異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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2度目の夏至祭

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「えーと。どうする?」

「どうするもこうするも。このままディーナ放っておけないじゃない。ちょっと行ってみましょ」



キャズと私はディーナのところへ。
なにやらまだ話をしているが、様子からして、先輩騎士達は全く取り合っていない模様。



「ですから、申し訳ありませんが任務にはつけません」

「は?クロフト、先輩の命令に従えないってことか?」

「先輩は先輩ですが、私の上官ではありません。ジーリオ隊長にはきちんと許可をもらっています。
もし、私を任務に就かせるのであれば、先輩が直接隊長へ説明をしてくださるのでしょうか」

「・・・生意気な事言ってるじゃないか、クロフト。先輩騎士を脅す気か?」

「滅相もありません。ただ、王国騎士として手続きを踏んでもらいたい、そう言っているだけです」



言いがかりを理屈で返すディーナ。
言っていることに間違いはない。彼等は今日、ここで警備をする事が任務なのだから、それを後輩とはいえ別の騎士に押し付け…いや、任務をさせる事がまかり通る事はない。してはいけない事をしているのは彼等の方なのだ。

ただ、これが後々遺恨が残らなければいいのだが。

私達がそこに着くと、ディーナは先輩騎士達に頭を下げ、こちらへと歩いてきた。
その背中に捨て台詞が投げられる。



「チッ、楽できると思ったのによ」
「まあ貴族のお嬢さんだからなあ?まだその感覚が抜けないんじゃないのか?」
「所詮、なんだろ?嫁に出ちまえば今の身分なんぞないものなのにな」

「っ、・・・」

「何よアイツら!ディーナに何の恨みがあるのよ!」

「やめてくれキャズ。いいんだ、言いたい奴等には言わせておけ。
・・・確かに私は『貴族のお嬢様』なのだからな」

「何言ってるのよ、そんなの関係ないのが騎士団でしょう!階級は身分に関係ないはずよ!
なのにアイツらだって、新人のディーナと同じ一団員のくせして!自分に実力がないって言ってるようなもんじゃない!」

「あの人達は、貴族じゃなくて平民出なの?」

「いや・・・確か、男爵家と子爵家の出だったと記憶しているよ。どちらも三男じゃなかったかな。
騎士団にはそういう人が多いから。それでも突出して実力が認められれば、近衛騎士になれる人もいる。
王国軍もそうだが、近衛になれれば、戦功次第で叙勲される事もあるからね」



ディーナは父親が騎士だった。王国騎士団の幹部とも言える、大隊長職。現在はその戦功によって伯爵位を得て、領地を頂き治めている。
娘のディーナはその事によって多少、やっかまれていると言ってもいい。
つまり、父親の爵位は成り上がり、という事を言う輩もいるのだ。それこそ、長く続いている下級貴族の子息達によって。

父親である当主においてはそのような事を堂々と口にできる訳もない。
過去、そうして貴族の爵位を頂き、今日に至っている家もあるのだから。
しかし、いつの世もそれを理解しない人間、というのはいるものだ。それが今、ディーナが向き合っている現実。



「えーと???それって、どうしたら解決するの?」

「しないさ、永遠にな」
「アイツらが改心でもしない限り無理ね。・・・一生あり得ないだろうけど」

「唯一、方法がなくもない。私が騎士団を辞める事かな」

「ディーナ!!!」

「わかってるって、キャズ。そんな事はしない。私にも意地があるからな。
1日も早く、彼等よりも階級を上げて、見返してやるさ。幸い、私は彼等よりも強いしね」

「そうね、一刻も早くよね!私も負けてられないわ、着実に冒険者ランクを上げて、せめてBクラスにならないとね」

「Bクラスになると何か変わるの?」

「ギルドの所属を自分で選べるようになるのよ。今はこの町専属の職員だけど、Bランクになれば別の町にも移動できるようになるの。
『獅子王』様を追いかけるには、この町所属だけじゃなくてギルド本部があるラサーナの所属にならないとね」



2人とも、掲げる目標がある。それに向かって邁進している。
私にも何か手伝える事があればいいのになあ。友達なのだから、何か力になりたい。

と、その時、私達に声がかかる。



「そこの3人。巫女頭様がお呼びである。同行願おう」



********************



「・・・つか、なんで俺まで巻き込んでんだよ」
「死なば諸共って言うでしょ!」

「お前な、キャズ。それってすんげえ幸先良くない意味だぞ?」
「今はそれに近いわよ!」
「・・・落ち着けキャズ。いざとなれば私とケリーでどうにかならない事もない」

「あのよディーナ?お前それって俺に神殿僧兵とドンパチしろっていう風に聞こえんだが」
「最悪の場合、それも覚悟してくれ」

「マジかよ・・・騎士団除名されんぞ・・・」
「私は覚悟出来ている」

「あのさ、なんで皆そんなに悲観的なの?たかが巫女頭さんに呼ばれただけでしょ?」

「「「それが問題なんだよ」なのよ」でしょ!」



先程、私達に声を掛けてきたのは、神殿直属の護衛兵。僧兵と呼ばれる人だ。
神官でありながら、護衛兵としても動く。

だったら先程までの『星姫』とかの警護もすればいいじゃない?って思った私。
僧兵達は司祭や巫女頭を護衛しており、外部の人間であるアリシアさんだけが近衛騎士が警護していたらしい。
その辺りはどうやら、カーク殿下が手を回していたとの事。神殿の人間が近くにいるよりは安心、って事かな。

巫女頭さんに呼び出される、など普段はない事。普通の巫女ならともかく、巫女頭がわざわざ外部の人間に会うなんて事はこれまでないことらしい。
らしい、というのは聞いたことがないからだそうだ。
ていうか、ハッキリ言ってさっきの事じゃないの?それ以外思い当たる事なんてないし。
・・・ステージ上にいた巫女頭さんは、アリシアさんに罠をかけた巫女達とは関係がないだろうと思う。私主観だけど。
あの時に浮かべていた表情。不審と苛立ち。あれは『さっさと祝福済ませなさいよ』と言っているように見えたからだ。



「悪い人じゃなさそうだけどなあ、巫女頭さん」

「あんたって本当に楽天家」
「いつもの事だろうキャズ」
「そんなもんだろこいつなら」

「その内バチ当たるからね3人共」

「はあ~あ、どうしましょ」

「いざとなればまた魔法使って逃げるから大丈夫だって」

「使えんのか?」

「危害を加えなければ問題ないでしょ?怪我させなきゃいいだけの話よ」

「言ってる事もうゲリラよね」



無言の僧兵さんに続き、神殿を歩く。
手振りで示されたのは、大きな扉の部屋。誰かの私室、というよりは談話室というか。

扉が開かれた先に、ステージで見た巫女頭さん。
そして数名の巫女達。神官の人。彼等の視線にあまり歓迎ムードは感じられなかったけれど、私は一番に足を踏み出す。

すると、巫女頭さんまであと数歩、といった所で足元に魔法陣が現れた。



「っ、コズエ!」
「何を!」
「お前ら、何しやがんだ!」

「待って、キャズ、ディーナ、ケリー。大丈夫」

「大丈夫って、ちょっと」



一瞬、焦った。しかし、力が抜けるとかそういった感じはしない。ゼクスさん特製の魔法装具ガードブレスにも反応はない。
もし、これが私に危害を加えるもの、だとすると目の前の彼等に向かってゲスい反撃が行っているはず。
むしろそっちの方が怖い。すぐさまセバスが出てきそうだし。血を見るよ、マジで。

うっすらと輝く魔法陣が、フッと消えた。
私はそこで足を止め、目の前の巫女頭を見据える。
彼女の目は、納得したような色をしていた。・・・確かめるため、とはいえ、丸腰の人間に対してしていい事ではない。

さて、喧嘩を売るために呼んだ?
そんなつもりではなさそうだから、応じたのに。
・・・あのステージ上であった事の謝罪か、説明かと思ったんだけどな。巫女頭さん直々の招待だったし。
ここは私から口を開くべき、なのかな?

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