バーサーカーの生贄に選ばれましたが、愛されてはいません

あおいまとか

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伴侶になりました(本編完結)

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 その後はジャイルの部屋とやらに連れ込まれた。

 ベッドと、応接のための小さな机と数人がけのソファー。小さな書斎机。広さはあるが、華美ではない。むしろ、先ほど通された客室より、飾りもなく質素で、劣る家具しか置いていない。とりあえず公爵家に置いて恥ずかしくない最低限の品質の物を揃えたという感じ。よく見ると壁の色がうっすらとまばらだ。

 (壁を壊したな、こいつ)

 家具もよく壊していたのだろう。壊れる前提だから、いい物は置いていないのだ。

 とりあえずソファーに並んで座る。

「……伴侶って誰が?」
「お前だが?」

 ジャイルは当然のことを聞かれて不可解みたいな顔だ。
 だいぶ一緒にいるけど、あいかわらずわからないやつだ。

 いや、でも女性がいいと思うよ。子どもがね。おれではいくらヤッても、産めないしね。

 百歩譲って、伴侶を男性にするとしても身分違いがな。おれはこんな豪華な公爵家で生活している自分なんて想像もできないな。

「……伴侶はムリだ」
「なぜだ?お前がいないと戦えない」
「なんだそれ?……その抱けば女性の方が気持ちいいぞ」

 たぶん。おれは抱いたことないけど。女性は柔らかそうだし。お前もバカの一つ覚えみたいにおれしか抱かないから、おれを伴侶にしようってなるんだよ。

「お前の点数がないと、剣が選べない」

 ……そしておれは衝撃の事実を聞いた。あんな適当につけていた点数が、毎朝の剣の重さを決める、そんな大事な指標に使われていたなんて。

「お前はセックスで、点数をつけている。伴侶はお前だな」

 なんだその、言葉にするまでもないみたいな態度は。

 リラク、リラクさん?そろそろ出てきて解説してくれ。たぶん気をきかせて2人きりにしてるんだろうが、やつが何を言ってるのか根拠がわからん。

 ジャイルはチラッとベッドに視線をやった。
 おい!このまま、なあなあにベッドになだれこんだりしないからな。

「子どもが必要なんだろうが」
「兄上がいるからいい」

 ……いや、ジャイルのの子もだけど、アルクロフト家の戦える男児は多い方がいいんじゃないか?アルクロフト家の中でもずば抜けて強いらしいがいるんじゃないのか?

「女はすぐ悲鳴をあげるし、壊れるから嫌だ」

 どんな扱いをしたんだよ。優しくしろ。

 (お前ならもう女性相手でもできるから。もう力のコントロールはできているから)

 しかし、頭に浮かんだセリフは喉に張りついて、出なかった。

 そのかわり、学園でも砦でもずっときけなかったことを口に出した。

「なんでおれを選んだ?」
「最初にお前が逃げなかったからだ」

 おれは助けがくるって知ってたから、逃げなかっただけだ。

「おれに殴られても、弱いのに怯えていなかった。伴侶はお前しか考えられない」
「それはおれを……愛してるってことか?」
「愛?……その感情は、よくわからないな?うん――愛してはない」

 ……そこはわかんなくても話の流れで、愛してると言えよ。あいかわらず雰囲気を壊すやつだな。

「だが」

 ジャイルに頭をすっぽりと抱え込まれる。

「お前がいないと戦えない」

 すがりつくように抱きしめられる。こいつはしゃべるのは下手だし、肝心なことは言わないし子どものようだと思う。出会った頃に比べて、硬くなったジャイルの胸板に頭を預けながら考える。

 まぁいいや。
 お前がおれに飽きるまではつきあってやるよ。

 愛してはないらしいけど、ちゃんと求婚されたしな。

 ***
 
 「アルクロフト公爵家は、その性質上、男性を伴侶にすることが多いのです。女性だと暴力を振るわれると怪我も深刻ですし、治癒魔法があっても耐えられる方が少なくて。
 ただ、その分後継者問題が深刻なのです。
 ご当主が心配されているのは、次代のことであって、ライ様自体を排除されたいわけではありません」 

 翌朝リラクがやっと出てきた。
 ご当主はいい方なんですが、頑固なところがあって、とリラクは苦笑を浮かべている。彼は自分は平民で、実力でアルクロフト家に取り立ててもらって大変感謝していると語った。

 おれはいつも通り、リラクに体調を診てもらっていた。やっと昨日の流れの補足を聞くことができた。
 そう、こういうことをききたいんだよ、おれは。

 馬車で長距離を移動した後に、朝まで抱くなよジャイル!
 今朝は足腰にひさびさに力が入らない。早くいうと立てない。

「疲労は治癒魔法ではとれないんですよね」
 リラクは苦笑いだ。

「リラクはおれが伴侶で嫌じゃないのか?」
「いいえ。若が、むりやりライ様を抱かれた時に、伴侶はこの方になさるんだろうなと思っていました」 
「え?そんな前から?」
「ただ、いつ力の暴走があるかわかりませんし、前線にいる時は、ジャイル様もライ様も命がいつ失われてもおかしくなかったので、お伝えしませんでした」

 ……おれは、そんな危険な場所にいたのか。

「ジャイル様だけでなく、アルクロフト家の皆さんは直感で物事をお決めになりますよ。ライ様はジャイル様の1番不安定な時期を、身をはってお支えになりました。内助の功です。アルクロフト家の中でも、胸を張って生きていけますよ」

 ***

 伴侶になるにあたって、公爵家のマナーとか気にする必要はなかった。
 そもそも公爵家にいなかったので。
 ジャイルは当然のようにおれを前線に連れ回し、戦績を上げ続けた。

 約束の7つの前線を見事押し上げた時にはお互いいい歳になっていて、伴侶として公爵家に認められてからも、戦場を共にした。

 ん?ジャイルが愛をささやくようになったかって?
 それはジャイルとおれだけの秘密だよ。
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