異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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冒険者ギルド編~多岐型迷路~

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お互い名乗り終わった所で、お仕事の話を開始。
クエスト依頼書は、『獅子王』が持っている。それをテーブルへ置きながら、彼は足を組んだ。



「レディのお目当ては『毒胞子』か」

「ええ。ドロップ率が良くないから手に入らなくて。いっその事クエストにして、誰かに依頼を受けてもらえたらいいかなと」

「『毒胞子』ねえ・・・おいグラストン、ドロップすんの何だった?」
「・・・レディ、わかっていて依頼を出しているんですね?」

「ええ、そうだけど。何か問題がある?」

「グラストン、だから」
「ちょっと待っててくれないか、アルマ。レディ、あれはかなり交戦エンカウントも低く、難易度も高く設定されるクエストになります。申し訳ないが、手を貸せる冒険者に当てはありません」

「あらそうなの」

「申し訳ないが、こちらのクエストは破棄させてもらいます」



『獅子王』が黙っているのをいい事に、ギルマスさんは依頼書をクシャクシャに丸めた。うーん、という事は本格的に私が多岐型迷路ルーレットメイズへ乗り込むしかないのでは…?

まあタナトス召喚しつつ、ターニャかライラに着いてきてもらえば道中は安全に行けそうな気がする。ただ私あんまり運が良くないんだよな…交戦エンカウント率が低いということは、TAKEいくつかかるの?10倍速にしないといけない感じ?



「では仕方ありませんね、この話はなかったことに」



スタッと立ち上がる私。こうしてても仕方ないし、ギルドに登録しなきゃダメかな?登録したとしても、多岐型迷路ルーレットメイズに入る許可ってもらえるのかしら。
でも参加資格は誰にでもある、っていうのがギルドの鉄則だし、許可されない事もないだろう。

さて1階に降りてキャズに…と思った私の手を掴んだ人がいる。振り返ると『獅子王』が止めていた。そのまま金色の瞳に険を含んでギルマスを睨み付ける。



「悪いな、座ってくれレディ。───てめえグラストン。何を勝手に俺のクエストを台無しにしてやがるんだ」

「待てアルマ、これはギルドマスターとして容認できない」

「ああん?だあ?
お前、勝手に自分だけの判断で却下しただけじゃねえか、ふざけんなよ?ギルドの掟も無視しやがって何を言ってやがる」

「アルマ落ち着け、このドロップ品は」
「『悪魔茸デビルマタンゴ』だろ?知ってる」

「知ってるんなら!」
必要なんだろ!てめえ、俺が何も知らずに王都に来たとでも思ってんのか!見くびってんじゃねえぞ、伊達にS級冒険者なんぞやってねえ。今回はギルド本部からの要請も兼ねてんだ、邪魔すんな、ぶん殴るぞ」



…えっと?殴りましたよねさっき?
ギルドマスターさんに反論している最中、『獅子王』は1発殴ってました、私見ました。

しかし『獅子王』はそんな事お構い無しです。
あ、もう1発いくぞ、ってことかな?

『獅子王』はギルドマスターがクシャクシャに丸めた依頼書をもう一度綺麗に伸ばし、私に見せるように押し出した。



「もう一度聞く。レディ、あんたの望みは『毒胞子』だな?間違いないか」

「ええ、交戦エンカウント率も低いし、ドロップ率も低い。でもどうしても『毒胞子』が欲しいの。無理にとは言わないわ、危険度も高いしね。ダメなら他に手は無い訳では無いから」

「誰かアテはあるのか?」

「そうね、自分で取りに行くしかないかな?と思っているけど」

「は?・・・あんた自分でか」

「ギルドでダメなら仕方ないでしょ?」

「腕に覚えがあるってのか?」

「私は戦えないわよ?でもその代わりに手段が無い訳では無いから、行けない事もないかもしれないなと」



何かを考えている『獅子王』。
私が自分で取りに行く、と言ったことに驚いているギルドマスターさん。直ぐに申し訳なさそうな顔になり、私に向かって頭を下げた。



「申し訳ありません、レディ・タロットワーク。大変失礼を致しました」

「別に気にしていませんよ、貴方は貴方の考えがあってそうしたのでしょうから」

「・・・ギルド員を無駄に消耗させるためのクエスト、だと思いました」

「何の為に?私がそんなにをする理由が何かありましたか?」

「お貴族様の、ワガママかと」



ああなるほど、他にも無理難題を言ってくる貴族がいるわけね?それでギルド員を守る為にクエスト破棄を申し出たと。
ギルド員にとってはいいギルドマスターなのかな?私には関係ないし、興味ないけどね。

そのまま頭を下げたままのギルドマスターさん。頭を上げろとは言わない。だって私が『下げろ』って言ったわけじゃないし、この人の独断でやってることだ、好きにすればいい。

そんな私を見て、『獅子王』は笑った。



「なかなか肝が座ってるのな、レディ・タロットワーク。エンジュ様と呼んでもいいか?」

「どうぞご自由に?本当に受けてもらえるの?簡単とは言えないし、危険もあるのよ?」

「そりゃそうだろ、危険じゃないクエストなんかない。今回、ギルド本部から要請されてる多岐型迷路ルーレットメイズの調査も兼ねるから、エンジュ様のクエストはちょうどいいんだ、受けるぜ依頼」

「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。さすがに私が多岐型迷路ルーレットメイズに乗り込む、って言うと怒る人がかなりいるから」

「なのに行こうとしたのか?」

「それしか方法がない、というならやむを得ないかなと」

「答えたくなければ言わなくていいが、何の為に?」

能力値回復薬パナシアの作成に挑戦しようと思って」



そう言うと、ギルドマスターさんはガバッと頭を上げた。まだ下げてたのか、この人。



「パ、能力値回復薬パナシアだって!?あれがどれだけ厄介な代物がわかっていて言っているんですか!?」

「そんなに厄介?『毒胞子』さえあれば後の素材は簡単に手に入るじゃない、後はトライ&エラーでしょう?」

「そ、そんな簡単に?」

「ねえ、グラストン・ノイシス。貴方私を『誰』だと思っているのかしら。これでも『タロットワーク』の人間なのよ?できないことに手間をかける事は趣味じゃないの、わかるかしら」

「っ、」

「ギルドマスターだと言うのなら、もう少しあの多岐型迷路ルーレットメイズの事に真剣になりなさい。本当に『魔物大発生オーバーフロウ』なんて起きたらどうしてくれるつもりなの?
情報を小出しになんてしてないで、さっさと神殿や騎士団にも通達なさい。何かが起こってからでは遅いのよ?こうしている間にも『悪魔茸デビルマタンゴ』が人を襲わないとは限らないの。
?」

「まさか、本当に、生ける屍リビングデッドの事を?」

「起きない、と言い切れるの?それともギルドではそうなったとしても対処できるだけの蓄えがあるんでしょうね?」

「・・・早急に、手を打ちます」

「さっさとしなさい、ゼクスレンからも叱責されたのでしょう?貴方、が足りないのではなくて?」

「・・・それくらいにしといてやってくれ、エンジュ様。あとは俺が形が残らないくらいぶん殴っとくから」



その言葉に1番顔色が悪くなったギルドマスター。
まあわかる、こんなゴリラに殴られたら原型留めないのでは。

私は部屋を出て階段を降りながら、後ろからついてきている『獅子王』に話しかける。



「いつから迷宮ダンジョンへ入るつもり?」

「そうだな、明日からと言いたい所だが、用意もしないとならない。明後日から1週間くらい、とりあえず潜る」

「そう、わかったわ。回復薬はこちらでも用意するわね」

「いいのか?必要経費は普通こっち持ちだろ」

「そういうものなの?でもかなり難易度も高いし、それくらいはさせてもらうわ。使わなければ返してもらえばいいだけの話でしょう?」

「持ち逃げするかもしれないぜ?」

「貴方はそんな事しないわ、そうでしょう?アルマ・レオニード」



出入口に、キリ君が待っていた。
私は彼を見つけたので、後ろにいる『獅子王』へと振り返る。彼は少し驚いたような顔をしていた。



「貴方は私の依頼を受けてくれた。だから私貴方を信じるわ」

「・・・参ったねこりゃ」

「期待しているわ、『獅子王』」

「ああ、任せておきな。明日、またここで会おう」

「ええ、わかったわ。今日と同じくらいの時間でいい?」

「ああ、バーにでもいるから声を掛けてくれ」



さてさて、思いがけずS級冒険者にクエストを引き受けて貰ってしまった。さすがに何もフォローしないわけにはいかないわよね。
とりあえず、研究所に戻ったらいくつか回復薬ポーションでも作成しますか。

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