異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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2度目の夏至祭

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涙を流す巫女頭、その周りで許しを乞う巫女達。
一見するととってもカオス。



「巫女達、立ちなさい」

「コーネリア様!お許しください、この子達は」

「レオノーラ、口を閉じていなさい」



さて、お仕置きが必要なのはこの子達。
いかにレオノーラさんを『聖女』にしたくとも、周りに迷惑をかけてまでなる『聖女』に何の価値があるというのか。

巫女達は青ざめた顔をしながら、震える体に鞭打って私の前に並ぶ。虐めてるみたいだなこりゃ・・・



「巫女とは何か」

「えっ?・・・あ、あの、神殿に属し、人々の幸せを祈り、女神にお仕えする者でございます」

「よく理解していますね。ですが、今日貴方達がした事は、巫女の務めとして許される事ですか?」

「えっ、あの」
「何を」

「女神に仕え、人々の幸せを祈る巫女が、人々の幸せに水を差す行為をした。その事に対して悔いる気持ちはありますか?」

「っ!」
「それは、そのっ!」
「レオノーラ様の事を考えると夢中で!」

「貴方達の主はレオノーラですか?

「「「っ!!!」」」



悲鳴のような声が上がった。
敬愛する巫女頭の為に。その想いで彼女達はこのような行為に及んだのだろう。だがそれは…巫女としては最低の行為。

巫女達は皆、涙を流し、膝をついて必死に祈りを捧げていた。その呟きは誰に対するというよりも、女神に対して許しを乞うていた。
ていうかその前にアリシアさんに謝れ、五体投地で。



「・・・レオノーラ。今回の事に関係した巫女達への処遇は貴方に一任します」

「よ、宜しいのですか?」

「それをもって、貴方への罰とします。これ以上事を大きくする事を私は望みません。神殿内部の1日でも早い改善を期待します。
は常に貴方達を見ていますよ。励んでください」

「あ、ありがとうございます!」



お咎めなし、というわけにもいかない。巫女達はあるまじき行いをした。それは許されない事だ。それに気付かなかった…いや、気付こうとしなかったレオノーラさんも同じ。
彼女に巫女達の処遇を一任した事で、生半可な対処では済まされない、という事を理解したはずだ。この先は私が関与する事ではなくて、彼女達神殿の人間がここをどう良く替えていくかを見させて貰おうと思う。監視するのは『影』なんですけどね。



「さて、ヨハン・グリッシーニ。貴方には追って沙汰があるでしょう」

「・・・私には『タロットワーク』の裁可は下されないので?」

「貴方に関しては、私の一存で決めていい事ではありません。今回の事は然るべき機関にお任せすることにします」



そう言うと、ヨハン大司祭は笑い出す。
その声に危機感を感じたのか、ディーナとケリーが私の前に立った。後ろにキャズが来て、私の腕を引いて下がらせる。



「ヨハン・グリッシーニ。それ以上姫に近寄るならばこちらにも考えがあるぞ」

「考え!考えとは何かな!?・・・王国騎士の下っ端風情がこの私に向かって偉そうに!そこの姫も同じだ!何がタロットワークだ!この神殿では何の役にも立ちはしない!黙って聞いていてやれば偉そうに、小娘が!」

「不敬だぞ、グリッシーニ!」
「コズエ、下がれ」

「だ、大司祭様!?」
「おやめ下さい、なんという事を!」

「黙れ、黙れ黙れ黙れ!私に向かって口出しするな!
僧兵!曲者だぞ!捕らえろ!」



最初からそのつもりだったのだろうか。私を上手く言いくるめられなかったら、実力行使に出るつもりだったのか。
もーやだ、これってあるあるじゃないのよ!ケリー引っ張りこんでおいて正解よね!



「おいどーすんだよコレ」

「いやー、ケリー巻き込んでよかったわ」

「あのな、最初からこんな事予想して俺の腕掴んだのか?コズエ」

「まあ最悪そうなるかなって。パターンから予想してたにも程があるんですけど」

「もう終わったな俺の騎士人生・・・」

「何言ってんの、蹴散らしちゃっても誰も責めないわよ?」

「そうもいかねえだろ・・・」
「コズエ、騎士団と神殿僧兵団には不文律があるんだ」



ディーナも囲まれるのを苦々しく見ながら、前方に視線を向けている。ケリーと共に私を背に庇いながら、部屋の隅に移動。キャズも私の後ろに回りつつも警戒している。

ディーナ曰く、騎士団と僧兵団には相互不可侵の規約があるらしい。神殿内で揉め事があった場合、僧兵達に生殺与奪…と行かない迄も、解決する権利がある。ただし、神殿敷地外においてはその限りではない。
つまり、何があったとしても、王国騎士団並びに近衛騎士団も踏み込む事はできない。

─────ただし、その規律には抜け道が存在する。
その事を知っているのは、王位継承権を持つ人間だけ。

目の前には、総勢20名に及ぼうかという僧兵達。
どいつもこいつも私達を『敵』と認識している。狂信者ですか?
止めようとしているレオノーラさん達、巫女達は神官達によって奥に押し込められていた。



「全く、残念ですなコーネリア姫。もう少し素直な方だと思っておりましたよ」

「あら、期待にお応えできなくて申し訳ございませんわ」

「ふっ、その減らず口を今すぐ閉じて差し上げましょう。
わかっているでしょうが、騎士共!規律がある事を忘れるなよ!手出しすればお前達の未来などないのだからな!」

「なんでアイツ鬼の首取った感じなのよ」

「そりゃそーだろ、この数の差はよお」
「ケリー、負けるつもりなのか?」

「あのなディーナ、さすがに無茶するのは」
「私はここでコズエに・・・コーネリア姫に危害を加えられるのを黙って見ているのならば、騎士団を除名されようとも戦う」

「おい、ディーナ」
「そうね、ここでいい様にされるなんて女が廃るわよね。
思いっきり派手にやってやろうじゃない。ギルドに迷惑かけるのは気が引けるけど、ここで負けるのはもっと腹が立つわ」



女性陣2人はあっさりと腹を括った。なんて頼もしいのかしら。さすがはキャズとディーナ!しかしケリーが気が乗らないのだとすると、迷惑はかけられないよなあ。



「ケリー、これ以上迷惑かけられないから、下がっていてくれていいわよ」

「コズエ、おい」

「2人がやってくれる、って言うのなら・・・私も頑張っちゃう」

「やってくれる・・・っていうかもうここまで来たら仕方ないじゃない、選択肢ないわよ、仕方なくよ」
「はは、キャズも素直になったらどうだ?コズエを守りたいっていう気持ちは一緒だろ?」

「~~~、もう!そりゃ当たり前でしょ!コーネリア姫だろうがなんだろうが、私の大切な友達なのよ!私にとっては親友なの!守りたいに決まってるでしょ!何のために強くなりたいと思ったと思ってるのよ!自分の大切な人を自分の手で守る力が欲しいからに決まってるじゃない!」



キャズは、昔、盗賊に襲われて死ぬ目にあった。
その時運良く『獅子王』に救われたから今がある。だからこそ力が欲しい、大切なものを守るための力を手に入れたい、その気持ちでキャズは『冒険者』となることを選んだのだ。
騎士となる道もあった。でも、彼女は何よりも『国を守る』事よりも、『自分の大切なものを守る』為に力が欲しかったのだ。だからこそ選んだのは、自分の力で上を目指すことの出来る、自由な『冒険者』を選んだ。

ディーナやケリーも同じだろう。誰かを、何かを守るための力を手に入れる為に強くなった。それよりもキャズは自分寄りの望みのために強さを願った。

ケリーはそのまま頭を抱え、天を仰ぎ、諦めたようにため息をひとつ。ブルブルっと頭を振り、目の前に集まる僧兵達を睨み、構えた。



「あ~もう、仕方ねえ!こうなったら俺も乗ってやる!」

「いいのか?ケリー。私達は腹を括ってしまっているが・・・」

「女2人にそこまで言わせといて、ここで下がったらそれこそ男じゃねえだろ!いいか、お前等はコズエ・・・コーネリア姫を守る事を第一にしろ。アイツらの相手は俺が引き付ける」

「わかった、任せる」
「OK、了解」



気合いの入った3人。ニヤニヤと笑う大司祭。
さて、私も腹括らないとな…引っくり返す案はあると言えばある。が、それをするには私も覚悟が必要になる。

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