24 / 59
【SS】ランチの女王?
しおりを挟むライト文芸大賞に投票して頂きました皆様にお礼をこめて。
パティシエが入る前の段階でのショートストーリーです。
******************
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。1人なの。いいかしら?」
「はい、どうぞ」
最近、週に2度ほど来てくださるお客様。
キチッとスーツを着こなした、美人な女性。
体型もグラマーかつ、スタイリッシュ。
背も高く、どこかのモデルさんじゃないかと密かに思っている。
大抵、ランチタイムが終わる寸前にいらっしゃる。
「ギリギリで悪いわね」
「いいえ。混んでない時間帯ですからお気になさらず」
「ここのランチじゃないと嫌な時があるのよ。
ちょっと遠いから、時間かかってしまって」
「すみません、辺鄙なところで・・・・・」
「ああ、そういう意味じゃないの、ごめんなさいね」
ふんわり、いい匂い。
彼女が動くたびに、いい匂いが振りまかれる。
いいわよねえ、こういう人。
こんな女性になりたいものだけど。
・・・・・うん、すでに体型とか色々ダメな点はあるけどね。
「・・・・・今日はこっちにしようかしら。この間はAを頼んだし」
「はい、畏まりました。サラダとスープもお付けしますか?」
「ええ、お願い。最後は珈琲ね」
「はい、お待ち下さい。・・・・・金子君、お願い」
「はい」
晴明にオーダーを渡し、キッチンへと運んでもらう。
すでに大亮さんと康太君は下がってる。
もう彼女しかお客様はいないから。
入り口にも『CLOSED』の看板を出しておいたし。
小脇に持っていたハンディのPCを開いてお仕事をする。
この人は大抵、お食事が終わっても少しいて、こうやってお仕事をしていく。
だいたい、15時くらいにはお帰りになる。
本来なら、早めにお帰りいただくのだけど。
なんだかこの人はいいかな、と思ってしまう。
大亮さんや康太君は裏でご飯食べて帰るけど。
私や晴明、浩一朗は最後までいるから、お一人くらいいても関係ないのだ。
・・・・・これがたくさんなら困るのだけど。
晴明がランチを運び、私達はキッチンにいた。
「いやー!!!美人だよな!!!」
「だよなあ・・・・・ああいう女と付き合いたいぜ・・・・・」
「大亮、お前じゃ無理だろ」
「んだとう!!!俺だってなあ!!!」
「確かに、金かかりそうだな」
「こら、皆失礼な事言わないで。大事なお客様なんだからね?」
「わかってるって。・・・・・時間ギリギリでも週に2回通ってくれるんだから、そうとう気に入ってくれてるのかもしんねえな。こりゃ、ディナー始めたら常連になるかもな」
「そうなってくださったら嬉しいけどね」
そう話していると、食事が終わった模様。
晴明が珈琲を入れて運びに行った。
そして、戻ってきた晴明が私に告げる。
「なあ、響子。彼女が話したいってよ」
「え?私?」
「ああ。『あの可愛い女性、呼んでくださらない?』だと」
「あらやだ。あんなキレイな人にご指名だなんて」
「おいおい」
「響子さん・・・・・」
「冗談です」
なんだろ?
何か気になることでもあっただろうか?
□ ■ □
「ごめんなさいね、呼びつけて」
「いいえ。・・・・・何か不都合でも御座いましたか?」
「違うのよ。とっても美味しかったわ、ありがとう。通う価値があるのよね、この店」
「ありがとうございます」
「お店も素敵だし。オーナーさんは可愛いし。ウェイターは色男揃い。
今時こんなお店、あまりないものね。珈琲もパスタも一級品だもの」
「お褒めに預かり、光栄です」
「・・・・・ねえ?ここはディナーはやらないのかしら?」
「あ。えっと。考え中なんです。まだスタッフがきちんと揃わないので」
「あら、そうなの?」
「はい。せめてパティシエがいませんと。ディナーにドルチェがないなんてあり得ませんし」
「ふふ、そうね。今は探し中なのかしら?」
「はい。そうですね、3ヶ月くらい先には始めようかと思ってます」
「楽しみだわ?是非贔屓にさせてもらうわね」
「ありがとうございます。嬉しいです。・・・・・ここではあまり人を呼び込むのも難しいですし」
「あら、そんな事ないわよ?」
カチン、とカップをソーサーに戻し。
にっこり、と嫣然たる微笑を私に向ける美女。
うう、クラッとするよう・・・・・。
「私が味は保証するわ。この店なら、すぐにでも客が来るでしょう。
なんなら、私が広告塔になってもいいのよ?」
「え?でも、そんな」
「挨拶が遅れたわね。私は都内でランジェリーの会社を経営しているの。」
はい、と名刺を貰った。
「え。・・・・・ここって」
「私のお店。今度いくつかお持ちするわね?」
うふ、と微笑む彼女。
私でも聞いた事があるブランド名。
素材や形にこだわってるって評判の会社だ。
しかも、値段もピンからキリまで。
お手ごろ価格で手に入るものから、総レースや100パーセントシルクを使っているような高級物もある。
「しゃ、社長さん、なんですか!?」
「あら、貴女だってここのオーナーじゃないの。同じよ」
ち、違う違う違う!!!
世界に名が知れてるような、一流会社と一緒にしないでぇっ!!!
あまりの驚きに口をぱくぱくさせるしか出来ない私。
「私、結構味にうるさいのよ。自分で言うのもなんだけれど。
本当に気に入ったお店は、五指で数えられるくらいね。
今まで青山の方にあったお店を贔屓にしていたんだけど、シェフが変わったみたいで・・・・・
本当に不味くなっちゃって。どうしようかと思っていたのだけど」
「・・・・・」
「たまたま、仕事の帰りにここを見かけて入ったら、一流レストランに勝るほどの味じゃない?
しかもワンコインだなんて。これで高級食材使わせたら、どんなものが出来るのか今からとても楽しみ。
ディナーが始まったら、ある程度の食材の指定とかもいいのかしら?」
「え、あ。はい。お客様のご予算に応じたメニューも作ってお出しできるようなレストランを目指していますから」
「あら、楽しみね?それだけのシェフと思っていいのかしら?」
「はい」
これだけは、胸を張って答えられる。私の、宝物達。
「お客様をご満足させられるだけの腕を持つシェフとソムリエがいますから」
「うふふふふ、素敵!!!貴女にそんな顔をさせられる男、見てみたいわ?」
「お呼びしますか?」
「いいえ、いいわ。ディナーが始まってから、改めて料理と顔を拝見しましょう。
楽しみにしているわ?」
「はい。是非。」
カタン、と席を立つ彼女。
慌ててイスを引こうとしたけれど、彼女に制された。
「ああ、いいのよ。これくらい自分でするから」
「すみません、気が利かなくて」
「ふふ、おいくらかしら?また来るわね」
「はい、お待ちしております」
玄関まで歩き、見送りをする。
彼女にコートを返して、ドアを開けた。
「ああ。忘れるところだったわ」
「?」
くるり、と振り返り、にっこりと笑う。
「川上 綾子よ。覚えておいてね?」
「はい!川上様、ですね?」
「ダメよ、綾子でいいわ。私も気に入ったから。名前で呼んで頂戴」
「はい。綾子さん。またのご来店、お待ちしております」
ぺこり、と頭を下げて彼女を見る。
ふふ、と笑って手を振り、彼女は自分の車に乗り込んだ。
・・・・・真っ赤な車。
名前はさっぱりわかんないけど、高いと思う。
しかも左ハンドルだし・・・・・。
ピカピカ光って、艶が違うんだよ、あの車・・・・・。
□ ■ □
「気に入られたみてぇだな」
気付けば、浩一朗が横に来ていた。
「そうみたいね」
「・・・・・あの女、何度か俺のいた店に来たことあるぜ」
「ええ!?そうなの!?」
「ああ。3年くらい前かな。かなりの常連でな。確かどこかの女社長だぜ」
「あのね、銀座でランジェリーの会社を経営してるみたい・・・・・」
はい、と名刺を手渡す。
目を落とし、ふっ、と笑った。
「・・・・・いい客になってくれるといいがな」
「そうね、貴方の料理、とっても気に入ったみたい。
もっと高級食材を扱わせたらどんなものが出てくるのか、楽しみだわって言ってたわよ」
「任せておけよ。唸るような物を出してやるさ」
「ふふ、当たり前でしょ?」
「おっと、信頼が厚いな」
「だって、自慢だもの。どこの店にも負けないのよ、ウチの味はね?」
うふふ、と笑って皆を見る。
メインシェフに、サブ。
バーテン兼ソムリエに、ウェイターたち。
どこのお店にだって、これだけの人はいないはず。
「顔では負けないから」
「そこじゃねぇだろ!!!!!!!!!!!!」
END.
28
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる