夢見るディナータイム

あろまりん

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【SS】ランチの女王?

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ライト文芸大賞に投票して頂きました皆様にお礼をこめて。

パティシエが入る前の段階でのショートストーリーです。



******************




「いらっしゃいませ」

「こんにちは。1人なの。いいかしら?」

「はい、どうぞ」



最近、週に2度ほど来てくださるお客様。

キチッとスーツを着こなした、美人な女性。
体型もグラマーかつ、スタイリッシュ。

背も高く、どこかのモデルさんじゃないかと密かに思っている。



大抵、ランチタイムが終わる寸前にいらっしゃる。



「ギリギリで悪いわね」

「いいえ。混んでない時間帯ですからお気になさらず」

「ここのランチじゃないと嫌な時があるのよ。
ちょっと遠いから、時間かかってしまって」

「すみません、辺鄙なところで・・・・・」

「ああ、そういう意味じゃないの、ごめんなさいね」



ふんわり、いい匂い。
彼女が動くたびに、いい匂いが振りまかれる。

いいわよねえ、こういう人。
こんな女性になりたいものだけど。
・・・・・うん、すでに体型とか色々ダメな点はあるけどね。



「・・・・・今日はこっちにしようかしら。この間はAを頼んだし」

「はい、畏まりました。サラダとスープもお付けしますか?」

「ええ、お願い。最後は珈琲ね」

「はい、お待ち下さい。・・・・・金子君、お願い」

「はい」



晴明にオーダーを渡し、キッチンへと運んでもらう。

すでに大亮さんと康太君は下がってる。
もう彼女しかお客様はいないから。

入り口にも『CLOSED』の看板を出しておいたし。



小脇に持っていたハンディのPCを開いてお仕事をする。

この人は大抵、お食事が終わっても少しいて、こうやってお仕事をしていく。
だいたい、15時くらいにはお帰りになる。

本来なら、早めにお帰りいただくのだけど。
なんだかこの人はいいかな、と思ってしまう。



大亮さんや康太君は裏でご飯食べて帰るけど。
私や晴明、浩一朗は最後までいるから、お一人くらいいても関係ないのだ。

・・・・・これがたくさんなら困るのだけど。



晴明がランチを運び、私達はキッチンにいた。



「いやー!!!美人だよな!!!」

「だよなあ・・・・・ああいう女と付き合いたいぜ・・・・・」

「大亮、お前じゃ無理だろ」

「んだとう!!!俺だってなあ!!!」

「確かに、金かかりそうだな」

「こら、皆失礼な事言わないで。大事なお客様なんだからね?」

「わかってるって。・・・・・時間ギリギリでも週に2回通ってくれるんだから、そうとう気に入ってくれてるのかもしんねえな。こりゃ、ディナー始めたら常連になるかもな」

「そうなってくださったら嬉しいけどね」



そう話していると、食事が終わった模様。
晴明が珈琲を入れて運びに行った。

そして、戻ってきた晴明が私に告げる。



「なあ、響子。彼女が話したいってよ」

「え?私?」

「ああ。『あの可愛い女性、呼んでくださらない?』だと」

「あらやだ。あんなキレイな人にご指名だなんて」

「おいおい」
「響子さん・・・・・」

「冗談です」



なんだろ?
何か気になることでもあっただろうか?



□ ■ □



「ごめんなさいね、呼びつけて」

「いいえ。・・・・・何か不都合でも御座いましたか?」

「違うのよ。とっても美味しかったわ、ありがとう。通う価値があるのよね、この店」

「ありがとうございます」

「お店も素敵だし。オーナーさんは可愛いし。ウェイターは色男揃い。
今時こんなお店、あまりないものね。珈琲もパスタも一級品だもの」

「お褒めに預かり、光栄です」

「・・・・・ねえ?ここはディナーはやらないのかしら?」

「あ。えっと。考え中なんです。まだスタッフがきちんと揃わないので」

「あら、そうなの?」

「はい。せめてパティシエがいませんと。ディナーにドルチェがないなんてあり得ませんし」

「ふふ、そうね。今は探し中なのかしら?」

「はい。そうですね、3ヶ月くらい先には始めようかと思ってます」

「楽しみだわ?是非贔屓にさせてもらうわね」

「ありがとうございます。嬉しいです。・・・・・ここではあまり人を呼び込むのも難しいですし」

「あら、そんな事ないわよ?」



カチン、とカップをソーサーに戻し。
にっこり、と嫣然たる微笑を私に向ける美女。

うう、クラッとするよう・・・・・。



「私が味は保証するわ。この店なら、すぐにでも客が来るでしょう。
なんなら、私が広告塔になってもいいのよ?」

「え?でも、そんな」

「挨拶が遅れたわね。私は都内でランジェリーの会社を経営しているの。」



はい、と名刺を貰った。



「え。・・・・・ここって」

「私のお店。今度いくつかお持ちするわね?」



うふ、と微笑む彼女。

私でも聞いた事があるブランド名。
素材や形にこだわってるって評判の会社だ。

しかも、値段もピンからキリまで。
お手ごろ価格で手に入るものから、総レースや100パーセントシルクを使っているような高級物もある。



「しゃ、社長さん、なんですか!?」

「あら、貴女だってここのオーナーじゃないの。同じよ」



ち、違う違う違う!!!
世界に名が知れてるような、一流会社と一緒にしないでぇっ!!!

あまりの驚きに口をぱくぱくさせるしか出来ない私。



「私、結構味にうるさいのよ。自分で言うのもなんだけれど。
本当に気に入ったお店は、五指で数えられるくらいね。
今まで青山の方にあったお店を贔屓にしていたんだけど、シェフが変わったみたいで・・・・・
本当に不味くなっちゃって。どうしようかと思っていたのだけど」

「・・・・・」

「たまたま、仕事の帰りにここを見かけて入ったら、一流レストランに勝るほどの味じゃない?
しかもワンコインだなんて。これで高級食材使わせたら、どんなものが出来るのか今からとても楽しみ。
ディナーが始まったら、ある程度の食材の指定とかもいいのかしら?」

「え、あ。はい。お客様のご予算に応じたメニューも作ってお出しできるようなレストランを目指していますから」

「あら、楽しみね?それだけのシェフと思っていいのかしら?」

「はい」



これだけは、胸を張って答えられる。私の、宝物達。



「お客様をご満足させられるだけの腕を持つシェフとソムリエがいますから」

「うふふふふ、素敵!!!貴女にそんな顔をさせられる男、見てみたいわ?」

「お呼びしますか?」

「いいえ、いいわ。ディナーが始まってから、改めて料理と顔を拝見しましょう。
楽しみにしているわ?」

「はい。是非。」



カタン、と席を立つ彼女。

慌ててイスを引こうとしたけれど、彼女に制された。



「ああ、いいのよ。これくらい自分でするから」

「すみません、気が利かなくて」

「ふふ、おいくらかしら?また来るわね」

「はい、お待ちしております」



玄関まで歩き、見送りをする。

彼女にコートを返して、ドアを開けた。



「ああ。忘れるところだったわ」

「?」



くるり、と振り返り、にっこりと笑う。



「川上 綾子よ。覚えておいてね?」

「はい!川上様、ですね?」

「ダメよ、綾子でいいわ。私も気に入ったから。名前で呼んで頂戴」

「はい。綾子さん。またのご来店、お待ちしております」



ぺこり、と頭を下げて彼女を見る。

ふふ、と笑って手を振り、彼女は自分の車に乗り込んだ。



・・・・・真っ赤な車。
名前はさっぱりわかんないけど、高いと思う。
しかも左ハンドルだし・・・・・。

ピカピカ光って、艶が違うんだよ、あの車・・・・・。



□ ■ □



「気に入られたみてぇだな」



気付けば、浩一朗が横に来ていた。



「そうみたいね」

「・・・・・あの女、何度か俺のいた店に来たことあるぜ」

「ええ!?そうなの!?」

「ああ。3年くらい前かな。かなりの常連でな。確かどこかの女社長だぜ」

「あのね、銀座でランジェリーの会社を経営してるみたい・・・・・」



はい、と名刺を手渡す。

目を落とし、ふっ、と笑った。



「・・・・・いい客になってくれるといいがな」

「そうね、貴方の料理、とっても気に入ったみたい。
もっと高級食材を扱わせたらどんなものが出てくるのか、楽しみだわって言ってたわよ」

「任せておけよ。唸るような物を出してやるさ」

「ふふ、当たり前でしょ?」

「おっと、信頼が厚いな」

「だって、自慢だもの。どこの店にも負けないのよ、ウチの味はね?」



うふふ、と笑って皆を見る。

メインシェフに、サブ。
バーテン兼ソムリエに、ウェイターたち。

どこのお店にだって、これだけの人はいないはず。



「顔では負けないから」

「そこじゃねぇだろ!!!!!!!!!!!!」



END.
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