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第一章

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「大丈夫……うん、理解してるよ」
 自惚れ、油断は危険を生む。何も自分だけの話ではなくて、例えばエリスや一緒にいた人を危険にさらしてしまうかもしれない。私はもう一度自分に言い聞かせるように「自惚れない」と呟いた。
「では、次です」
 私を見て安心してくれたのか、ミリエナは満足そうに言葉を続ける。
「次はクラスに関してです」
 ステータスには「魔法使い」と書かれている場所がある。私は魔法使いというクラスらしい。確かに魔法の方が得意だ。
「ステータスに書かれているクラスは、レベルと同様に収拾した情報から割り出された、いわばもっとも適正が高いクラスです、参考程度に考えてください」
「ちなみに私は剣士ですよ……私が前衛、ルネーナさんが後衛で相性が良いですね、ベストカップルです」
 嬉しそうに私にしなだれかかってきたエリス。確かに相性が良いように思う。でもベストカップルというのはよくわからない。エリスの顔を押しのけながら、私はミリエナに続きを促す。
「この適正クラスは、鍛え方や行動次第で変動します、なので自分の成長の指針にもなるでしょう……現在の鍛え方で間違っていないか、という事が分かると思います」
 なるほど、と思う。私は魔法使いでいいけど、中には適正クラスが気に入らない人もいるかもしれない。そういう人は鍛え方を変えれば、自分の適性が変わる。現在の自分の位置を確認しながらだから、目標を達成しやすいという事だ。
「なかなか、高機能だね、これも昨日の一部……」
 そこまで言って私は固まってしまう。盛大にお腹が鳴ってしまったのだ。エリスがニヤニヤとした笑顔になり、ミリエナが微苦笑を浮かべる。
「もう我慢できませんか、ルネーナさん」
 私のお腹を優しく擦りながら、エリスが声をかけてきた。上から熱風が吹いてきたかのように、全身に熱が広がる。私はエリスの手を払い除けて言った。
「減ってないし! ミリエナ、続けて!」
「ふふふ、やせ我慢はよくありませんよぉ」
 懲りる事なく、エリスがまた私のお腹に手を寄せてくる。私はそれを阻止しながら、エリスを軽く睨んだ。
「違う! 我慢じゃないし!」
「あらあら、じゃあそういう事にして」
 腹が立つ笑顔を浮かべたエリスが、ミリエナに顔を向けて問いかける。
「私、お腹が減ってしまって、もう耐えられません、ギルドカードの機能は私が一緒にクエストに行って、体験してもらいながら説明するので、今日はこれくらいで終わりにしていいですか?」
 その言葉に頷いて、ミリエナが言葉を返した。
「……そうですね、私もお腹が減ってしまって、限界だったので助かります」
 たぶんそんなことは無いだろうに。二人の気遣いが私の熱を余計に高めた。なんか私だけが子供みたいじゃないか。
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