夢見るディナータイム

あろまりん

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「こんなもの?」

「ううう、美味しそう~~~総悟君たら天才っ」

「あはは、もっと作る?クッキーだけじゃなくて、こないだのビスケットも焼こうか」

「食べたい!!!」

「じゃあ作るね」

「うんうん!!!」

「オイお前等、そんなに作ってどうすんだよ・・・・・」



そりゃ食べるに決まってるじゃない?と返せば、若干疲れたような顔をしたイケメン2人。

いいじゃない、どうせ浩一朗も晴明も食べるくせに。



◼︎ ◻︎ ◼︎



本当に、総悟君は手際が良かった。
さっさかと手順を進め、あっという間に仕上げていく。

そうしたら後はオーブンに放り込むだけ。

そのうちいい香りがしてくる。
しかも時間を計っている感じでもないし、覗き込むことすらしない。
それでも丁度いい時間に取り出せるのだ。
・・・・・なんだその体内時計?



「よっと。いい感じだね」

「・・・・・ねえ?」

「ん?なあに、響子さん」

「時間、計ってないわよね?」

「うん」

「なんで、わかるの?」

「焼き加減?」

「そう」

「勘だけど?」

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・もう聞くの止めとけって、響子・・・・・」



いやでもさあ?
気になるじゃない?そういうの?

でも浩一朗もそうか。
いつもパスタの茹でる時間、計ったりしてないもんね。
晴明だってそう。珈琲の抽出時間や、紅茶の葉の量。
目分量でやってるもんね?

プロってのはそういうものなんだな、きっと。(ということにしておこう)



ほどよく余熱の取れた焼きたてのビスケットを1枚齧る。
さくさく、あつあつ。



「おいツマミ食いしてんじゃねぇよ」

「ひゃってふぁ」

「飲み込んでから喋れ」

「・・・・・・・(もぐもぐもぐ)」

「・・・・・」

「・・・・・・・(もぐもぐもぐ、ごくん)、さくっ」

「食うな!!!!!」



だってさ~?止まんないんだもん~いいじゃない?



「あはは、響子さん、美味しい?」



こっくり。



「ふふ、ならいいよ。これ響子さんが持って帰りなよ」

「え、いいの?」

「いいでしょ。明日はクッキーだけでも」

「わーい!!!」

「あ、ずりいな。俺にもくれよ」



晴明も横からひょいひょいと取っていく。
浩一朗にも包んであげた。なんだかんだと言って、これ気に入ってるの知ってるからね。



「さて。明日も作る?」

「ん~~~。どうする?」

「僕は作ってもいいよ?ビスケットは明日作ろうか」

「そうだね、少しお願いしようかな」

「わかった。んじゃ、今日はこれでね」

「うん、引き止めてゴメンね総悟君」

「ううん、楽しかったから。巽さんのご飯も美味しかったですしね」

「フン」

「性格最悪だけど、腕は最高なんですよね巽さんて」

「おい総悟!」

「あはは、じゃあ僕はこれで。ハルさんもまたね」

「ああ。明日な」



ひょい、と逃げるように出て行ってしまった。
猫みたい。



総悟君が帰ったあと、私はクッキーをラッピング。

10個包んで、150円て感じ?
今日使ったペーパーに包み、駅近くの雑貨屋で買ってきた麻紐で縛るだけ。



格安で売るのだから、ラッピングにお金はかけません。
最初は100円かな~なんて言っていたのだけど。

晴明が『もうちょい取ったらどうだ?』と一言。
浩一朗も『後々ちゃんとした商品として売るんだったら、安くしねぇ方がいいぞ』と。 



でもそうだよね、総悟君の腕は一級品。
このクッキーもそこらで買うのよりも美味しいんだからそれなりに取るべきかもしれない。
それでもラッピング適当だし。

本格的に売るのであれば、もう少し包装にお金をかけるとして。
今週のみはこの値段で行こうと決めた。

・・・・・来週からは、もうちょっとラッピングちゃんとして200円くらい取るようにしよう。
量を少なくして100円のも作ってもいいしね?



◼︎ ◻︎ ◼︎



次の日。
総悟君はビスケットを作り。
半分は大亮さんと康太君のお腹に消え。(もちろん山崎君もしっかり食べていた)

残りをラッピングして、レジ横に置いてみた。
もちろん、『パティシエ加入記念・サービス品』として。

ランチを食べたお客様が、買ってくれたらいいなと思い。



・・・・・。



・・・・・。



・・・・・。



・・・・・。



・・・・・一瞬で売り切れたけど?なにこれ。



開始、30分程で売り切れました。
ランチ食べて帰るお客様がどんどん買っていく。

まだ食べてないお客様まで。
曰く『食べ終わったら売り切れそうだから』だって。

まあ、置いてた量もクッキーを10袋、ビスケットも10袋しかなかったけど。



「・・・・・すげえな」
「いやー、びっくりした」
「売れるわ、マジで」
「もっと作ろうか?明日」



そ、そうですね・・・・・。
実際、私もこんなに売れるだなんて全く思っていなかったわけです。

昨日サービスで配ったし、だから何人か買ってくれるかなって・・・・・。



「まあ、いい事じゃねえか。ウチの看板商品にもなりそうだな」

「ま、あれは簡単だし。量を作ればいいならいくらでもいいよ?」

「焼き菓子だしな。ちょっとオフィスで摘むのにも丁度いいんだろ」

「そうかもね・・・・・でもビックリしちゃった。」

「だよなあ!俺も驚いた。パスタ持って行ったら、クッキーの包み持ってる人多くてさ」

「だよな。客で『買いたかった!』って言ってる人結構いたぜ?」

「そうなんだ・・・・・明日はもっと多くしなきゃダメかしら」

「だな・・・・・倍にしてみたらどうだ?」

「え!?そんなに売れるかしら!?」

「確実に売り切れると思うぜ?」
「オレもそう思う」
「俺もだな!」
「遺憾ですが、俺もそう思います。泉君の腕は抜群ですから」

「ふうん?山崎君からそんな発言が出るなんてね」

「俺は、素晴らしいものは素晴らしいと言ったまでの事です」

「君、僕の事嫌いだろうからさ」

「き、嫌いでは!・・・・・少し、苦手ですが」

「だよね」

「総悟。山崎を苛めるんじゃねぇ。・・・・・だが、俺も賛成だ。
お前の菓子は旨い。客に味を知ってもらうのはこの先にとってもプラスになるだろうからな」

「だな。カフェタイムで総悟のスイーツが食えるだろうが・・・・・
持ち帰りで焼き菓子があれば更に売り上げも伸びるだろうしな。どうだ?響子」

「・・・・・私は構わないの。でも、それが総悟君の負担になるようなら・・・・・」

「僕は平気だよ?」



にっこり、と笑顔を向ける総悟君。



「これくらい軽いよ。焼き菓子は作り置きできるしね。とはいえ1日くらいだけど。
ケーキなんかの生菓子以外にも売り上げが出るんなら、僕は賛成。
それを目的で来る人もいるかもしれないしね?」

「そっか。それもあるわよね・・・・・」



カフェでも、ケーキだけを買いに来るお客様だっている。
店内で食べるだけではないんだもの。
そんなに種類豊富にしなくても、クッキーとビスケットくらいでもいいかも。

・・・・・個人的にはマドレーヌとか食べたいですが。



「あれ。何かリクエストある?」

「え」

「顔に書いてある」



・・・・・。

にこにこ笑いながら聞いてくる総悟君。

他の皆も苦笑しながら私を見る。
浩一朗に至ってはすでに呆れ顔。それでも瞳は優しいけど。



「マドレーヌ、食べたいなあ、なんて」

「いいよ。作ってあげる」

「本当!?」

「勿論。売り物にはしないよ?」

「うん!楽しみ!!!」

「あ~いいなあ、総悟!オレ達も食いたい!」
「俺も!!!総悟!!!」

「わかってるってば。ちゃんと康太や大亮さん達にもあげますよ」



ぎゃあぎゃあと騒ぐ皆。
総悟君がなんだか幼稚園の保父さんのようだ。

それでも、彼等に混じって笑う彼は、楽しそうで。

彼のようなパティシエを迎えられたことを、すごく嬉しく思った。



・・・・・ただ、カロリーコントロールはしなくちゃね・・・・・。
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