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第二章

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「さて、調査を始めようか」
 全方位に広がる森の中に立って、私はそう口にしてみる。でも正直な所、何をすればいいか分からなかった。
「どうするんです?」
 エリスに期待していたけど、その言葉を聞いて悟った。二人ともどうすればいいか、分かっていない。
 私は空を仰ぎ見る。緑色の葉っぱが風で揺れていた。葉っぱが揺れて漏れてくる光の形が変わる。
「あぁ、いい天気」
「ルネーナさん? どうしたんですか?」
 私の行動を不審に思ったのか、エリスが少し不安そうな声をかけてきた。私は空を見るのをやめて、エリスに視線を向ける。
「ピクニック日和だね」
「え? 調査しにきたんですよね?! ピクニックが目的ではないですよね?!」
「だって、ここまで来たものの、そもそも、調査って何すればいいの?!」
 ほとんど八つ当たりの様な言い方で、私は問いかける。エリスはそれを受けて、半歩程後ずさった。それ以上行かなかったのは、気合で踏ん張ったからだろうか。
「あ、えあ、あおの」
 言葉にならない何かを呟くエリス。早く何か言わなければと声を出しながら考えているけど、結局何も思いつかず変な言葉を発しているだけみたいだ。
「とにかく! ピクニックをするのだけは違います!」
 もっともなエリスの意見に、私は唸る。確かにそうである。ピクニックだけは違う。分かっているけど、分かっているのだけど。
「……じゃあ、どうしようか」
 今度は八つ当たりではなく相談。それに対してエリスは、少し俯く。考えているらしかった。エリスにだけ考えさせるのも悪いから、私も考える。しばらく二人で、ウンウンと唸る時間が続く。
「とりあえず……」
 エリスが声をあげた。明らかに良い案が浮かんだという表情ではないけど、せめてここで時間を無駄にするのは避けられる案だと言わんばかりの表情。期待せずに、続きを待つ。
「とりあえず森の中を……ウロウロしてみますか?」
 歩くだけ、と私は言いかけてやめる。私だって何も思いつかなかった身である。文句を言えるはずもない。
「そうだね……とりあえず歩き回ってみるか」
 頷いて同意すると、エリスは神妙な面持ちをする。あまりスッキリしていない感じ。私も、同じような表情をしているかもしれない。
 私達は無言で歩き始める。とりあえず、それで何か見つけられるかもしれない。とりあえず同じところにずっといるより、よっぽどマシだ。それに、歩いている最中に、何か良い案が思い浮かぶかもしれない。
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