってたけど…なんで成功させてあげたのに神官に追いかけられなきゃいけないんだ?

引っ張られるままに早歩き。走ってもいいのだけど、そこまで全力ダッシュは求められていない。
というか、裏口に行くよりも、正面から出ていく不特定多数に混じった方が安全っぽくない?と思うのは私が素人だからなのでしょうか。



「あっ!見つけましたわよ!」
「こちらですわ!」

「チッ、見つかったか」

「こちらからも来ました、巫女ですね」

「あーもう、あと少しなのに!」

「カール、お前グランツ様の所まで行けるか?」

「多分俺には目もくれないんじゃないか?1人なら」

「なら行け、急いでくれ」

「すみません姫、グランツ様に助けを求めます!クロフト、ギルドのお嬢さん、姫を頼みます」

「了解です」
「分かりました」



ジリジリと近寄ってくる巫女さん達から私を背に庇って下がる。…ていうか、何で下がるの?退いてって言えば済む話では?



「よくもやってくれましたわね」

「巫女殿、これは何の御用ですか?」

「騎士殿は退いてくださいな」
「わたくし達はそちらの女性達に用事があるのですわ」

「私達に何の用よ」

「貴方達でしょう?邪魔なんてして。罰を受けなさいな」
「そうよ、わたくし達の邪魔をしたのだからそれなりの罰を受ける事を甘んじて受けなさい」



…なんでこの子達こんなに偉そうなの?
それとも巫女達ってこうなの?テンプレなの?

そして何故キャズ達は言われっぱなしなのだろうか。



「キャズ、平手すんじゃないの」

「できるわけないでしょ、こんなとこで」

「やっちゃいなって」

「コズエ、神殿内での暴力や喧嘩は御法度なんだ。女神の怒りをかってしまうから」

「え、まさかー」

「あんたそれも信じてなかったのね・・・」



あっ、この反応を見るに、皆さん信じている様子。
騎士様もかな?というか、神殿内ではやはり巫女さん達に不容易に触れたりしないように気を使っているみたい。

じゃあどうすんのこの状況。
…あっ、魔法なら使っていいの?捕縛魔法バインドくらいなら怒られないのでは?危害を加えてるわけじゃないし。



「あ、あんた今良くない事考えたでしょ」
「ダメだコズエ、神殿内では神官と巫女以外は魔法は使えない」

「さっき使ったじゃない」

「だから!よ!」
「ここでは使えないになっているんだ、以外は」



あーーーーっ!そういう事ぉーーーー!?
だからさあ!セバスも!大事なことは先に言ってよ!
だから『誤魔化せない』って言ったのか!だからか!

しかし、ここまで来て誤魔化しても意味なくない?
もうここはパーっと使って逃げましょう。有耶無耶にしましょう。よし決めました。



「ちょ、あー、無理ねこの顔」
「諦めようキャズ」

「やあね2人とも。ちゃちゃっとやって逃げれば大丈夫よ、多分?
ということで『捕縛魔法バインド』」

「えっ!?」
「なんですのこれ!」

「あっ、ついでに『消音魔法サイレント』」

「鬼ね・・・」
「念には念を、か?」

「はい、皆さんダッシュよ~」



しゅるん、と現れた光の帯が彼女達を動けなくする。と、同時に声も奪う。大声出されると面倒だし?

私達は恨みがましげな巫女さん達の視線を他所に、さっさと脱出を決め込んだ。騎士さんは目をパチパチさせて驚いていたが、気を取り直したのか、先導してくれた。道わかんないから有難いわ~

…しかし、やはり裏口から出るのは想定内出会ったようで。やはりというかなんというか、裏口手前で神官さんと巫女さんの混成部隊に邪魔されるのである。



「やっぱいるよね~」

「軽く言わないでよコズエ・・・」

「いや想像付いてたでしょ?ていうかグランツさんに会わなかったわね?どこかで足止め食ってるのかしら」



ここはもう『はい通してね~』とさっきの手を使いますか?私、別に魔法使うの制限とかついてないし、やろうと思えばできるのよね。
うーん、悩むなあ。と言ってもそうそう悩んでる時間はない。と思ってると、声がかかる。



「そこにいるのはわかっております。出てきてください、タロットワークの姫君」

「ダメよ出ちゃ」
「なんとかするから、コズエはそのままで」

「え、でも私が出れば収まるし、帰れるでしょ」

「何言ってんのよ、あんた。何されるかわかったもんじゃ・・・」

「何かされたらそれはそれで。そしたらセバスが黙ってないと思うし・・・その前に私が魔法乱射しちゃうわよ」

「ちょっ・・・!」



するっとキャズが止めるのも構わずに出ていく。
私がとことこ進んできたのを、なにやら満面の笑顔で迎える神官さん。何で笑ってるのこの人。ここは嫌~な悪役令嬢風に行くべきかしら。



「ようやく出てきてくれましたね、タロットワークの姫よ」

「貴方、どうして立っているのかしら?」

「は?」

「ですから、どうして私が出てきたのに、顔を上げたままなのかしら?私がだかお分かりのようですけれど」

「っ、そ、それは」

「今日は友人の晴れ姿をこっそり見に来たというのに。あんなな出し物で水を指されて。私、ガッカリしましたのよ?」



はあ、と頬杖を付いてため息。
ちょっぴりワガママ風なお嬢様を演出!

神官さんは慌てたように、後ろに控えていた他の神官と巫女に膝を付かせて頭を下げさせた。自分も膝を付くが、そのまま私を見上げて返事をする。



「そ、それにつきましては、その」

「せっかく皆様の晴れやかな門出の日だというのに。もう少しで台無しになる所でしたわね?私がすんでのところで解呪できましたから混乱する事もありませんでしたけれど。
・・・陛下もこれを知れば大層ガッカリなさるでしょうね」

「も、申し訳ございませんでした!」



よし、これで押し切ればいけるんじゃない?
まあ本来の私のやり方ではないけれど、神殿の皆さんに『ワガママ姫』と認識されても特に困らない!

このまま脱出だーい!…と思っていたのだけど。
そんな簡単には終わらないのでした…

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