バーサーカーの生贄に選ばれましたが、愛されてはいません

あおいまとか

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実家に戻りました

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 ジャイルは卒業を待たずに、魔獣との戦場に出ることになり、学園で特に学ぶ必要がないおれはギール男爵家に戻った。

 数ヶ月だけで、2年間の役目を果たしてないにもかかわらず、最初に提示された額が全額支払われた。
 太っ腹なことだ。
 ギール男爵家は当面の領地の運用費を手に入れることができ、家族は無事におれが帰ってきたことに喜び、アルクロフト公爵家との縁はあっさりと切れた。
 
 ハズだった。

 * * *

 なんでおれは馬車に乗せられているんだ。
 馬はポクポクと同じリズムで歩く。音だけは牧歌的だが、舗装されていない道になってくると、馬車の揺れはひどい。

 おれは魔獣と人との境界線、つまり魔獣との戦いの前線に連れ出されている、ところだ。
 もちろんおれはまったく戦えない。領地で叩いた剣を握ったことはあっても、商品としての出来を勉強しただけで、戦うためではない。

 おれを迎えにきたリラクはあいかわらずニコニコしている。

 「あの額ではご不満ですか?」

 なんと前線に向かう費用として、学園での成功報酬と同じ額が提示された。公爵家からの断れない依頼、鉱山の開発費はいくらでも欲しいギール男爵家、以前と同じ理由で男爵家は再度役目を引き受けた。

「やはり、ライ様でないと調子が出ないそうです」
「殴る方は、殴られる相手が誰でも発散具合は同じじゃないのか?それとも……」
「それとも?」

 迎えにきたリラクはニコニコしてるけど、なんだか意地悪だな。やっぱ、根に持ってるだろ?おれがジャイルに戦場に行けと言ったこと。

「……だれかと試したのか?……交合」
「さぁ?どうでしょう?直接若にお聞きください」
「…………リラクさん、頼むからもっとわかりやすく怒ってくんない?」
「怒ってませんよ」
 ふぅとリラクは大きくため息をついた。
「ただ、反省はしてます。若とライ様はもっと話し合うべきでした。私たちは仕えるものとして、その手助けをもっとすべきでした」

 ですから、今度から疑問は直接若にお聞きくださいねと、それ以上は何も教えてもらえなかった。あいつすぐ抱くし、話しかけても返事しないじゃん。

「ただ、若が戦場に早めにいかれたのは、若の意思です。ライ様の言葉を唯々諾々ときく方でないのは、ご存じでしょう?」
 もちろんおつきの使用人は全力で止めたらしい。

「あの時はいくらとめても若の意思はまったくかわりませんでした」

 怒ってみえたのなら、若の頑固さに呆れかえっていたからだとか。

「能力が安定しないとは恐ろしいことです。今日出せた10の力が、明日は3になる。その不安定さが、戦場においてどれだけ危険か想像がつきますか?」

 今この瞬間も若はとても危険な状況にあります。私たちは一刻も早く、若の能力を安定させたいとリラクは語った。

「ライ様の言葉は的を射ていました。だからこそ若に必要以上に響いてしまった。たしかに学園は、若には特に向いていない場所でしたが…実戦で能力を磨くという選択は危険すぎるのです」

 ***

 前線の砦に着くと、ジャイルの部屋に案内された。昼間に到着したため、本人は戦いに出て不在だった。

 砦は茶色の石造で、ちょっとした丘の上に建っていた。窓からは少しの木々と赤茶けた岩肌が見渡せた。ここから少し先は魔獣の縄張りだという。

「長旅お疲れ様でした。お疲れでしょう。埃と汗を流された方がいい」

 そう言って、リラクに部屋付きの浴室を案内されながら、見慣れた錠剤と香油を差し出された。水はできるだけ節約して使って欲しいそうだ。

「……やっぱり帰ったらすぐすんの?」

 問答無用の一晩セックスコースだろうか?暴力はないといいけど。

「今夜はそうなると思います。久しぶりだと痛みますよ?」

 ***

 その夜。久しぶりに会ったジャイルの顔はこわばり、目はイっていた。

 (今何か話すの無理だわ)

 暴走モード一歩手前の顔だ。

「遅い」

 そう言われ、ジャイルに一晩中抱かれた。あいかわらず底なしの体力だ。学園と違って、1日剣を振り回してるんだろうに。
 ただ久しぶりでも自分でやった前準備のおかげか、おれは快感を拾うことができた。
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