異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

文字の大きさ
142 / 158
2度目の夏至祭

165

しおりを挟む


「で、私達は帰りたいのですけれど。いつまでそこにいるおつもり?」

「ですが姫、私どもの話もお聞きくださいませ」

「嫌ですわ」

「えっ?」

「ですから、『嫌だ』と申しましたのよ?なんだか疲れてしまったわ。無駄な追いかけっこをさせられて。
・・・グランツ?そこにいるのでしょう?早く私を連れ出してくださいな」



未だに通せんぼをしている神官と巫女達。
関わり合いになるよりも、ここは強行突破である。
ていうか、チンタラしてたら別のややこしい人が現れたら面倒だし。この人達くらいなら私のワガママでどうにかできそうだ。

すぐそこに裏口。恐らくグランツさんは外にいると思う。だって脱出経路は押さえてくれてたのよね?なら何らかの事情で中に入ってこれないようにされている、のかも。
と、思った私は少し声を張り上げ、グランツさんを呼んでみた。いたらいいなあと思いつつ。

すると、裏口の扉付近で少しザワザワした様子が。程なく扉が開き、グランツさんが顔を出した。私を見て、騎士礼を取る。



「お待たせ致しまして申し訳ございません、姫君。こちらへどうぞ。さあ、ご友人の方々も」

「待ちくたびれましてよ?グランツ。でも貴方が迎えに来てくれた事に免じて、が私を待ちぼうけさせたのかは聞かないでおいて差し上げますわ」

「は、有り難き幸せ」



私はグランツさんに恭しく手を取られながらも、通せんぼをしていた彼等を見回す。気が咎めるようで、皆下を向いたままだ。そうそう、そのまま見ないでおいてねー。
私が扉前で手招きし、キャズ、ディーナ、もう1人の近衛騎士さんを呼ぶ。彼等も心得たようにササッと動いて、外へと脱出。

ふう、脱出ミッション成功!



「・・・はあ、助かりましたグランツさん」

「こちらこそ、すみませんでした姫。あそこで待っていたものの、先程の神官達に追い出されてしまいまして。『命令なければ神殿内にあまり入らないように』と釘を刺されましてね。確かに『星姫』の警護で来ていたので、あまり派手には動けず」

「いえいえ、運良くあそこにいてくれて良かったですよ。お姫様芝居もそろそろメッキが剥がれる所でしたし」

「いや、堂々としたものでしたよ。あそこで呼ばれた時は、胸が震えましたので」



お世辞が上手いなあ、シオンさん仕込みなのかなあなどと思いながらグランツさんを見れば、そこには真剣な顔があった。私がハッタリで呼んだに過ぎないのだが、グランツさんに取ってはちょっと感動ものだったようで。

キャズやディーナも『驚いたわ』『よくやった』なんて褒めてはくれたものの。こそばゆい思いをしてしまった…



「さて、姫。神殿からは出ましたが、敷地内を出るまではお気をつけて。ここまでは巫女達も追いかけては来ないでしょう」

「そうですね、さすがに。ありがとうございましたグランツさん。助かりました。フレンさんやシオンさんには今日の事は黙っておいてください、怒られそうなので」

「はは、怒られるなどありませんよ。むしろ変わりたかった、と言うのではないですか?あのような場面で姫に求められるとは、騎士冥利に付きます。できることならば、私が姫の護衛として名乗りを上げたいくらいです」

「また上手いですねー、ではまた機会があればお願いする事にしますねー」

「ではその時を楽しみにしております」



スっと跪き、私の手の甲にキスを落とす。
立ち上がり、私達に騎士礼を取り、また神殿内へと戻って行った。『星姫』の警護まだ終わってないものね。

振り返ると、キャズとディーナがため息を付いていた。



「素敵ねえ、近衛騎士って」

「そうだな、確かに。目標になる。・・・しかしコズエも堂々としたものだ。手に口付けを受けても動揺しないとは」

「そうねえ、確かに。私ならドギマギしちゃうわよ」

「うーん・・・度重なりすぎてもう何も思わなくなったな・・・」

「「大物ね」」



********************



神殿の建物から出たものの、敷地内に出るまでは合同結婚式に出ていた観客の皆様と共に出ないとならない。
かなりの人数だったから、進みは遅い。皆、さっきの祝福魔法ブレスは凄かっただの、感想を述べあっていた。

ふと、誘導している騎士に目が止まる。と、向こうの騎士さんも私を見た。すると人波をかき分けてこちらへ来る。え、何?



「あら、ケリーじゃない?」
「本当だな。・・・今日は任務だったのか?予定には入っていなかったはずなんだが」

「えっ、あれ、ケリーなの?」

「コズエ?コズエだろ?」
「わっ」



ふわっと抱きしめられる。長身のイケメンに抱きしめられて美味しいです!じゃない!

ケリーと思しき騎士さんは、私をハグし、それから頭を撫でて来た。そのまま私も見上げる。すると、青年に成長したケリーがそこにいた。



「・・・びっくりした。随分色男になったわね、ケリー」

「まあな?勿体ない事したろ?コズエ」

「ふふ、そうね。久しぶり、元気してた?」

「ああ、今じゃディーナと同じ騎士の一員だ」



周りのご婦人方の視線も痛い。取り分け適齢期のお嬢さんの視線が。私達は端に寄り、少し話をすることに。



「ケリー、今日は非番じゃなかったのか?」

「あん?それがよ、ロイド先輩と変わったんだよ。何でも恋人がどうしても今日一緒に過ごしたいってよ」

「なるほど、それで変わってあげたということか」
「優しいじゃない?ケリー。ま、任務の方が女の子に追いかけられなくて済むものねえ?」

「うるせーな、キャズ。俺だって追いかけられたくてされてねえよ」

「冒険者の中でも噂だもの。町に戻ってきたら、アンタに会いに行くくらいよ?こっちは驚いちゃうわ」

「それでも、は減ってんよ。ったくディーナ様々だな」

「それは私も同じだな。ケリー様々と言った所か」



長身のケリー。あれからずっと背が伸びた?180後半はありそう。それでも均整の取れた靱やかな身体付きで、ヒョロリと言うよりも野生のチーターみたいな敏捷さを感じる。ちょっとシオンさんにも似た雰囲気かも。

でもシオンさんが優しげなイケメンならば、ケリーはどこか危ない匂いのするワイルド系だ。もっと歳を重ねればより渋さが増しそう。

それぞれの近況報告のような話をしていると、ケリーと同じ礼服を来た騎士さんが3人ほど、こちらへやってきた。



「おい、クーアン!持ち場を離れるなよ」

「あ、すいません!戻ります」

「ったく、任務サボって女と逢引か?
「ん?誰かと思えばクロフトじゃないか。お前もサボりか?いい度胸してんな」

「いえ、私は休暇中です」

「は~ん?、ねえ?」
「新人のくせに一丁前に休暇なんて取ってんなよ。先輩が駆り出されてるの見たら率先して変われよ、当たり前だろ?」
「ったく、期待の新人ルーキーなんて騒がれてるから調子乗ってんだよ、ちょっと腕が立つからってよ」

「おいクーアン、お前もだがクロフト、任務に戻れよ」

「はい、ですがクロフトは休暇中です、ドノウェさん」

「わかってんだよんなこたぁ。でもここに来たからには仕事して行くのが筋だろ?に代わってよ」
「おー、優しい後輩を持って幸せだねえ俺らは!」



ギャハハハハ、と笑って歩いていく騎士達。
え、何あれ?バカなの?あれでも騎士なの、どうなってんの?

逡巡するディーナに、ケリーは『来ることねえぞ、お前の休暇は隊長に認められてんだ、気にすんな』と言って行ってしまった。
ディーナは迷った顔をして、留まっている。



「キャズさん?アイツら殴っていい?」
「そうね、私もやってやろうかしら」

「おい待て2人共。ダメだそんな事したら。彼等も一応騎士団の先輩だし、それに貴族なんだ。下手に手を出しては大事になる」



ディーナは『ごめん、ちょっと行ってくる。ちゃんと話してくるから』と言って、ケリー達の後を追いかけて行った。
私達の視線の先で、ディーナが彼等に追い付き、何かを言っているようだが取り合ってもらえてない感じ。

や、やーな感じ…。
このまま放っておくのも…ねえ?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...