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冒険者ギルド編 ~悪魔茸の脅威~
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しおりを挟む「シールケ、後ろの奴も頼む。クロフト、回り込んで斬り捨てろ」
「了解ですっ!」
「承知!」
「よし、後はアレを2人でやれ。いけるだろ」
「はいっ!行くわよディーナ!」
「キャズ、足止めは任せる!」
鞭を器用に振り回し、魔法も使うキャズ。
自身に補助魔法を掛け、愛用の大剣を振るディーナ。ていうかそれバスターソードって奴ですか?
獅子王は大型の魔物はある程度ダメージを与えてから、キャズとディーナに弱点を突かせる。
2人の力量でなんとかできそうな類の魔物は、最初から戦わせる。それでも多対一とならないように、回り込んで他の魔物を倒したりと気を使っていた。
その立ち回りにレベルの差を感じざるを得ない。
さすがはS級冒険者だ、スケールが違いすぎ。
「ん?暇か」
「いやいや、見学だけでおなかいっぱいかも。凄いわねアルマ」
「何も大した事してねえぞ」
「ううん、あの2人を上手く使って魔物討伐させてるじゃない?彼女達もすごく勉強になっていると思うわ」
「ま、こういうクエストもあるからな。こうして下の人間を育てんのは先達者としての役目だろ、前にも言ったか?これ。
やらないといつまでたっても俺が苦労するままだろ」
「それは言えてるわね。下が育たないと上が楽できない、か」
「そういうこった。・・・お前については修行や練習は必要ねえしな」
「私も魔法使えるわよ?」
「わーかってる。さっきの万能属性強化だったか?あれだけでお前の力量はわかるさ。こんなもの使える術者がポコポコいてたまるか」
ん?あれ?そうかな?確かに便利だと思うけどさ。
いざ戦闘で役に立つか立たないかとは違うと思うんだけど?
その後もサクサクと進み、たまに私も魔法を連射してみたり。
気分はグラディウスかツインビーだったりして。
キャズの冷たい目が気になるけど。
「・・・もう気にしたら負けだと思ってるわ」
「受け入れろキャズ、楽になる」
「お前等、割と苦労人だな」
3人の評価がひどすぎる気もします。
そして40階層に到達。その場で、近衛騎士に遭遇した。どうやら彼等もここまで到達し、40階層の階層主を討伐した様子。転移方陣が出ているのが見える。
「・・・おや?もしかしたらそちらはレディ・タロットワークでは?」
「どなたかしら?」
「これは失礼しました。カイナス副団長麾下、ジェイク・グランツと申します」
「同じく、オルガ・リューゼと申します。お初にお目にかかります、レディ・タロットワーク」
あっ!グランツさん!?
2年半前にあったグランツさんよりも、さらに男前になっている!渋さが増してる!素敵!
それに、もう1人はいつぞやの順位戦でシオンに競り合ってた騎士さんではない!?
そうか、シオンは入れないけど、直属の部下を入れたんだな。
確かにここまで来るだけの実力なら、探索に入れたくもなるか。
2人の他にも、もう2人騎士がいた。
グランツさんとリューゼさんは剣だけど。残りの2人は弓と杖。後衛職の騎士さんもいるんだな。
『獅子王』がいた事にも近衛騎士達は感激したようで、自己紹介をしている。そうだ、この人たちにも8階層の小部屋の話をしておこう。
キャズを見ると、同じように頷き返してくれて、説明をしてくれた。グランツさんやリューゼさんも顔が真剣になり、その隠し部屋がどこか聞いてくれている。
「・・・それはまずいですね。では私達がそちらを封鎖しましょう」
「よろしいの?任せてしまって」
「ええ、お任せください。レディ・タロットワーク。私達はこれから転移方陣の検証の為に戻りますから。動ける人間を集め、その隠し部屋を封鎖します」
「ではお願いします。副長さんにも伝えてね。もしも戻らない方がいれば、最下層に飛ばされている恐れもありますから」
「了解しました。ではレディ・タロットワーク。そちらもどうかお気をつけて」
サッと騎士礼をし、4人とも転移方陣を抜けていく。転移方陣は消えること無くそこにまだ存在していた。…ん?これって消えないの?
『獅子王』を見ると、ああ、と言ったように説明してくれた。
「こいつはな、階層主を倒した人間がこの部屋にいる限り出現するもんなんだ。つまり、俺だな」
「使うまで、って事?」
「ああ、そうだ。これを使うには、俺と手を繋ぐとか、触ってりゃお前達も使えるぜ?」
はあ、なるほど。どうやってるのかわからないけど、本人認証が出来てるんだ。んで、使用するまでは出現すると。
じゃあ戻るかな、なんて思っていると、ふいに『獅子王』が意外な申し出をして来た。
「・・・とまあ、ここから戻れるっちゃ戻れるが。お前等が良けりゃ、もう少し戻ってみないか?」
「え?」
「いや、要件は騎士が伝えてくれるんだろ?なら、シールケとクロフトの鍛錬も兼ねて、だ。30階層まで行ってみるかと」
「2人とも、大丈夫なの?」
「私は大丈夫ですが、いいんですか?」
「私も構わない。できればもう少し『獅子王』殿のアドバイスを受けたいからな」
「なら決まりだな。エンジュは疲れたら背負ってやるぞ?」
「私もまだ平気。これ舐めてるし」
「・・・持ってきてたのか、それ」
「また何を作ったのよ」
「・・・それ、もしかして」
「まあ味見どうぞ?」
私は回復持続飴を3人に。
もちろん今舐めているのは、体力回復用の方。
スタミナのない私には必須…!50階層の階段から舐めています。
「・・・効くな、やっぱり」
「助かるけど・・・またなんてものを作ってるのよ」
「助かりますエンジュ様。これ美味しいですよね」
「ディーナは騎士団に配られているものを食べたことあるのね?」
「はい、試供品ということで。そのうち騎士団でも必須となるかと思っています」
「確かに、これは騎士だけでなく冒険者にも必須じゃねえか?」
「そうですね、量が安定して供給されるのであれば、ギルドでも取扱いをしていきたいですね」
「そうねえ、安定して作るには人手がいるわねえ」
そしてこれの作り方も他の人に出来るように何とかせねば…今のところ私しか作れないし。なんかトーニ君ができそうな感じなんだけどね。属性が関係あるのかもしれない。
皆で飴をコロコロしながら階段を登る。
そこは驚くような光景が広がっていた…
********************
「ええと?」
「んだ?こりゃ。俺が通ってきた時はこんなんじゃなかったぞ?」
「何よ、これ・・・」
「前からこう、ではないのか?」
そこは、ジャングルのような森…のはずだった。
確かに、前にキャズに聞いていた時は、31階層から39階層までは森のフィールドという話だったはず。
確かに森、は森だ。
しかし、そこは暗く、ジメッとした、気味の悪い森。
薄く霧がかかり、いかにもなにか出ます、って感じ。
「なんか・・・出そうね」
「なんかって何だよ」
「幽霊的な?」
「えっ、やめてよエンジュ様」
「剣で斬れるものならいいが、私もそれはちょっと・・・」
「それにしても、俺が通ってきた時は普通の森だったぞ?何でこんな事になってんだ?階層が変化したってのか」
『獅子王』が通った時は、緑が鬱蒼と繁る普通の森だったそうだ。昼間は普通に光が差すし、夜の時間帯は暗くなる。
迷宮というのは不思議なもので、太陽が出ているわけではないのに昼間は明るいし、夜になると暗くなる。
しかし今の39階層は、薄暗く、湿っぽい。
「・・・俺は進む。お前達はどうする?一旦下の転移方陣で戻るか」
「え、だってアルマがいないと動かないんじゃない?」
「だから、起動はしてやるよ。俺は直ぐに出ちまえばいい。俺はこれを調べないとならん。こいつは異変だ、何かある。さっきの騎士達も何も言ってなかった所を見ると、これはついさっき起きた現象だと思う」
…私が最下層凍らせたからじゃないですよね?
違うと言ってほしい、違うと。
だとすると私も一蓮托生で行かなきゃかなあ…
ちょっと責任を感じている。
すると、キャズはディーナと顔を合わせて頷いた。
そして私に膝を折り、頭を伏せる。
「エンジュ様、無茶は承知でお願いします」
「私達もこの階層の探索に手を貸したいのです。どうか私達を信じ、着いてきてもらえないでしょうか」
「2人とも・・・」
「本来であれば、主たるエンジュ様を先に避難させる事が最善だと思っています。けど・・・」
「何かあった時、貴方様の魔法が頼りになる事も事実なのです。私達を信じ、お助け下さい」
「・・・やっぱな。お前等の中で1番強いのはエンジュか。だろうと思ったぜ」
「えっ?」
「あのな、初級だろうがあんな風に魔法連射できるような魔術師なんで俺はこれまで見た事ねえぞ。
それがS級冒険者だとしてもだ」
「・・・いや、やらないだけでできるのでは?」
「そうだな、もしかしたらな。でもな?あんな風に威力を絞って使いこなすってのはかなり労力を必要とするもんだ。けどお前はケロッとしていやがる。・・・桁外れだよ」
『獅子王』の視線が痛い。セバスの『自重してくださいね』という言葉がまたも木霊しています。ごめんセバス…
ぽん、と頭に手が置かれる。アルマの苦笑する顔。
「まあ、知られたくねえ事もあるだろ。なんせお前はタロットワークだ。少しくらい異常でもそれはおかしかねえよ。
今はその力がある事がプラスになるってもんだ。安心しな、俺がいるんだ、危険には合わせねえよ」
「よろしくお願いします」
「あいよ、まとめて面倒見てやる。シールケ、クロフト、お前達も油断するなよ。守ってやるが、できる限りは自分で何とかしてみろ」
「はい、わかっています。『獅子王』様はエンジュ様を優先してください」
「私達は自分の事はなんとかしますので」
「大丈夫、私が2人の援護するから!」
「んじゃ、平気そうだな。一旦休憩しようぜ。出発はそれからだ」
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