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クレイジードッグ
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結局のところ、学園の寮のやつの部屋で過ごしていた時とかわらない生活を送ることになった。
夜に抱かれて、昼まで寝坊して、起きたら体を抱かれるために整える。ただれた日々。今のところ暴力はない。乱暴に抱かれるだけだ。おれの生活はやつの部屋だけで完結し、ほかの兵士と関わることもない。
(まさに囲われた専属の男娼)
もし実家が没落し、自領の返上の憂き目に合えば、こういう職もありえたのだ。なんの取り柄もない自分に破格の値を2度もつけてもらったのだし、そういう店で客を取ると思えば待遇は悪くない。
でも。
気持ちはグラグラと浮き沈みが激しい。
セックスするだけの、楽な生活だと思ったり、金で買われた自分がひどくむなしく思えたり。
それはきっと今の待遇が、ジャイルの胸ひとつと前回の別れで思い知ったからだ。
***
「なんで、おれをここに呼んだんだ」
セックスの合間に少しだけ会話できる時がある。やつが吐精して、落ち着いた頃に。
「足りなかったからだ」
「足りない?」
「……物足りない。誰を殴っても蹴ってもスッキリしなかった」
砦でも殴ったり蹴ったりはしたのか。
しかし会話してもジャイルが何を考えているのか、よくわからん。
「……だれかと寝なかったのか?セックスするのはスッキリするからだろう?」
何かを発散してるのはわかる。帰ってすぐはガツガツやられるが、2回目3回目と落ち着いてきたら、ゆっくり動いたりこちらの反応を引き出したりするし。
「とにかくイライラしてそれどころじゃなかった。全部の感覚がパンとなって、気づいたら周りで人が倒れている」
え?ジャイルには殴る瞬間の記憶はないのか?というか一緒に戦う仲間を殴ってるのか?大丈夫か?
もういいだろう?というように、ジャイルはまた体を動かし始めたので、話はそこで終了だった。
たぶん朝になれば、もっとゆっくり話せるんだろうけどな。朝はジャイルが出発する時間にはおれが起きれないんだよな。魔獣との戦いから帰ってきたら、だいたい暴走モードちょい手前って感じだしな。
***
「大丈夫ではないですね」
とりあえず食事を運んでくれるリラクに、昨夜の会話を伝える。もう昼が近い。ブランチだ。
おれはリラクの助言どおり、頑張ってジャイルとの会話を試みている。成果はよくわからない。リラクに補足してもらわないと、ジャイルの台詞だけでは状況がよくわからないのだ。
「実はジャイル様はここではクレイジードッグと呼ばれています。他の兵との連携はまったくとれていません」
「あー……仲間を殴ったから?」
「そうです。他の兵からは、いくら強くても、魔獣と戦っている時に、後ろから殴られては敵わないと、現在は厄介者扱いです」
ここはジャイル様の叔父が預かる戦地なので、どうにか兵との間を取りなしてもらって、遊軍扱いで落ち着いたらしい。
「つまり?」
「ゴルデンと2人で出撃しています」
魔獣の群れの縄張りに、他の隊とは別に2人で出撃。
死ぬんじゃ?
「もちろん偵察の上、魔獣の群れとは別の場所に行っていますが、絶対ではありませんし」
群れとはぐれた魔獣を狩りにいっているらしい。
ジャイルの状況は予想以上に悪かった。孤立してるじゃん。
「ライ様に来ていただいて助かりました。少し暴走しなくなっているようです」
そりゃよかったよ。セックスしかしてないけどな。
***
砦の食事は根菜スープと硬めに焼いたパン、香辛料をふんだんに使った少しの肉だ。補給が届いた後は数日果物がつく(おれは途中から補給の馬車と合流し、一緒に砦に入った)。
なんと肉は魔獣の肉である。ここに来るまで知らなかったが、食えるらしい。なんでも数日間、酒と多めの薬草(臭みと毒消し)につけると、どうにか食用になるとか。手間がかかりすぎるので、兵士の人数分だけ砦で加工しているようだ。補給で運び込めるのは干し肉になるから、魔獣の肉でも重宝しているらしい。
味は…香辛料が多く使われていることで察して欲しい。あと固い。
それと食後は、滋養強壮の水薬。いろいろな薬草が入っていて、効果抜群だかこれはまずい。でも飲まないと夜のお勤めが果たせないからな。ジャイルの体力は底なしだ。
おれに必要な物を手渡し、健康チェックが終わればそろそろリラクが忙しくなる時間帯だ。戦った兵が帰ってくる。負傷した兵に治癒魔法が必要となるのだ。
「くれぐれもこの部屋を出ないようにしてくださいね」
「ハイハイ。毎日言われなくてもわかってるよ」
ん?今まではてっきり専属の男娼なんてイロモノ、悪目立ちするから、出るなと言われてるのかと思っていたけど(出歩く体力もなかったが)。
「もしかしてジャイルの周りの人間まで、厄介者扱いなのか?」
「いきなり殴り飛ばされて恨んでる兵もいます。補償はしましたが、ここでは爵位よりも、隊の規律が優先されますから。仲間をいきなり殴るなどご法度です」
…………魔獣との戦いに出なくても、砦の中も危険なのかよ。おれは契約がすぎたら、ギール男爵家に無事に帰りたいんだけどな。
夜に抱かれて、昼まで寝坊して、起きたら体を抱かれるために整える。ただれた日々。今のところ暴力はない。乱暴に抱かれるだけだ。おれの生活はやつの部屋だけで完結し、ほかの兵士と関わることもない。
(まさに囲われた専属の男娼)
もし実家が没落し、自領の返上の憂き目に合えば、こういう職もありえたのだ。なんの取り柄もない自分に破格の値を2度もつけてもらったのだし、そういう店で客を取ると思えば待遇は悪くない。
でも。
気持ちはグラグラと浮き沈みが激しい。
セックスするだけの、楽な生活だと思ったり、金で買われた自分がひどくむなしく思えたり。
それはきっと今の待遇が、ジャイルの胸ひとつと前回の別れで思い知ったからだ。
***
「なんで、おれをここに呼んだんだ」
セックスの合間に少しだけ会話できる時がある。やつが吐精して、落ち着いた頃に。
「足りなかったからだ」
「足りない?」
「……物足りない。誰を殴っても蹴ってもスッキリしなかった」
砦でも殴ったり蹴ったりはしたのか。
しかし会話してもジャイルが何を考えているのか、よくわからん。
「……だれかと寝なかったのか?セックスするのはスッキリするからだろう?」
何かを発散してるのはわかる。帰ってすぐはガツガツやられるが、2回目3回目と落ち着いてきたら、ゆっくり動いたりこちらの反応を引き出したりするし。
「とにかくイライラしてそれどころじゃなかった。全部の感覚がパンとなって、気づいたら周りで人が倒れている」
え?ジャイルには殴る瞬間の記憶はないのか?というか一緒に戦う仲間を殴ってるのか?大丈夫か?
もういいだろう?というように、ジャイルはまた体を動かし始めたので、話はそこで終了だった。
たぶん朝になれば、もっとゆっくり話せるんだろうけどな。朝はジャイルが出発する時間にはおれが起きれないんだよな。魔獣との戦いから帰ってきたら、だいたい暴走モードちょい手前って感じだしな。
***
「大丈夫ではないですね」
とりあえず食事を運んでくれるリラクに、昨夜の会話を伝える。もう昼が近い。ブランチだ。
おれはリラクの助言どおり、頑張ってジャイルとの会話を試みている。成果はよくわからない。リラクに補足してもらわないと、ジャイルの台詞だけでは状況がよくわからないのだ。
「実はジャイル様はここではクレイジードッグと呼ばれています。他の兵との連携はまったくとれていません」
「あー……仲間を殴ったから?」
「そうです。他の兵からは、いくら強くても、魔獣と戦っている時に、後ろから殴られては敵わないと、現在は厄介者扱いです」
ここはジャイル様の叔父が預かる戦地なので、どうにか兵との間を取りなしてもらって、遊軍扱いで落ち着いたらしい。
「つまり?」
「ゴルデンと2人で出撃しています」
魔獣の群れの縄張りに、他の隊とは別に2人で出撃。
死ぬんじゃ?
「もちろん偵察の上、魔獣の群れとは別の場所に行っていますが、絶対ではありませんし」
群れとはぐれた魔獣を狩りにいっているらしい。
ジャイルの状況は予想以上に悪かった。孤立してるじゃん。
「ライ様に来ていただいて助かりました。少し暴走しなくなっているようです」
そりゃよかったよ。セックスしかしてないけどな。
***
砦の食事は根菜スープと硬めに焼いたパン、香辛料をふんだんに使った少しの肉だ。補給が届いた後は数日果物がつく(おれは途中から補給の馬車と合流し、一緒に砦に入った)。
なんと肉は魔獣の肉である。ここに来るまで知らなかったが、食えるらしい。なんでも数日間、酒と多めの薬草(臭みと毒消し)につけると、どうにか食用になるとか。手間がかかりすぎるので、兵士の人数分だけ砦で加工しているようだ。補給で運び込めるのは干し肉になるから、魔獣の肉でも重宝しているらしい。
味は…香辛料が多く使われていることで察して欲しい。あと固い。
それと食後は、滋養強壮の水薬。いろいろな薬草が入っていて、効果抜群だかこれはまずい。でも飲まないと夜のお勤めが果たせないからな。ジャイルの体力は底なしだ。
おれに必要な物を手渡し、健康チェックが終わればそろそろリラクが忙しくなる時間帯だ。戦った兵が帰ってくる。負傷した兵に治癒魔法が必要となるのだ。
「くれぐれもこの部屋を出ないようにしてくださいね」
「ハイハイ。毎日言われなくてもわかってるよ」
ん?今まではてっきり専属の男娼なんてイロモノ、悪目立ちするから、出るなと言われてるのかと思っていたけど(出歩く体力もなかったが)。
「もしかしてジャイルの周りの人間まで、厄介者扱いなのか?」
「いきなり殴り飛ばされて恨んでる兵もいます。補償はしましたが、ここでは爵位よりも、隊の規律が優先されますから。仲間をいきなり殴るなどご法度です」
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