異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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冒険者ギルド編 ~悪魔茸の脅威~

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「旦那、そこの色男の旦那?いい儲け話があるんですが、聞いてもらえませんかね?」

「あ~?誰だオマエ」

「私は依頼の仲介人ですよ。・・・ギルドに内緒で依頼を受ける気はありませんか?私が言うのもなんですが、いい金になりますよ」

「怪しい仕事は受けねえよ、失せな」

「いえいえ、怪しいものではありませんよ!こちらはお近づきの印です」



ごとん、とビールの新しいジョッキ。
それと辛く味付けた空豆。

胡散臭そうに見ながら、ビールに口を付ける。
ニヤリ、とほくそ笑んだ男。…かかったな、とでも言いたいのかもな?だが笑いたいのはこっちもだ。

まさか飲んだくれてるだけでマジで引っかかるとはな。
つー事はだぞ?俺以外にもこうして冒険者がいる、っつー事だよな。それはかなりまずいのでは?

くい、と空豆の入った器を引き寄せ、軽く顎をしゃくる。
続きを話せよ、と返事の代わりに。



********************



胡散臭い小男の話によると、やはり『トリュタケ』の採取に関する依頼だった。とはいえ、俺のような冒険者には、採取ではなく護衛を依頼したいとの事。
…護衛にした方が釣れる、とでも言うのだろうか?いや、採取は自分達の手が入っている人間の方が扱いやすいのだろう。なんせ裏切る事もないし、こっそり懐に隠したりもしない。

俺には数日後から迷宮ダンジョンへと入る採取隊の護衛を頼みたいと話した。

依頼料は1日金貨1枚。成功報酬でさらに10枚ときた。
俺はあまり冒険者ギルドでの護衛依頼に詳しくないが、かなり破格の待遇では?
こりゃ、金に釣られてホイホイ乗っかる奴もいるわな。



「・・・入り口はどうすんだ?今はかなりギルドでも監視体制を整えてる。生半可な事じゃ入れねえぞ」

「そちらに関しては問題ございませんよ、奥の手がありますから」

「悪いが、こっちも冒険者なんだよ。後からギルドに睨まれるような依頼は受けられねえぞ」

「そうですよね、それはお困りでしょう。
・・・ですが、そこは問題ありませんよ。ここだけの話、私達には『裏口』がありますんでね。旦那?ここまで聞いたからには逃げられませんぜ?」

「脅すのか?いい度胸だな」

「いえいえ!滅相もございません!ですが、きちんとお約束は守って頂かないと」

「てめえの部下がどれだけいい加減なのか知らんが、俺達は1度受けた依頼は逃げねえよ」

「さすがは旦那!見込んだだけの事はあります!」



称賛の言葉を吐きつつも、そいつの目の奥には蔑むような色が見え隠れする。下衆な野郎だ、冒険者を格下に見ているのがありありとわかる。
…ったく、エンジュの頼みでなければ殴り飛ばしてやりたい。

俺は渋々依頼を引き受けた体を作り、前金として金貨5枚を受け取る。日程は最大5日という事だ、支度金としてなのだろう。こちらに金を渡す際、『旦那だから先払いにしときますぜ』と耳打ちされた。

充分離れた所で、先程の『影』が接触してきた。
俺は依頼内容を伝えて、エンジュへ報告を頼んだ。
…そして、今に至るのだが。



「旦那、こちらが今回の護衛対象です」

「3人、な。そいつは?」

「あちらは旦那と同じ護衛ですよ。旦那の後にスカウトして来たんです。さすがに3人を1人ではキツいですからね。安全を考慮して2人体制で戻ってきてください」

「・・・ラビと呼んでくれ」

「俺はゼノだ。よろしく頼む」

「前衛職か?俺は中後衛だ。獲物は弓と投げナイフって所だ」

「了解、頼んだぜ」

「では、よろしくお願いしますよ、お2人とも!こちらへ来てください」



そこはくたびれた小屋。1人…ないし2人入れるかどうかというサイズ。おいおい、まさかこれが『裏口』?

目を見張った俺に、ニヤリと笑う小男。



「・・・驚いたでしょう?見つけた私達も驚きでしたよ。
まさかこんな入り口があったとは思いも寄りませんでした」

「なんだよ、こりゃ」

「恐らく緊急の脱出口でしょうね。ここは5階層の小部屋の空気口に繋がります」

「なんでそんなとこから」

「逃げようと思って隠れたら、ここに出たんですよ」



あー…なるほど。こいつ不正に入って逃げ惑っているうちにここを探り当てたってのか。

そこからトリュタケの不正採取を企て、今に至るって事だな。
確かに、そんなとこから入ってこられているとはギルドも感知しちゃいねえだろうな。

送り出されて入れば、確かに空気口に。
這いずって出れば、そこは小部屋へと通じていた。
…ホントに入れてるし。採取隊は手馴れたものか、装備を確認して出発を促している。こいつら何回ここに入ってんだよ?



********************



サクサクと進む。内部の魔物も特に手こずる物はいない。
採取隊がどうやら魔物避けも使っているようで、交戦エンカウントも少ない。
相棒であるもう1人も優秀で、中型くらいの物なら弓で射抜いて倒してくれたりする。

階層主フロアボスはさすがに手を焼いたが、倒せないほどではない。目当ての35階層へと辿り着く。

少し休憩していていい、との事なので広場のような開けた場所で軽くキャンプ。ここは魔物も寄り付きにくい場所の様だ。
そこで俺達護衛2人は軽く休息を取る。その間、採取隊の3人は装備を整え、トリュタケを採取し始めた。
…どうやら、目星をつけている場所があるらしい。



「飲むか?」

「ああ、悪いな。・・・あんた、ここは初めてか」

「俺か?いや、数回来ている。実入りがいいんでな。あまり付き合いをするべきではないんだが、もう少しで装備をグレードアップ出来るまで金が貯まるんだ。そしたらおさらばする事にするさ」

「なるほど。ま、ここまで来たら共犯だからな、俺も人の事は言えねえかもな」

「あのキノコがここまでバカ売れするとは思ってなかったよ。ギルドでも制限をもう少し無くせば、ああいった輩も減るだろうに」

「そりゃ仕方ねえさ、魔物大発生オーバーフロウを起こす様な事は避けたいんだろ?・・・しかしこう不正に入ってりゃ、その対策も穴あきだけどな」

「それは確かに、な。連中も1度痛い目に会えば懲りるのかもしれないが、それよりも目先の金か。俺も言えた義理じゃないが」



なるほど、芯まで腐っちゃいないらしい。
すまねえな、これが終わったら摘発させてもらうがよ。
まあお前に関しちゃの1人として目こぼしくらいはしとくから、上手く逃げてくれよ。

…そんな事を考えながら、茶を飲んでいた時。
森の奥からとんでもない悲鳴が上がった。



「うわああああああああ!!!」

「っ?なんだ?」
「魔物に出くわしたか?魔物避けは持ってたはずだぞ?」



急ぎ悲鳴の聞こえた方へ。
さほど離れていない草むらに、採取隊の1人が腰を抜かしている。周りにはトリュタケがパラパラと散らばっていた。

そいつの目の前、薮の向こう。
背を向けて立つ、1人の男。



「んだよ、仲間か?」
「驚かせないでくれ、大丈夫か」

「あ、あ、あ・・・あれ、は、ジョイド、」

「あん?ジョイド?」
「知り合いか?」



その『ジョイド』は立ち尽くしたまま。
こちらを向こうとはせず、なにか森の向こうを見ている。

そんな『ジョイド』を見ている採取隊の男は、顔色を変えたまま震えている。なんだよ、どうしたって─────



「あるはずが、あるはずがないんだ。ジョイド、ジョイドは、あの時」

「何言ってんだお前」
「彼がどうかしたのか?仲、ま─────」

「どうした?ラビ」
「───おい、ゼノ。あいつ・・・」

「あん?なん、だ・・・よ・・・」



ふと、見る。
なぜ、袖が破れている?
肌の色。青白いを通り越し、灰色に近い。怪我の痕。



「・・・随分変わった肌色のやつだな」
「君、こんな時に冗談が言えるなんて肝が座ってるな」

「口に出したら終わりじゃねえ?・・・おい、静かにしろ、いいな」



腰を抜かした男を引きずり、静かに下がる。
今のところ、まだはこちらを向こうとはしない。
ある程度距離を離したい。でなければこの腰抜かした男を見捨てて行かないと危ない。

あれはなんだ?生きている───匂いはしねえ。
広場まで戻ると、光が差している。太陽じゃないが、今の俺達にはその光すらありがたい。



「おい、あいつはなんだ」

「すまない、すまないジョイド」

「こっちを見ろ。・・・今どんな状況かわかってんな?
お前が情報を出さないと、俺達はどうにもならねえ。最悪俺達はお前等を見捨ててでも帰還する」

「ま、待ってくれ、助け」

「だったら、話せ。冷静に情報を出せ。あいつは誰だ」



ラビは静かに周りを注視。
助かる、こっちはこっちでこいつから情報を引き出す必要がある。俺の頭が警鐘を鳴らす。アレはヤバい。エンジュから聖水を数本預かってるが、これでなんとかならないと非常にまずい。



「あいつは、仲間だ。仲間、奴だ」

「どういう意味だ」

「俺達とは別の採取隊だった。だが2週間前だ。奴の隊が戻ってこなかった。護衛は2人付いていた。その前に入った隊は、1人戻らなかった。魔物にやられたと言っていた」

「おい、全部で戻らない」

「─────俺みたいな戦いの素人が3人、いや、4人。護衛が2人だ」

「くそ、6人も消えてて何で報告が上がって来ねえ!何やってんだお前達は!」

「不正をしているのはわかってるんだ、知られたら捕まる」

「それでも!救えたかもしれねえだろ!ギルドでも騎士団でもよかったんじゃねえのか!」

「怖くて、ボスが話すなって、生きてたかったら黙ってろって」

「ああくそ、最低だな」
「ゼノ、が近付いてる。後2人を探して撤退しないと」

「ああわかってる!おい、立てるな?まだ生きてるお前の仲間を探せ」

「ジョイド、ジョイド、は」

「・・・悪いがあれは生きてねえ。恐らく生きた屍リビングデッドだ」
「魔物ならまだしも、人間が屍鬼グール化か・・・後味が悪いね。一応聖水と火魔法は使えるけど、君は?」

「同じようなもんだ、俺は火魔法は得意じゃねえが」
「ならそっちは俺の役目かな。君の武器に聖水かけとくといいよ」



気休め程度にしかならないかもしれないが、俺は武器にラビから渡された聖水をぶっかけた。
さて、最悪の展開だな。後2人を見つけねえとジ・エンドだ。

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