異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

文字の大きさ
83 / 158
学園生活、2年目 ~前期~

106

しおりを挟む


『拝啓、シリス殿下

お仕事はお忙しいですか?
またたくさんお話を聞かせて下さいませ。
お茶会にお誘いしてもいいですか?
          花麗ファオリー


ぱさり、と手紙を置く。

先日蓬琳皇国より第一皇子と第二皇女をお迎えし、ひと時の時間を持った。どうやら私は皇女のお眼鏡に叶ったようで、それから日を空けず手紙が来るようになった。

婚約破棄をしてから、国内国外問わず姫君方から文を貰う頻度が増えたが、流石に他国の皇女ともなると、おざなりにするわけにもいかない。蓬琳皇国とは長く友好を結んでいるし、これからも友好関係は必要になるだろう。


「けれど、ね・・・」


かの姫君を私の正妃に、との思惑もあるようだが、それは全く考えられない。年の差はよくある話で壁とはならないかもしれないが、なんと言っても幼すぎる。
彼女に私の伴侶としての器量を求めるのは少し無理があるだろう。

ふぅ、と仕事もある程度の目処が付いたところで一休み。控えていた使用人に頼み、お茶を運んできてもらうと、ココン、とノックの音。


「どうぞ」

「ちょうど休憩のようね?いいかしら、シリス?」

「ええ、一息入れようとしていました。どうぞ、母上」


母上はするり、と優雅に部屋に入ってソファに腰を下ろした。私も対面の席へ移動すれば、使用人が私と母上の分のお茶を入れ直す。


「少し話をしようと思って。休憩の邪魔をしたかしらね」

「いえ、そんなことはありませんよ」

「そう?蓬琳の皇女殿下に文の返事を書かなくていいのかしら?」

「三日と空けず来る文に書く内容もなくなってきましたよ」

「あら、そんなに?随分気に入られたものね?あの後、庭園へも案内を強請られたのでしょう?」

「あの時母上が許可してくださらなければ、行かずに済んだんですよ?」

「あのままコズエとお茶をするには少し気分が悪かったのよ。皇女殿下のワガママを聞いて差し上げれば、すんなりとお帰り頂けると思ってね」


父上が手が離せなかった為、母上と私で相手をしたのだが。皇女殿下はよくも悪くも話好きのようで、さすがの母上も辟易したようだ。

『昼の庭園も見たい』と言った皇女殿下に、断りを入れようとしたのだが、早くこの場を去りたかったらしい母上は私に案内を押し付けてさっさと自室へと引っ込んだという…


「皇女殿下をコズエにも見せようと思いましたのよ」

「コズエ殿は面白い生き物が来た、とでもいうような目をしていましたよ」

「あらまあ。さすがはコズエですのね。それにシリス?貴方コズエに勝負を挑んだのですって?」

「それくらいしておかないと、コズエ殿はいつまで経っても私を意識してはくれないと思いましたのでね。少し卑怯だとは思いましたが、宣戦布告させてもらいましたよ」

「卑怯?」


そう、女性を口説くのに少しばかり卑怯な手を使った。
本当はもっと時間をかけるつもりではあった。しかしコズエ殿は多少強引にでも気持ちを伝えておかないと、いつまでも相手として見てはもらえない。焦った、と言われても仕方がない。


「・・・この所、城の古い文献を読み漁っているようですわね?」

「ええ。何かヒントがないかと思いまして。・・・しかし、成果は上がりませんね。異世界から人が来た、という記述を見つける事はまだできていません」


そう、彼女のことを少しでも知りたい。せっかく『王族』という身分にいるのだから、人よりも多く知ることのできる知識がある。

過去、異世界から人が来たことがあるのか。そして、『帰る方法はあるのか』と。


「帰還方法を探しているんですの?」

「ええ、一応。もちろん帰って欲しくはありませんよ?できることなら私の隣にいて欲しい。母上もそうなのでは?」

「私はコズエの望む通りになればいいと思っていますわ?もちろん、残ってくださるのならば嬉しいですけれど」


『帰れるけれど残る』のと、『帰れないから残る』のとでは意味が違う。もちろん私の隣で幸せにする自信はあるし、帰れなくなったとしても後悔させないように愛する自信もある。

だが、できれば私は彼女自身の意志で、隣にいることを選んで欲しいと思う。そう思わせる為に、私は出来るだけの努力を惜しまない。


「帰還方法を教え、それでも残って欲しいと求婚プロポーズするのが理想なので、探し続けるつもりではいますよ。
・・・ですから母上?もう少し他の女性達とのデートを少し減らしてください」

「あら、そんなにセッティングしたかしら?」


ほほほ、と優雅に微笑む母上。

そう、コズエ殿にも言ったが、母上とコズエ殿は私に正妃候補を選ばせる為の競走レースを開催している…
主に母上だが。しかし言い出したのはコズエ殿の様なので、ちょっとした意趣返しとして『宣戦布告』させてもらったようなものだ。

手当り次第、と言ってもいいくらい、色々な家の出の姫君とデートをセッティングされている。
週に一度、二度は予定が入れられており、今日はどこどこの姫君、明日はあちらの家のお茶会だのと、公務の間にそれはもう予定を詰められている。


「母上、私には公務もあるのですよ?あまりに予定を詰めすぎなのでは」

「あら、貴方の父上はこれくらい女性と遊んでいらしたのよ?息子の貴方も平気ではなくて?」


何してるんですか、父上…!
これは母上の長年の恨みか何かなのでは?というか私に対して復讐してどうするんですか!


「でも確かにやりすぎたわね?これからは少し調整する事にするわ」

「・・・そうしてください」

「でも蓬琳の皇女とのお茶会は入れてなくてよ?貴方、あの方は苦手でしょう?」

「流石に疲れましたね、あの日は」

「私もよ。コズエにたくさん愚痴を聞いてもらってしまったわ。エオリアにもね」


あの日も、庭園を見るまで帰らない!という皇女をどうしようかと思ったが、兄である高星カオシン殿下の懇願もあり、少しの間だけの庭園散歩をした。
カークも顔を引き攣らせて逃げていたし、合わないのだろうなと思った。


「次はカークに相手をお願いします」

「そうね、それもいいわね」


済まない、カーク。でもこれも社会勉強だからね。



******************



校外学習から戻り、馬車でお屋敷へ帰る。
クエストをこなした森から学園に戻ると、いつのまにかタロットワーク別邸に連絡が行っていたようで、ターニャ達が迎えに来てくれていた。

私は学園に戻る頃にはすでに体調も戻っていたのだけど、大事を取ってという事で、すぐにお屋敷へ戻らされた。
手や足の痺れもなくなっていたし、通常に戻っていたんだけどなぁ。ターニャ達も『お言葉に甘えさせていただきます』という事で、私を連れてササっとお屋敷へ戻った。


「ただいま戻りました~」

「お帰りなさいませ、コズエ様」


迎えてくれたのはセバスさん。私に向かってきちんとお辞儀をしてお迎えしてくれる。


「アナスタシア様より本をお預かりして参りました。お部屋にお持ちいたします」

「あっ、はい!ありがとうございます!」

「急がなくとも結構ですよ。何やらお疲れのご様子。先にお風呂に入られて落ち着かれてはいかがですか」


確かに。魔力切れ、なんて初めてだったし…
今はもう支障はないのだけど、微妙に体が重いような気がする。

私はセバスさんの言葉に甘え、ゆっくりとお風呂に入る事にした。湯船に浸かれば、体がほぐれていく感じがする。
思っていたより疲れていたみたいだ。…身体強化魔法ブースト使ってかなり走ったしなぁ。これは明日起きたら筋肉痛…なのでは?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...