バーサーカーの生贄に選ばれましたが、愛されてはいません

あおいまとか

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人の日記を勝手に見るな

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 翌朝、珍しくジャイルに起こされた。
 いつもは眠り込んでいるおれを起こさずに、朝の戦闘に出かけて行くのに。

(眠いわ!)
 さっきやっと終わって、一瞬寝ただけじゃん!シンプルに起きれん。
 ジャイルは手に何か紙束を持っている。

「この点数はなんだ?」

 それ、おれの日記じゃん。どいつもこいつも、人の日記を勝手に読むなよ。

「なんとなく、その日1日どうだったか点数つけてるんだよ」

 眠さと恥ずかしさでイライラしながら答える。ジャイルが問うているのは、毎日の日記の最後に書いている点数のことだ。おれの暇つぶしなど、誰も気にしないと思って書いていたのに。

「違うな」
「何が?」
「その日の点数じゃない。それは答えじゃない。嘘をついている顔だ」 

 近づいてきて、あごをつかまれ持ち上げられた。ジャイルと目が合う。
 お前の勘はなんなの?他の生徒との会話では、言葉の裏を読むとかできなかったくせに。

「……お前の点数だよ。乱暴度。お前がすこぶる乱暴で最悪だった日は、百。だいたいいつもどおり乱暴だったら五十。ものすごく優しい日は零」

 ちなみに今まで零だった日はない。

「セックスの点数か?」



 乱暴度だって言ってるだろうが。 

「何を基準に決めている?ここ数日は点数が高いな。乱暴はしてない」

 乱暴されたかを決めるのはおれで、お前じゃないよ。たしかに殴られてはないけどさ。セックスも明け方までガツガツコースとかはなかったよ。

 ええ?なんなの?ジャイルはセックス相手のことは全て知りたい人種か?……違うな、自分が疑問に思ったことは、相手の嫌がる心情を思いやることもなく、納得するまで聞きたいやつだな。

「だからおれをどれくらい乱暴に扱ったかの点数。ここ数日が高いのは、なんかお前の……」
「俺の」
「……匂いとか」
?」

 しつこい。嫌われるタイプだ。違う。こいつはもう周りに嫌われてた。

「……唾液の味が違って」

 あんまり口づけをしたくない味だった。甘くなくて、かすかに苦みのある変な味って言うか。

「へぇ?」

 面白そうに笑う。いつも無表情のお前が笑うと、口角だけが上がって、見てる方は震えがくるからやめてくれ。

「匂いが違うって?」

 匂いがたしかに違う。いつもはなんか男くさいというか、これからするぜっていう匂いがして、かいでるとなんだかおれもムラムラさせられる感じなんだけど。
 最近は、ちょっと逃げたくなる匂いだった。血と土の匂い。外の汚れが落ち切れてないのかと思っていたけど。

 おれはジャイルに促されて詳しく説明させられた。昨夜のセックスよりも恥ずかしめを受けた気がする。

「昨夜は?」
「……七十」
「匂いと、唾液の味がまだ違うのか?」
「……違う。怪我のせいかもしれないけど、血の、鉄の味がする」

 まぁセックスは独りよがりじゃなかったよ?長かったけど。


 なぜか、ジャイルはそれから
 「今日は何点だ?」
 毎朝起こしては聞いて行くようになった。

 おれは知らなかった。その返事で剣をかえていることなんて。知っていたらもっと慎重に返事をしたのに。
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