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第三章

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「俺はマークだ」
 オークのアジトで出会った活発そうな男の子が、そう自己紹介した。いかにも活発そうな雰囲気でドンッと自分の胸を叩く。それから満足したのか、自分の飲み物をクイッと飲み干して、着席した。
「どんどん飲んで食べてくれ、ルネーナさんは命の恩人なんだ」
 私とエリスはマークに対してお礼を言うと、目の前の料理を一口食べる。マークの隣に座っている利発そうな男の子が、少し苦笑して小声で「マーク」と咎める様な声をかけていた。
 私達は行方不明者の件の報告を終えて、受付で報酬をもらった後、三人にお礼がしたいと誘われて夕食を食べに来ていた。この酒場に入った時には薄暗くなっていて、いつの間にか窓の外は真っ暗になっている。
「僕はエリックって言います」
 利発そうな男の子が、マークが喋り終えたタイミングを見計らってそう口にした。少し遠慮がちで、立ち上がって自己紹介したり、自己アピール的なアクションを取ったりしないのは、見た目通りの印象だなと思う。
「私は、カリアです」
 オークのアジトで会った時は、少しか弱い感じの女の子という印象だった。でもあの場面では仕方がなかったのだろう。今はそのか弱さは陰に潜んでいる。
 三人の自己紹介が終わると、私とエリスの自己紹介を済ませて、さっそく食事を始めた。いろいろと並んだ、とは言い難い量の食事だけど、たぶん精一杯の恩返しなんだろう。エリックがマークを咎めたのは、つまりそういう事だ。
「何かするためにお金を稼ぎに来てたんでしょう? 私達にお金使ってしまっていいんですか?」
 少し意地悪な笑みを浮かべて、エリスがマークに問いかける。それを受けてマークが、口ごもった。
「エリス、イジワル言わない」
 私が咎めると、エリスは相変わらずの笑みを浮かべて「そうですね」と呟く。
「でも、命を救ってもらったんだ、何か返さなきゃ……」
 マークはなかなか男前な性格だ。恩は必ず返す。そんな信念があるのだろう。
「その件はもういいから……ところで何年生なの?」
 問いかけると、三人は顔を見合わせる。どうしたんだろうと思うと、エリックが代表して口を開いた。
「二年、なんですよ……もうすぐ三年」
「と、年上!」
 私は一年で、もうすぐ二年だった。つまり三人は先輩に当たる。私は後輩。顔を見合わせたのは、そういう事だったのか。
「学校にいる時も気まずかったんじゃないですか? 後輩だけど王女、どう接していいか分からないですよね」
 ズバリとエリスが言った。確かにそうだった。先輩だろうと、ましてや教員でさえ、私に対してよそよそしかった。
「でも今は、そんな事気にせず、接したらいいんですよ、私みたいに」
 エリスが自慢そうに微笑んだ。
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