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第二章

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「それから、はっきりわからない、魔法陣の事か」
 ギガルドがソファの背もたれに体重を預けながら、呟くように言った。この魔法陣に関しては、なんなのかわからない。倒し終えたオークは全て確認してみたけど、同じような物が同じ場所に描かれていた。知恵を持った原因の可能性かもしれないし、ただの入れ墨的な物かもしれない。
「知能を持ってた訳だし、オシャレの為と、自分たちのチームの一体感を出すためにマークをいれたとか」
 私の意見を聞いて、ギガルドは首を傾げる。
「旗で良くないか?」
「違うんだよ」
 私はやろうとは思わないけど、オシャレではあると思う。旗なんて古臭いし、邪魔になるし。
「……若い感性は分からんな」
 やっぱり、オジサンには伝わらないか。私は同じ若者であるエリスに、視線を向けて同意を求めた。
「エリスも、なんとなくわかるよね……」
 私が声をかけると、エリスは反応しなかった。眉をひそめて、右手で口を押えて何かを考え込んでいる様子だ。険しい表情。突然どうしたのか。私はよくわからず、戸惑ってしまう。
「……エ、エリス?」
「え? あっ、はい、そうですね! 報酬を頂きましょうか」
「……お、おう」
 エリスはいつもの表情に戻り、今の話題をぶっちぎった。ギガルドも少し戸惑いながら、私に視線を向ける。正面に座っていたのに、エリスが険しい表情になっていた事に気付いていなかったらしい。
「報酬だな……最初の取り決め通り払う、最後に受付に寄ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
 微笑んで軽く頭を下げた後、エリスは立ち上がる。私がそれを少し呆然としながら見つめていると、エリスが不思議そうに私を見つめた。
「ルネーナ? 話は終わりましたよね? 行きましょう?」
「あ、うん、そうだね」
 エリスに促されて、私は立ち上がる。執務室の出入り口まで進んで、二人でギガルドに会釈すると部屋を出た。
「さぁ、報酬も入りましたし、贅沢しすぎない程度に、何か食べましょうか」
 エリスが嬉しそうに、先に歩き始めた。私はエリスの背中を見つめながら歩き始める。さっきのはなんだったんだろうか。何かを思い詰める顔。いつからあんな感じになっていたんだろう。何かに気付いたんだろうか。
「エリス」
「はい?」
 私の問いかけに、エリスは笑顔で振り向く。
「さっきどうして……何か悩んでるというか、思い詰めてるというか」
「何の話です? さっ、早く行きましょう」
 そう言ったエリスは、すぐにこちらに背中を向けて歩き始めてしまった。

 私達は出会って間もない。少しはお互い自分の話をした。でも、それでも私はまだエリスの事を、何も知らない。
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