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第二章

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「おおおおまっ、足元見やがって」
 弾ける様に体を起こしたギガルドが、少しプルプルと震える。その様子を見たエリスが、ゆっくりと立ち上がった。
「そのような態度をとられるなら、クエストは受けたくありませんね……」
 たっぷりと時間をかけてそんなセリフを口にした後、エリスが私に「行きましょうか」と促してくる。私はさすがに戸惑いながら、エリスとギガルドを立ち上がりつつ交互に見返した。
「いや、すまない! 違うんだ怒ってないから、座ってほしい」
 ギガルドの口調が、少しぎこちない。いろいろとかみ殺しているような感じだ。エリスはそれを見て元の場所に座る。私もそれに合わせて同じところに座った。相変わらずエリスは、余裕たっぷりに冷笑を浮かべている。とりあえず、私はなんて言ったらいいか分からず、小さくなるしかなかった。


「良いクエストが受けられましたね」
 執務室から移動してきて、受付の脇をすり抜けた辺りでエリスが嬉しそうに言った。ギガルドとの報酬交渉が終わって、出てきたところだ。交渉と言ってもよいか、疑問な所ではあったけど。
「もしかしたらルネーナさんの祖国の件と関りがあるかもしれないし、報酬も弾んでもらえましたし」
「まぁ……そうだね」
 考えない様にしよう。
「ギルドマスターとの話は終わりましたよね?」
 受付に居たミリエナが、私達の話の合間にそう声をかけてきた。私は「終わったよ」と返す。
「では、ギルドカードをこちらに、ギルドマスターから連絡がありましたので、正式にクエスト受注の処理をしますね」
 少し硬い感じの声のミリエナ。視線も絶妙に合わせてくれない。すぐには元の感じには戻れないか。私は特に何も言わないで、ギルドカードを手渡す。エリスも同じような感じの表情でギルドカードを渡していた。少し寂しいけど、仕方がない事だ。
「終わりました……今回のクエストは、ギルドカードによる終了判断はありません、面倒かもしれませんが、定期的にギルドへの報告をお願いします」
「わかった」
 戻されてきたギルドカードを首からかけつつ、返す。仕方がないと分かっていてもやっぱりこの気まずさは、少し寂しい。というか、ギルド内が私に対してよそよそしい。私がため息をつくと、エリスが寂しそうに微笑んで「行きましょうか」と呟く様に言った。悩んでもしょうがない。私は笑顔を浮かべて口にする。
「行ってくるよ、またお願いね」
 また、という言葉を強調した。今はこれぐらいで。受付を後にして、私とエリスはギルドから出た。
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